六ヶ所再処理工場 7・8月の放射能海洋放出
原発の濃度規制値の770倍もの濃度で放出

 六ヶ所再処理工場から7月と8月に海洋へ放出した日と排水量(放出廃液量)と放射能量が明らかになった。ただし、放射能量はトリチウム以外は、8月26日のヨウ素129を除いてND(Not Detectable:検出不能)である。
 このデータは、青森県の9月29日定例県議会における鹿内議員の一般質問に対して、三村知事からの10月10日付答弁書で示されたものである。すでに4〜6月放出分は、7月20日臨時県議会での鹿内議員の質問に対する高坂環境生活部長の回答で明らかにされていた。しかしこのときは排水量(放出廃液量)が示されていなかったので、濃度の正確な値が分からなかった。今回は公表データから毎回の濃度が正確に計算できる。
 トリチウムについてのデータを下表に示そう。参考までに6月の最後の2回分の放出について、1回当たり平均放出量等も書いておいた。ただし排水量は正確な値が分からないので、放出前第1貯槽の容量である600立米を仮定している。



 再処理工場からの海洋放出については、法的濃度限度は存在していない。このことは現在では、2000年(H12)科学技術庁告示第13号によって規定されているが、その基は、多くの審議を経た後、1971年(S46)総理府令第10号「使用済燃料の再処理の事業に関する規則」によって初めて導入されている。なぜ濃度規制が適用できないのかは、上記の表1から明らかである。
 最大で一般原子力施設の濃度限度(原発に適用されている濃度限度)の770倍もの濃度でトリチウムが放出されている。もし濃度規制が適用されたらどうなるだろうか。770倍の水で薄めて放出しなければならい。そうすると、現在は1回約600立米の放出を6時間かけて行っているが、1回に4620時間=193日、すなわち半年以上かかるようになる。これを避けて現在のペースを守ろうとすれば、放出口やそのための排水ポンプなどをいまの770倍に増やさねばならない。そうなると放出口から1時間に77000立米が放出され、放出口付近は放射性廃液だらけになってしまうだろう。
 さらに、再処理の本格運転が始まれば、1年間に1.8×1016Bqのトリチウムを放出することになっており、新聞報道によれば、2日に1回の放出頻度になるという。そうすると、1回分(600m3)の平均濃度は1.6×105Bq/cm3となるので、トリチウム濃度限度の約2700倍となる。これを濃度限度の枠内に収めることは事実上不可能であるのは明らかだ。それほどまでに、再処理工場からは大量の放射能が、高濃度で海洋に放出されるということを意味している。このような放出を許さなければ再処理工場の運転ができないことこそが異常なのである。
 なお、今回初めて検出限界値以上のヨウ素129の放出が確認された。8月26日に4.1×105Bqが放出されている。この日の排水量で割れば、濃度は6.9×10-4Bq/cm3であり、検出下限値である5×10-4 Bq/cm3(7月7日付原燃報告書34頁)を確かに超えている。少し奇妙なのは、このときのトリチウム濃度が7月や8月初めに比べて高くないことである。つまり、ヨウ素129濃度はトリチウム濃度に比例してはいない。これはおそらく、ヨウ素129は独特のルートで集められるため(例えば事業変更許可申請書平成3年7月第4.2-2図)、放出の仕方・時期も独特になるためではないだろうか。
 他に、8月後半の放出量が比較的小さいのは、8月は6体だけで使用済み核燃料のせん断がストップしたためであろうと推察される。

 海洋へ大量の放射能を流すことは多くの人々にとって、その生活にとってきわめて重大な問題である。それにもかかわらず放射能放出の実態が、前回と今回のように、県議会での質問がない限り公開されていない。青森県はデータをもっていながら公開しない。まずは、このような姑息な状態が早急に改められるべきである。