日本原燃の記者発表内容(1/28)の問題点



■問題の重要性
 再処理施設内のガラス固化体貯蔵3施設だけで、約8,200本のガラス固化体が貯蔵されます。使用済み核燃料1トンから約1本のガラス固化体がつくられます(つまり、使用済み核燃料1トンに含まれている放射能のほとんどすべてが1本のガラス固化体の中に入ります:ただし燃焼度33,000のとき)。全国の原発から年に800〜900トンの使用済み核燃料が発生するとして、固化体8,200本には9〜10年分の放射能が貯蔵されるわけです。そこからは膨大な崩壊熱が発生します。
 それを自然的な空気の流れで冷却するのですが、その空気の流れは流路の広さ(断面積)に依存します。広い路から狭い路地に入ると流れは悪くなります。これを正しく解析・評価しないと、固化体の温度評価を誤り、とんでもない危険が到来する可能性が生じます。
 まさに日本原燃はこのような誤りを犯していたのです。

■日本原燃の誤り
 日本原燃は記者発表で、誤りの原因は「文献式の解釈を誤って計算したため」としています。これはとんでもないごまかしです。
 日本原燃が行った誤りは、実は、空気の流れを妨げる「迷路板」があるのに、その存在を無視したことだったのです(迷路板をつけるのは、ガラス固化体が発するガンマ線や中性子線をさえぎるためのようです)。迷路板のところで流路の断面積が相当に小さくなるため、空気の流れが悪くなるのに、その断面積として迷路板がないときの面積値をもってきたというお粗末です(下図参照)。これのどこが、「文献式の解釈」に関係するのでしょう。

日本原燃はαではなく、βの位置の断面積を採用した。これは迷路板がない場合と同じになる。

 この迷路板は最初の平成元年申請書では、今と違って、四角い煙突のような形の空気入口シャフトと出口シャフトに付けられていました。平成3年の変更申請では、迷路板に加えて、貯蔵室の空気入口と出口に格子状の板(ルーバー)が取り付けられるよう変更されました。そのためか、ガラス固化体の中心温度は、平成元年の370℃から平成3年では410℃に変わっています。
迷路板はその後、平成8年の変更申請で、前記ルーバーのあった位置に移されたのですが、その場合、明らかに変更前より迷路の断面積が相当に小さくなっていることが一目瞭然です。だから、何も計算するまでもなく、空気の流れが悪くなり固化体の温度が上がることが分かります。ところが、日本原燃は変更前とまったく同じ前記410℃になるとして申請を出していたのです。
 日本原燃は、この設計に関するこれまでの経過を書いていますが、そこにはなぜか平成元年と3年の区別がありません。この設計は元請の石川島播磨がやっていたのですが、平成8年のころには前の設計をした人が退職していなかったのだそうです。
 それにしても、計算しなくてもおかしいと分かるような結果を原燃が鵜呑みにするとは、相変わらずの丸投げということです。保安院や安全専門審査会もこのおかしな結論を無批判に見逃していたのです。いったい、膨大な放射能の危険問題をどう考えているのでしょう。
 特に問題になるのは、これから建設される再処理施設内の西棟です。東棟には2,880本が貯蔵されるのに対し、西棟には5,040本が貯蔵されます。それに応じて建屋の広さも初めは広くとられていました。ところが、途中で変更申請が出されて、西棟も東棟と同じ広さにすることにしたのです(下図参照)。つまり固化体をギュウギュウ詰めにする方式を採ったのです。そのため東棟と西棟を比べて見ると、再計算による固化体中心温度が、東棟では519℃(誤計算では430℃)、西棟では624℃(430℃)となっています。
 温度が600℃にもなると、固化体が軟らかくなり、ひびが入って、とても地下での長期貯蔵に耐えられなくなります。そのままその施設に永久においておかねばなりません。それともごまかしてどこかに運び出すのでしょうか。このような大問題を引き起こしていたということです。保安院や安全委員会もそれを容認してきたのです。その責任が厳しく問われるべきではないでしょうか。


(平成15年3月6日 認可申請より)

■ウラン試験がなぜ継続できるのか?
 現在ウラン試験を行っている施設は、全施設を3グループに分けたうちの第1と第2グループです。ガラス固化施設や同貯蔵施設は第3グループに入っており、両施設は「切り離されている」ため、ウラン試験を続けてもよいというのが原燃の言い分です。
 しかし、第1と第2グループの施設をつくった原燃とガラス固化施設等をつくった原燃とは「切り離されている」でしょうか。まったく、何を血迷ったことをと言いたくもなります。自分が犯した誤りについて何も自己批判することなく、迷路板の入口さえ広げればよいという態度で、プール問題のときと変わっていません。

■元請・石川島播磨の問題
 今回あまりにもお粗末な誤りを犯したのは、直接には元請である石川島播磨です(この会社は、被曝労働者の長尾さん問題にも登場します)。その石播がガラス固化施設を担当しています。ガラス固化のプロセスでは、白金族が溶融炉の下部の漏斗(じょうご)の出口に溜まるために糞詰まりを起こすという問題があります。そうなると、固体ではなく、危険な濃縮廃液という液体状態で膨大な放射能が溜まるという問題が生じます。石播担当のガラス固化がうまくいっていないし、いく見込みもないのに、ウラン試験を行うこと自体が問題にされるべきでしょう。