六ヶ所再処理計画およびその安全評価に関する再質問書
社民党福島瑞穂議員再質問書回答



H15.2.7
経 済 産 業 省
 前回、2002年12月25日付けの「六ヶ所再処理計画およびその安全評価に関する質問書」に対して、平成15年1月15日付けで回答をいただきました。
 その回答内容等について、再度いくつかの点について質問をしますので、2月7日までに文書で回答してくださるようお願いします(回答は各質問事項ごとに一つひとつしてください)。なお、その回答内容について直接説明を聞き、質疑応答できるような場を、2月10日からの週に設定してくださるよう要請します。

[1] 六ヶ所再処理計画の目的に関して

1.1月27日に名古屋高裁金沢支部は、高速増殖炉もんじゅの設置許可が無効であるとの判決を示しました。これは貴省の行った安全審査の妥当性をも否定するものです。高速増殖炉は本来、核燃料サイクル路線の要の位置にありました。それゆえにこの判決は、従来の核燃料サイクル政策、六ヶ所再処理工場の運転計画に重大な変更を迫るものだと考えます。
質問1-1.この判決を真摯に受けとめて、核燃料サイクル政策、六ヶ所再処理計画を根本から見直すべきではありませんか。
回答1-1 資源の乏しい我が国にとって、核燃料サイクルは、資源の有効利用を進める上で重要な基本政策です。高速増殖炉「もんじゅ」についての安全性に関する今回の判決をもって、核燃料サイクル政策を、直ちに見直すことが必要とは考えていません。
質問1-2.六ヶ所再処理工場の安全審査を含め、これまでのすべての安全審査に過誤がないかどうか再点検すべきではありませんか。
回答1-2 日本原燃轄ト処理事業所に係る安全審査は適切に実施されており、再点検は考えていません。

2.2002年3月に貴省資源エネルギー庁がまとめ、ホームページで公表した「核燃料サイクルのエネルギー政策上の必要性」(http://www.atom.meti.go.jp/fuelcycle/main.html)の「図58.プルサーマルを行わないと、原子力発電による電力の供給にも影響」においては、
「@プルサーマルを実施しないならば、再処理(リサイクル)はできません。
(日本は、利用目的のないプルトニウムは持ちません。)
A再処理をしないのに、使用済燃料を再処理工場へ持ち込むことはできません。
B原子力発電所内の使用済燃料貯蔵施設が満杯になると、原子炉の燃料を新しいものと交換できなくなります。」
と書かれています。この趣旨は2001年5月に刈羽村住民に対して撒かれた平沼大臣のビラの趣旨と基本的に一致していると考えます。
質問2-1.この中の@はすなわち、文字どおりプルサーマルが実施できなければ再処理もできないこと、プルサーマルは再処理の前提であると考えている、ということですか。
回答2-1 原子力委員会は、我が国が採るべき原子力研究開発利用の基本方針を示している「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(平成12年11月)」において、「海外再処理委託及び国内再処理工場で回収されるプルトニウムは、当面のところ、プルサーマル及び高速増殖炉等の研究開発において利用される」と示しています。当省としては、この方針に則って具体的な施策を実施しています。

3.前回の質問2では、プルサーマルがいつ実施できるのか具体的な目途をたずねていますが、それに対する回答はなく、ただ努力目標が書かれているだけです。
質問3-1.要するに、いまのところプルサーマル実施の目途は立っていないということですか。
回答3-1 プルサーマルの実現のためには、まずは原子力に関する信頼回復を急ぐことが最も重要な課題と認識しています。そのため、先の臨時国会で改正した法案など再発防止策を確実に実施することにまずは取り組んで行きます。
質問3-2.もし、そうでないということであれば、最低限、次の4原発でのプルサーマルは、それぞれ、いつから実施できる見込みがあるのか、具体的にお答えください。
       福島第一原発3号機、 柏崎刈羽原発3号機、 高浜原発3号機と4号機
回答3-2 質問3-1でお答えしたとおり、まずは原子力に関する信頼回復を急ぐことが最も重要な課題と認識しています。
質問3-3.1997年2月に電気事業連合会が公表したプルサーマル計画では、2000年までに4基、2000年代初頭に累計9基、2010年までに累計16〜18基が動く予定になっていました(この計画は同年1月31日の原子力委員会決定、2月4日の閣議決定に沿ったものです)。この計画のうち、2000年までの4基が実現できていないのは明らかですが、2000年代初頭の累計9基については実現可能ですか。
回答3-3 お尋ねの計画は、事業者が作成し、公表したものであるので、事業者にお問い合わせください。

