日本原燃の品質保証体制に根本的な欠陥
ウラン試験のための安全協定締結をしないことを求める申入れ書



六ヶ所村村長
古川 健治 様

再処理止めよう!全国ネットワーク
2004年3月8日

 国内反原発NGOの連合体である、再処理止めよう!全国ネットワークは、日本原燃とウラン試験のための安全協定を締結しないことを申入れます。
 理由は以下の通りです。

一、 六ヶ所再処理工場は、品質保証体制が、欠陥だらけの日本原燃が建設した工場です。
二、 不正溶接や不適切な施工の原因究明は不十分です。
三、 再処理工場は、たとえ事業者に欠陥がなくても、環境への放射能放出により、人々の命と健康、地球環境を脅かし持続可能な社会づくりを阻害します。


日本原燃の品質保証体制に根本的な欠陥
 日本原燃は、検討会に提出した資料*において、マネジメントの反省として以下のように結論づけています。
 *「品質保証体制点検 不適切な施工等の根本原因分析結果を踏まえたマネジメントの反省と改善策について(2004.1.23)」

「 一、化学的な安全性など原子力安全以外に対する品質保証の考慮が十分でなかった
 二、施工段階の品質保証の重要性に対する認識が十分でなかった
 三、使用済燃料受入れ・貯蔵施設施工時の人員配置の適正化を欠いた
 四、協力会社と適切なコミュニケーションを行える体制の確立がなされなかった
 五、一〜四の事項についてトップマネジメントが不足していた 」

 使用済み核燃料を硝酸で溶かしてプルトニウムその他と分離する再処理工場は、原子力施設でありながらも、化学工場の側面の強い工場であることは、周知の事実です。そうした工場の事業者が「化学的な安全性など原子力安全以外に対する品質保証の考慮が十分でなかった」のなら、日本原燃は、再処理工場を操業する資格がないというのは当然の帰結です。
 また、施工段階で品質保証の重要性の認識が不十分であったなら、施設の健全性を保証することは不可能であることもまた明らかです。今回の総点検以外の部分、総点検の中で抜き取り検査で済ませてしまった部分についても不正・不良施工が行われていた可能性を否定できません。
 「使用済み核燃料受入れ・貯蔵施設施工時の人員配置の適正化を欠いた」とは、「同施設については、在任期間の短い出向者と経験の浅い若手プロパーで構成(上記資料*より)」したことなどを指しています。
 さらに「協力会社と適切なコミュニケーションを行える体制の確立がなされなかった」とは、下請け、元請け会社、日本原燃の間に適切なコミュニケーションが行えずに不正・不良施工を防げなかった、見抜けなかったということです。
 このように、品質保証体制に根本的欠陥を持つ日本原燃が建設した再処理工場の健全性が保証されないのは、明らかです。

不十分な原因究明
 六ヶ所再処理工場使用済み核燃料プールの不正溶接事件をきっかけに設置された「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」(以下「検討会」)で、不正・不良施工についての「根本原因究明」が必要であると指摘され、「根本原因分析(ルート・コーズ・アナリシス:RCA)」という手法を使った根本原因分析が行われました。たとえば不正溶接の根本原因に関しては、検討会資料(7-2-3)で「施工計画についての事前検討を怠った」「防護策をとっていなかった」「不適合の場合の管理ルールが機能しなかった」と結論づけています。しかし、いくら、施工計画について事前検討をしても、防護策をとっても、管理ルールを機能させても、当の施工者が故意にルールを破ることを避けることはできず、なぜ、その施工者が不正を行ったのかを究明し、その上で対処策を考えなければ、同じことが繰り返されるでしょう。日本原燃による原因究明は不十分です。

再処理工場の人・環境への影響
 再処理工場は、設計通りに施工し、規定通りに運転されても、大量の放射能を排出し、人々の健康、環境を脅かします。
 北大西洋の海洋汚染防止のための委員会であるオスパール会議(欧州連合と欧州の15か国が参加)では、2000年、12か国の賛成により「英仏再処理は再処理をやめ、放射能放出を防止せよ」という決議が採択されています(1)。再処理工場からの放出される放射能は欧州を広範囲に汚染してきました。フランスではラ・アーグ再処理工場周辺で生産されるバターが、「ラ・アーグバター」では再処理工場を連想させるという理由で別の名前で出荷せざるを得ない(2)、工場排水口近くで採取したカニから放射能が検出される(3)など農・漁業に影響がでています。三村知事は、ウラン試験のための安全協定を締結しないことで、青森県が産する豊かな農産物・海産物に同じことが起こらないようにすることが可能です。

人々の命と健康、環境を守るために
 2003年9月12日から、2004年2月29日まで9回にわたって開かれてきた「検討会」の場で日本原燃には、再処理工場を運営する能力も資格もないことが明らかになっています。再処理工場はご存知のように、プルトニウムという大変強い放射性毒性と数万年にわたる寿命を持つ物質を扱う工場です。こうした工場が、品質保証体制に根本的な欠陥を持つ日本原燃によって運営されることを許せば、最悪の事態を招く可能性があります。

 古川村長は、村民の命と健康、環境を守るために、ウラン試験のための安全協定を締結しないでください。放射能汚染を生む原子力のためでなく、美しい自然と豊かな海産物に恵まれた青森県の環境が守られ、持続可能な社会づくりのための選択をお願いいたします。そのために、私たちもできる限りの協力をさせていただきたいと思っています。

(1)「OSPAR Decision 2000/1 on Substantial Reductions and Elimination of Discharges, Emissions and Losses of Radioactive Substances, with Special Emphasis on Nuclear Reprocessing」
http://www.ospar.org/eng/html/welcome.html

(2)「ラ・アーグに再処理工場ができて、再処理工場の名前として知られるようになると、マイナスのイメージが広がり、バターにラ・アーグの名前をつけるわけにはいかなくなってしまいました」酪農家のジャン・ポール・パリ氏(「核の再処理が子どもたちをおそう−フランスからの警告」創史社刊より)

(3)1997年にグリーンピース・インターナショナルが行ったサンプリング調査で、採取したカニからEC安全基準を超える放射能が検出された。「LA HAGUE: CRABS RADIOACTIVE CONTAMINATION IS ABOVE EC SAFETY STANDARDS - Greenpeace accuses Cogema and OPRI of failing to protect public health」
http://archive.greenpeace.org/comms/97/nuclear/press/prsept24a.html


         再処理とめよう!全国ネットワーク
         【再処理とめよう!全国ネットワーク・連絡団体】
         花とハーブの里:(039-3215) 青森県上北郡六ヶ所村倉内笹崎1521 菊川方
         みどりと反プルサーマル新潟県連絡会
         グリーンピース・ジャパン
         グリーン・アクション
         美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
         脱原発ネットワーク・九州


添付資料:「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」資料及び議事録より抜粋