核燃料サイクル安全小委員会再処理ワーキンググループ委員の皆様へ
六ヶ所再処理工場のガラス固化試験についての要請書

ガラス溶融炉B系列での試験再開は認められません

 
核燃料サイクル安全小委員会再処理ワーキンググループ 各位様
主査 松本 史朗 様

2010年9月5日

 8月23日、日本原燃は、ガラス固化試験に関する7月15日付報告書の改正版「再処理施設高レベル廃液ガラス固化建屋ガラス溶融炉運転方法の改善検討結果について(改正版)」を提出しました。同報告書は、7月15日付報告書と同様、A系列でのガラス固化試験が行き詰まる中、もう一方のB系列で試験を再開するという方針を示しています。
 9月8日の第44回再処理WGの会議では、8月23日付報告書が審議されることになっていますが、私達は以下の理由で、B系列での試験再開に強く反対します。委員の皆様には、私達の意見を受け止め、是非とも審議の際に反映していただくことを強く要望いたします。

1.B系列からの試験再開は、2008年6月30日付委員会決定に反しています
 ガラス固化試験の現行試験計画は、2008年6月11日付の原燃の報告書「再処理施設高レベル廃液ガラス固化設備の安定条件検討結果報告」に示されており、「試験の流れとしては、はじめに@ガラス溶融炉(A系列)で『安定した運転状態の維持』及び『白金族元素の影響を考慮し、管理された運転状態の維持』について確認し、次にAガラス溶融炉(B系列)でのガラス溶融炉運転性能確認試験及び処理能力確認試験を実施する」とされています。同報告書は、同月30日の核燃料サイクル安全小委員会で承認されています(以下「2008年6月30日付委員会決定」)。8月23日付報告書は、この決定に明確に反するものです。

2.A系列での試験が全く上手くいっていないことは、貴委員会でも確認されています
 原燃は2008年10月27日に、不溶解残渣廃液を含む廃液を供給し始めた後の酷い結果を棚に上げて、それ以前の結果のみをもって2008年6月30日付委員会決定の要件である運転性能が確認されたと結論付ける報告書を出しました。あまりにも異常な報告書であったため、同年11月4日の第39回再処理WGの会議において同報告書の結論は否定されました。それ故、原燃はB系列の試験に進むことは許されなかったのです。それ以降ガラス固化試験は長期中断に陥ったままです。B系列の試験を開始する条件は全くありません。

3.B系列から試験を再開する理由が全く示されていません
 8月23日付報告書は、7月15日付報告書では現行試験計画との関連性が不明確である等と原子力安全・保安院に指摘されたことを受けて改正版として出されました。しかし、その改正版でも、現行試験計画を変更するまともな理由は何一つ示されていません。B系列を優先実施する理由として、7月15日付報告書では「KMOCと実機の比較評価等をより確実に行うため、まず実廃液による試験を実施していないB系列で実施する」としていました。8月23日付改正版ではその後半部分を「実廃液による影響を受けていないB系列で実施する」と書き直しています。これを裏返せば、A系列が実廃液による影響を受けていることを認めたことになります。しかし、その影響とは何なのかについては報告書では一切具体的に示していません。唯一の影響らしい付着物のついた高周波加熱コイルについては、それを取り替える方針を出しています。それゆえ結局、B系列で優先実施する理由は何も示されていません。実廃液の影響を受けたから試験できないというのであれば、現行溶融炉では試験などできないことになります。

4.B系列で実廃液による試験まで継続して行う理由も全く示されていません
 8月23日付報告書ではさらに、B系列で試験を後まで継続する理由として、「KMOC試験結果の実機への反映に係る最終的な確認を行う目的で、同系列において継続して実廃液による運転確認(試験)を行う」としています。つまり、KMOC試験との比較という装いをとって、現行試験計画を変更する理由付けをしているのです。KMOCでは模擬廃液しか用いていないのに、その試験結果を教訓にするというのは理由になりません。
 アクティブ試験の前段階で行われるべきモックアップ試験を今頃行ない、その結果を教訓にするなどというのは、アクティブ試験を行う資格が全く無いことを示すだけです。

5.流下性低下への対策はガラス温度計の数を増やすことだけです
 8月23日付報告書では「流下性低下等を発生させた要因に対する対策」として、@ガラス温度計の指示値、A底部電極温度の設定値、B流下ノズルの加熱性を挙げています。このうちAとBは第4ステップ開始時の状態に戻すだけのことであり、新たな対策は@しかありません。これもガラス温度計の数を増やして測定点を増やすというだけのものです。現行ガラス固化溶融炉の本質的な技術的問題に立ち入るのを避けて、温度計の数を増やすという姑息なやり方しか示せない報告書は、むしろガラス固化の行き詰まりを如実に示しているものです。

6.1年半から2年という大幅な竣工延期は、現行溶融炉の方式の破綻を示しています
 9月1日、六ヶ所再処理工場の竣工が、1年半から2年程度延期されるとの報道がなされました。原燃は、約4千億円もの増資を行い、溶融炉の改修をはじめ各施設の整備に充てるとしています。これほどまでの大幅な延期と多額の増資をしなければ立ちいかなくなっていることそのものが、原燃のガラス固化技術の破綻を如実に示しています。
 今回の延期により、竣工は早くても2012年4月〜12月ということになります。一方で、現行溶融炉は現在開発中の改良型炉に2012年度に更新される計画になっています。これでは、改良型炉に更新するまでの間、現行炉で試験を行って時間を稼ぐようなものです。また、改良型炉も現行炉と同じ方式(LFCM法)であり、現行炉と同様のトラブルに陥るのは避けられません。これの開発費のうち半額の計70億円が国家予算から投じられることになっており、昨年度から予算が付けられています。これに加えて増資によりさらに多額の費用がつぎ込まれることになりますが、これらは私達の電気料金として跳ね返ってきます。
 見通しのないまま白金族堆積という原理的欠陥を抱えた現行方式(LFCM法)の溶融炉を採用したことの責任にまで踏み込み、六ヶ所再処理工場の閉鎖を含む今後のあり方について抜本的な検討が必要なのではないでしょうか。

 8月23日付報告書は、何らの理由も示さずに、2008年6月30日付委員会決定を反故にするものです。自ら下した決定に対して貴委員会が責任ある態度を取られることを強く求めます。



要 請 事 項
1. ガラス溶融炉B系列でのガラス固化試験再開を認めないでください。8月23日付の日本原燃の報告書を承認しないでください。

2. ガラス溶融炉A系列が受けた実廃液による影響について原燃に具体的に示させてください。

3. 大量の無駄な費用をつぎ込んでこのままガラス固化試験を継続するのではなく、本質的な技術的欠陥の存在を率直に認め、六ヶ所再処理工場の閉鎖を含めて、今後のあり方について根本的に検討し直してください。


2010年9月5日

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
      大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(10/09/05UP)