4.前回の質問3で私たちは、プルサーマルの目途が立たないのに再処理工場を運転すれば、減らすべきプルトニウムがますます増えると指摘しています。それに対するお答えでは、「我が国が利用目的のないプルトニウムを保有することはありません」が結論になっています。
そこで、次の点を質問します。
質問4-1.ここの回答によれば、我が国のプルトニウムは平和利用以外に転用されないことは保障されているため、プルサーマルという利用目的さえあれば、際限なくプルトニウムを保有しても差し障りはないとも読み取れますが、保有プルトニウム量には上限はないと考えているのですか。
回答4-1 当省としては、プルサーマルを着実に進めていくこととしており、プルサーマルの予定がないのに「際限なくプルトニウムを保有」するとの、仮定の質問にお答えするのは適切ではありません。いずれにせよ、我が国はプルトニウムが平和利用以外に転用されることが無いことをIAEAによるフルスコープ保障措置を受けることにより厳格に担保すると共に、利用目的のない余剰のプルトニウムを持たないという原則を踏まえて、透明性を一層向上させる具体的な施策を検討し、実施していく考えです。
質問4-2.もし上限があるとすれば、全プルトニウム及び核分裂性プルトニウムでそれぞれ何トンですか。
回答4-2 質問4-1において答えたとおりです。

5.1997年当時に立てられたプルサーマル計画が大幅に遅れているのは事実です。従って、六ヶ所再処理工場を予定通り運転すれば、保有プルトニウムが計画より増えるのは自明です。
質問5-1.再処理工場の建設と運転は、少なくともプルサーマル計画の遅れを考慮して、一時停止状態におくべきではありませんか。
回答5-1 資源の乏しい我が国にとって、再処理事業やプルサーマル計画を含む核燃料サイクルは、資源の有効利用を進める上での基本政策であり、国民、住民の理解と協力を得ながら、長期的な視点に立って、着実に推進していくことが重要です。
質問5-2.プルサーマル計画の予定が崩れているのに、なぜ再処理工場は以前の予定どおり推進するのですか。その理由を明確に示してください。
回答5-2 質問5-1において答えたとおりです。
質問5-3.前記第1項で引用した資源エネルギー庁資料のAとBが、再処理工場の運転を強行する理由なのですか。これについて明確に答えてください。
回答5-3 質問5-1において答えたとおりです。

