厚労省交渉報告



 7月24日、長尾さんの早期労災認定を勝ち取るために、厚生労働省との交渉が行われました。午後2時〜3時半まで、参議院議員会館第二議員室で、北川れん子衆議院議員も出席されました。
 厚生労働省からの出席者
 労災補償部補償課 職業病認定対策室 職業病認定業務第二係長 宇野浩一
 同セクション 斉藤将
 労災補償部補償課 企画調整係長 田村裕之
 安全衛生部 労働衛生課 業務第四係長 吉田貴則

 市民側の出席者
 申入書を共同で提出した、関西労働者安全センター、東京労働安全センター、双葉地方原発反対同盟、原子力資料情報室、被曝労働研究会、ヒバク反対キャンペーン、美浜の会、さらに嶋橋さんの労災認定に携わってこられた藤田裕幸氏など、約20名が参加しました。

 まずはじめに、同席された北川れん子議員から挨拶があり、市民の要求に真摯に対応してほしいと厚労省に要望されました。続いて、関西労働者安全センターの片岡さんが、長尾さんの労災認定を早期に行ってほしいと、今回の交渉の主旨を述べられ、交渉が始まりました。
 厚労省の宇野氏は、長尾さんの労災請求に関しては富岡労基局からのりん伺がまだ正式には届いていないが、調査は進めている。しかし具体的な検討はまだであること。また長尾さんの疾病は多発性骨髄腫であり、白血病と疾病が異なり慎重に審議する。また、α核種による被曝については、情報を取るが開示については約束できない、との発言がありました。
 交渉では、医師の振津さんが、多発性骨髄腫も白血病の類似疾患であること等を説明し、早期の認定を行うよう要求しました。また原爆被爆者の認定でも、多発性骨髄腫に罹患した人が認定されている事等が紹介されました。厚生省(現在の厚労省)の原爆医療審議会の認定基準(内規、平成6年9月19日)でも、多発性骨髄腫を放射線に起因性がある疾病としてあげていること等から、労災認定するよう要求しました。藤田氏は、嶋橋さんの労災認定の時は、厚生省と労働省が別々で、色々苦労したが、今は一つの省になったのだから速やかに認定するようにと述べられました。
 次に、長尾さんが働いていた当時の福島原発が高濃度のα核種で汚染されていた問題に入ると告げると、厚労省の宇野氏は、「先程の要求の内容を聞いていますと、こういったアルファ核種の汚染状況を調べるまでもなく、認定できるんじゃないかというお話ですよね」とクレームをつけました。これに対し参加者は、次から次に、福島原発で深刻なα汚染が存在したことは、長尾さんはもとより、多くの原発労働者の救済のためにも必要であると、発言しました。
 これを受けて、当時の長尾氏の労働環境について、美浜の会の小山が概要を説明しました。東電の「松葉作戦」やその後保安院から取り寄せた資料から、福島1−1だけでなく、長尾さんが働いていた1−2号炉でもα核種の放出が確認されていることを示しました。この問題は、外部被ばくだけでも70mSvもの被曝という長尾さんの被曝に即しても、その具体的な被曝原因・労働環境を明らかにし、プルトニウム等のα線による内部被曝が多発性骨髄腫の重要な原因の一つである可能性を明らかにするために必要です。そのため、厚労省としても、東電・東芝などから資料を収集し開示するよう要求しました(念のため、東電の「松葉作戦」を厚労省にも渡しました)。地元で長年反原発運動に携わってこられた双葉地方原発反対同盟からは、福島原発がα核種で汚染されたことが明らかになった以上、これまでとは異なり、内部被曝の問題にまで踏み込んで厚労省が判断を下すのかどうか厳しく見守ると述べられました。実際、地元ではα問題で対東電交渉が近く行われようとしています。
 長尾さんが77才の高齢であること、いつまた病状が悪化するか分からない状況にあるため、早期の労災認定を要求して、交渉を終えました。