12月26日 第6回検討会に向けての要望書
なぜ291ヶ所もの不正溶接が起こったのか、
その根本原因を明確に示してください



2003年12月22日

六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会
主査 近藤駿介様
委員 各位様

 前回第5 回会議に日本原燃から提出された修正点検計画書は、貴検討会の11 月14 日付け評価意見の基本主張を無視しています。にもかかわらず貴検討会は、それに何らの疑問を呈することなく、すでに原子力安全・保安院が受入れたからとの一言で、了承してしまいました。
 これまで4 回にわたる貴検討会での議論の経過からすれば、私たちにはとうてい信じがたい結論です。いったい何のための検討だったのかと、強い疑問を抱かざるを得ません。291 カ所にも及ぶ不正溶接の原因は、結局何も説明されないまま残されているのです。これでは、再処理工場全体と日本原燃に対する信頼性への疑問は残されたままになったのと同じです。こんな状態でウラン試験に入るなど、けっして認められるものではありません。
 そこで、私たちは、下記で原因究明問題が何も明らかになっていない事実を指摘し、貴検討会がこの問題について再度検討されることを要望いたします。

1.評価意見では、「不適切溶接施工」の原因究明は、点検のための前提・指針であったのではないのですか
 貴検討会はこれまで、「不適切溶接施工」の原因が示されていないことについて日本原燃に確認を求めた上で、点検より前に原因究明を明らかにすべきだと主張してきました。その主張は、貴評価意見の「1 .はじめに」で「既に本検討会に報告・確認されているプールライニングの不適切溶接施工についての原因究明の結果……を踏まえたものであることが示されるべきである」と要約されています。
 それでは、貴検討会の評価意見を受けて今回原燃から提出された修正点検計画書のどこに、「原因究明の結果を踏まえた」内容が記述されているのですか。書かれているのは、ただ「根本原因分析により原因究明を行う」という一言だけです。これが点検の「目的」として記述されています。
 貴評価意見が求めたのは、点検をどのような観点で行うかを明らかにするための前提・指針として、原因究明を明らかにすることだったはずです。ところが修正点検計画では、あいも変わらず、点検の方を優先させ、その結果(目的)として原因究明をすると主張しているのです。日本原燃の立場から言えば、現に点検作業どころか補修作業までも実際に進めているのだから、このような考えしか定式化できないのでしょう。もし原因究明を優先すれば、現実の作業優先と矛盾してしまうからです。まさに貴評価意見では、この姿勢に別の考えを対置したのに、それを完全に無視されたのです。どうして 貴検討会は、このような傲慢な態度を黙って受入れたのですか。
 それとも貴検討会は、「根本原因分析」なるものに期待をおこうとするのでしょうか。しかしこのようなものは、委員の皆さまが先刻よくご存知のとおり、あらかじめ都合のよい「根本原因」を想定し、それに向かうように「なぜなぜ連鎖」を創作すればよいわけで、好きなように操作できるものに過ぎません。
 もしそうではないというのなら、それとは異なるように、誰もが納得できるように根本原因を示し、それに基づいて点検するように姿勢を改めるよう、日本原燃に再度求めてください。

2.「スケジュール優先」の疑いは結局どうなったのですか
 貴検討会では、これまでの経過の中で何度もスケジュール優先問題が議論されてきました。不正溶接の原因としてスケジュール優先を想定するのは自然で理解しやすいというような議論もありました。
 第4 回においてさえもまだこの問題が議論されており、依然として残された課題になっているのです。
 ところが、日本原燃はスケジュール優先はなかったとの立場を表明し、その証拠として今年9 月19 日の次の社長表明を挙げています。「ウラン試験ならびにアクティブ試験の開始時期については、……、実施にあたっては工程優先ではなく、地元の皆様のご理解、ご協力を得ながら安全最優先で取り組むこととした」。
 この発言は2 重の意味で欺瞞です。第一に、貴検討会で主査からも指摘されたように、これはいま当面しているウラン試験に向かう姿勢を述べているのであるが、問題になっているのは過去のプール建設時のスケジュール(工程)なのです。より重要な問題として第二に、このような社長表明さえあればスケジュール優先でないことの証左になるのでしょうか。その実、現に日本原燃は、原因究明もしない前から補修作業に専念していますが、これこそは、来年1 月からのウラン試験に間に合わせるためというスケジュール優先姿勢を、何よりも如実に示しているのではないでしょうか。
 また、スケジュール優先ではない証拠として原燃がもう一つもちだしているのが、事業開始時期(プールの使用開始時期)を変更する理由です。しかし第一に問題になっているのは、この事業開始時期の変更理由ではなく、無理な当初工程、すなわちプール使用の開始時期がどのように設定されたのかということです。日本原燃は問題をすり替えているのです。
 このように、スケジュール問題は何ら明らかになっていないにもかかわらず、貴検討会はこれをあいまいなままに放置しています。
 他方、貴検討会のこれまでの議論を通じて、日本原燃のスケジュール優先姿勢が相当に浮き彫りになっていました。軽水炉に比べて六ヶ所再処理工場のプールには6 倍の溶接作業量があったこと、にもかかわらず工事期間は同程度であったこと、また溶接線の試験は軽水炉では100 %実施しているのに、六ヶ所再処理施設ではわずか5 %しかしていないことが確認されています。ライニングの板取は通常なら現場で実際のコンクリート躯体の寸法を測ってから行うべきところ、実際寸法とは無関係に設計図に書かれている寸法どおりに作られていたことも確認されています。このコンクリート躯体の寸法記録は何もないとのことも明らかになりました。
 これだけ見ても、無理な工程が設定されていたことは誰の目にも明らかです。この背景に、原発の使用済み核燃料搬入が急がれていた事実があることも、工事中の当時からすでに明らかになっていました(参考:http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/fusei_yosetsu031104.htm )。当時、本体の竣工予定が2003 年1 月だったのに、使用済み核燃料受入プールの操業は7 年も前の1996 年4 月に設定されていました。このこと自体がきわめて異常であり、スケジュール優先の背景を如実に示していると言えるでしょう。
 私たち普通の感覚をもったものから見れば、大量不正溶接の原因として、無理なスケジュール(工程)を設定したことがあったこと、その責任が日本原燃にあることは明らかです。この点は貴検討会が当初工程表および変更工程表を公表させれば直ちに明らかになるはずです。ぜひそのような措置をとるよう再度要望します。