[2] 安全評価の問題について

6.前回の質問6に対する回答では、「そのうち憩流については、・・・、東、西、南及び北の全ての方向に廃液が流れるとして評価している」と書かれています。これは事業許可申請書第5.1-31表の内容について述べているものと解釈できます。
ところが、今年1月7日の私たちとの交渉の場で日本原燃は、同じ趣旨の質問に対し「西向き流は、北13km地点での海藻類による被ばくを高めに(安全側に)評価するためにわざと無視した」と明確に答えました。この点は何度も念を押して確かめています。
質問6-1.事業許可申請を行う側(日本原燃)が、自らの解析において西向き流を「わざと無視した」と言っているのに、審査を行うべき貴省の側が西向き流も入っていると勝手に解釈するのでは、申請内容とは別のものを審査したことになるのではありませんか。
回答6-1 日本原燃鰍ヘ、海洋放出口を含む海域の評価において考慮している憩流については、海面まで上昇した廃液が水平方向に拡がるため、その分の流速があることから、この流速(非成層時:7p/s、成層時:1.6p/s)で、東、西、南及び北の全ての方向に廃液が流れるとして評価しています。
 海洋放出口から北13q地点の海域の評価を行う場合は、厳しい評価条件とするため、この地点の放射性物質濃度が高くなるよう、南北方向のみに廃液が流れるとして評価しています。
質問6-2.貴省の言うとおり、西向き流も東向き流も入っているというのであれば、それら逆方向の流れが具体的にどのように同居していると想定したのか示してください。
回答6-2 質問6-1において答えたとおりです。
質問6-3.事業許可申請書第5.1-2図では、むつ小川原港湾区域周辺最高濃度地点(■印点)が放出口真南より少し東にずれていますが、この理由を説明してください。
回答6-3 日本原燃鰍ェ実施した前面海域における流向及び流速の測定結果によれば、ほぼ等深線に南向きに沿った流れが卓越していることが確認されています。
 このため、むつ小川原港湾区域周辺最高濃度地点は、海洋放出口から南向きに等深線に沿って流れる廃液の中心軸上(海洋放出口南側より少し東にずれた位置)となります。
質問6-4.日本原燃の説明どおり西向き流はわざと無視したということであれば、貴省も回答で引用している前記第5.1-31表にある「y方向の鉛直平均流速」(7cm/sと1.6cm/s)はすべて東向きだということになります。この場合は、北13km地点での被ばく線量が著しい過小評価になりますが(最も安全側にとった場合の1/16程度)、この点についてはどう思いますか。
回答6-4 質問6-1において答えたとおりです。

7.日本原燃の事業許可申請書では、21地点の海流データは数値で示されているものの、それをどのように使って解析したのかは明らかでありません。前回質問7に対する貴省の回答にある「海洋放出口地点以外の地点(我々の註:申請書の「遠方領域」)で、二次元数値シミュレーション解析を行い、その結果を用いて、放射性物質の拡散を評価している」のは事実です。
質問7-1.申請書に記述されているこの遠方領域の解析(平成元年3月・事業許可申請書・7-5-37〜41頁)を見るかぎり、せいぜい「仮想放出口」の想定(第5.1-31表と第5.1-32表)以外には、21地点の海流測定データが使われた形跡はないと考えますが、この点はどうですか。もし使用されているのならば、そのことが事業許可申請書の何頁の何行目に書かれているかを示してください。
回答7-1 日本原燃鰍ヘ、遠方領域における流動のシミュレーション計算においては、海洋放出口位置の流向及び流速を入力し、他の20地点を含む多くの地点の流向、流速の計算結果の妥当性を、20地点における観測データを用いて確認しています。
質問7-2.この解析において、直接的に拡散を導くという意味で最も重要な式は、拡散方程式(平成元年3月事業許可申請書・第7-5-38頁・第(5.1-34)式)だと考えられます。ところが、この拡散方程式(5.1-34)は一般的に正しい式ではなく、流速(北向きUと東向きV)が地点によらず一定の場合の式になっています(この拡散方程式の性格は教科書から明らかです)。すなわち申請書では、流速は最初から地点によらず一定であるとの前提に立って拡散が解析されていることを意味しています。これはすなわち、流速についてある種の平均化が行われているのと同じではありませんか。この点についてはどう考えますか。
回答7-2 ある地点(x,y)における鉛直平均速度U及びVは、地点及び時間の関数
 U=U(x,y,t)
 V=V(x,y,t)
で表されるものです。日本原燃轄ト処理事業指定申請書の記載では関数の表記が略されていますが、地点によらず一定であることを意味するわけではありません。

8.前回質問8に対する回答では、放射能が海岸に打ち上げられ蓄積されるとそれだけ海中濃度が下がるので、過小評価につながるとの趣旨が説明されていますが、その判断は日本原燃の想定した被ばくルートに限れば妥当だと考えられます。
質問8-1.日本原燃の被ばく評価では、海岸に打ち寄せられ蓄積する放射能による被ばくルートが完全に無視されています。子どもたちが海岸で遊ぶことはけっしてないという非現実的な仮定が立てられています。このようなルートによる被ばくはあり得ないと貴省も認めているのですか。もしそうだとすれば、その判断の根拠を示してください。
回答8-1 平常運転時の再処理施設周辺の一般公衆の線量評価では、再処理施設から排出される放射性物質による放射性雲からの外部被ばくや、排気中に含まれる放射性物質の呼吸摂取による内部被ばく等の代表的な被ばく経路による実効線量を適切に加え、そのうち最大となる線量を評価しています。
 その評価結果が十分低いものであれば、上記以外の経路の被ばくの寄与を考慮しても一般公衆の線量を低く抑えることができます。
 したがって、代表的な被ばく経路について一般公衆の実効線量を定量的に評価すれば、線量告示に定める周辺監視区域外の線量限度に対する適合性等を判断するうえで十分であります。

9.前回質問9で示した三陸海岸の問題ですが、海上保安庁は親潮前線という概念を認めています。下北海域から三陸海岸に向かう流れが親潮前線によって著しく制約されるため、下北海域でいったんは広がった放射能が、再び三陸海岸に集約されることは否定できません。この辺りの流れの様子を海上保安庁の海流図などで見ると、誰もがそのような印象をもつでしょう。三陸海岸は貴重な漁業の宝庫であり、海産物が全国に出荷されているだけに、この海域の放射能汚染は十分注意して扱う必要があると思います。
質問9-1.放射能は遠方では広がるから無視できるとの一般論で頭から被ばくを否定するのではなく、親潮前線の特徴を考慮すること、もしその直感的な危機感が間違っているというのであれば、そのことを実際に解析によって示すことが重要ではないのですか。
回答9-1 当省としては、六ヶ所海域の海水中の放射性物質が三陸海岸付近で集中する傾向にあるとの研究成果等は承知しておらず、そのような解析を行う必要性はないと考えています。一度、拡散・希釈したものが、ある地点で濃度が濃くなることはあり得ないと考えています。

[3]再処理工場本体貯層の溶接不良について

10.1月22日と23日付け新聞報道によれば、六ヶ所再処理工場本体のいくつかの貯層にお
いても、使用済み燃料受け入れ貯蔵プールと同様の溶接不良が存在することを日本原燃は認めて
います。この溶接不良は、偶然に生じたものではなく、業者の意図的な仕業によるものだけに、
このような不正を許した日本原燃に対する貴省の指導責任が厳しく問われていると考えます。
質問10-1.この件について、貴省にはいつ報告がきましたか。日本原燃はその時点で青森県に報告していないと報道されていますが、そのことについてどう考えますか。
回答10-1 日本原燃鰍ゥら本年2月5日に点検状況について報告を受けたところです。なお、同社は青森県に対しても報告を行ったと承知しています。
質問10-2.このような工事の不正について徹底的に調査するよう指導すべきではありませんか。少なくともその調査が終了するまでは、現在の化学試験は中止すべきではありませんか。
回答10-2 原子力安全・保安院から日本原燃鰍ノ対し、平成14年11月20日付け文書により、原因究明、点検計画、補修計画及び再発防止対策の4項目について報告を求め、平成14年12月23日に同社から報告を受けました。同社は、同報告に基づき点検調査等を進めていると承知しており、当院としても同社が行う点検作業が適切に実施されるよう適宜確認することとしています。
 なお、基本的に化学試験に制約を与えることなく本点検作業を実施できると考えています。
質問10-3.国が行った使用済み燃料プールの使用前検査では、なぜ溶接不良を確認することができなかったのですか。
回答10-3 今回の溶接部分は、プール水の放射能レベル、圧力等が低いことなどから、原子炉等規制法に基づく国の溶接検査が必要な部分ではありません。
 今回の不適切な溶接は、施設の建設段階における事業者の品質保証に係る問題であると認識しており、先ず、事業者における対応が基本であると考えていますが、国としてもこのような問題の発生を防止するような審査、検査の充実を図ってまいる所存です。