3.大量不正溶接の真の原因は日本原燃の体質自体にあるのではないでしょうか
 日本原燃は、いま実際に、ウラン試験や使用済み核燃料受入再開を1 月に実施できるよう補修作業を急いでいます。なぜ291 カ所もの不正溶接が起こったのか、その原因究明は最後の最後に後回ししながら、当の不正溶接箇所をあわてて補修し隠してしまっているのです。そのくせ前記のように、「実施にあたっては工程優先ではなく、地元の皆様のご理解、ご協力を得ながら安全最優先で取り組むこととした」と社長が臆面もなく記者会見で述べています。「地元の皆様のご理解」を得ようとするのなら、何よりもなぜ291 カ所もの不正が起こったのか、その責任は誰にあるのかを、地元の皆様の誰にもわかるように説明すべきではないでしょうか。しかし実際には、このような説明を日本原燃は拒否しているのです。
 コンクリート躯体の実寸法を現場で測るより前にライニングを設計図に合わせて切断する。コンクリート躯体の寸法記録はいっさい残っていないことについては貴委員の中から激しい嘆きの声さえ聞かれたほどです。日本原燃がスケジュールを優先すれば、下請けなどはそれに従わざるを得ないのではないかとの意見も出され、また事実そのことを裏付ける現場責任者の証言も出されています。日本原燃の出向社員は3 年で入れ替わるとの、六ヶ所村役場からの証言もだされました。
 これらの事実は、日本原燃がいかに信頼性のない、内部ばらばらの無責任な体質であるかを示しています。このような体質こそが291 ヶ所もの大量不正溶接を起こし、起こした後もくさいものに蓋をするような振る舞いをさせているに違いありません。
 しかも、これだけ体質が問題にされているのに、その最中に数々の不祥事を次々に引き起こしている事実こそが、日本原燃という組織の安全管理などのでたらめさや、どうしようもない体質を、念押しするように示しているのではないでしょうか。
 10 月30 日 溶接作業中に防じんシートの火災事故、県への通報は50 分後で文書注意
 11 月30 日 社員2 名の顔面に水酸化ナトリウムがかかる事故
 12 月6 日 プールの冷却ポンプ1 台停止、他の2 台は作動させず
 12 月8 日 溶接作業中に防じんシートの火災事故
 12 月12 日 分析建屋で作業員の顔に硝酸がかかる事故
 これでは普通の感覚をもった人なら誰も、当然にして日本原燃自体を信頼できないことは明らかです。

4.原燃追随・スケジュール優先の検討を止め、不正溶接の根本原因を明らかにし、現状ではウラン試験を行う資格など日本原燃にないことを表明してください
 いま貴検討会は、これまでのような相当に本質に迫る議論を放棄し、日本原燃のスケジュールに追随する沈黙の会議に変質してしまったように私たちには見えます。これでは、ウラン試験に突入することに貴検討会が事実上のお墨付きを与えることになります。このような現状のままで、もし日本原燃がウラン試験を強行することを許されるなら、事故を起こすのは必然です。このままでは、貴検討会は、事故を起こすことを容認したと言われて責任を問われる立場にあるわけです。地元の人たちに被害が起こればどう責任をとるのですか。法政大学の舩橋教授のアンケート調査では、六ヶ所再処理工場の操業に「不安あるいは疑問がある」と感じている人が村民の72 %に達していますが、この不安をぜひ真剣に考慮してください。
 いまは見直しを行うべき最後の機会でしょう。もう一度本質的な観点に立ち返って、原因問題、スケジュール優先問題を掘り返してください。「なぜ291 カ所もの不正溶接が起こったのか」を、誰にも分かるように明確に説明してください。現状ではウラン試験を行う資格など日本原燃にないことをはっきりと表明してください。

 以上、要望します。


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