六ヶ所再処理工場の不正溶接問題
日本原燃と原子力安全・保安院の補修と点検の強行による
強引な幕引き策動に抗議する



2003年9月26日                            美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

 「六ヶ所再処理工場の操業1年延期」との新聞見出しが大きく踊る影で、とんでもない悪だくみが進行している。
 日本原燃から8月22日付けで出されていた使用済み燃料貯蔵プール等での不正溶接補修工事計画を、原子力安全・保安院は9月18日に早々と認可し、日本原燃は早速その翌日(19日)に補修工事を開始した(原子力情報ナビ)。また、日本原燃は総点検計画について、原子力安全・保安院が設置した検討会での承認がないままに、22日に点検作業を強引に開始した。安全・保安院はそれを容認している。このような日本原燃と原子力安全保安院が一体となった危険な動きに強く抗議する。
 このような動きは、使用済み燃料の早期受入れ再開と来年1月予定のウラン試験開始に合わせるためのものである。事実、日本原燃は、9月19日に出した「再処理施設の工事計画の変更理由」の中で次のように述べている。「使用済燃料受入れ・貯蔵施設におけるプール水漏えい等に係る補修、ならびにウラン試験を安全かつ円滑に実施するために必要な品質保証体制の点検について、ともに年内の終了を目指して全力で取り組むことにより、施設の健全性を確認する方針とした」。つまり、スケジュールに合わせて補修や点検を優先させる中で、「施設の健全性を確認する」という本末転倒の考えを示している。

 点検や原因究明に優先させて、すべての不正溶接箇所(1箇所補修済みで290箇所)の補修を実施することについては、8月8日の第4回核燃料サイクル安全小委員会の中でも、順序が逆ではないかとの意見が委員からだされているが、それはいったいどうなったのか。その前に、いったい誰が補修計画を出すように指示したのか、明らかでない。今年6月24日の原子力安全・保安院の指示の中には、補修についてはまったく触れられていない。昨年11月20日の同指示では、「漏えい箇所の補修計画を策定し、報告すること」と書かれているとおり、「漏えい箇所の補修」に限定されている。しかも、昨年から今年にかけてさまざまな不正箇所がぞくぞくと現れたため、6月には問題のレベルが格段に高まったと見なすべきであり、補修などは後の段階に押しやられたと考えるべきである。ところが、8月8日の前記小委員会で事務局(安全・保安院)は、日本原燃の提出した補修計画を無批判にたんたんと説明しているのである。
 ここでいう補修とは、ライニングプレート等で穴のあいた箇所または同様に穴のあきそうな箇所のその部分だけを切り取って工事をしなおすだけのことである。なぜ穴があくような事態が300近い箇所で起こったのか、その根本原因はどこにあるのかが何も明らかにされていない。
 一口で言えば、穴あき現象の陰で、設計と実態との間にズレが生じていたのである。このズレの原因について安全・保安院は、「(原発と違って)本来複雑な構造で、(原発の施工実績だけでなく)気をつけなければならない特殊な理由があったということを認識した上で品質管理なりすべきであった」と、前記小委員会で述べている。この「複雑な構造」や「特殊な理由」によっては、補修はプレートそのものよりさらに基礎的なところで行う必要があるのかもしれない。その究明もなしに、ただ穴を塞ぐだけの補修を優先させ急ぐことは、とりもなおさず、根本原因の究明を放棄したいとの姿勢を如実に示している。

 前記8月8日の核燃料サイクル安全小委員会ではまた、「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」が設置されている。その第一回会合が9月12日に開かれ、検討課題の第一である「日本原燃の品質保証点検計画について、それを評価し、意見をとりまとめる」について検討された。ところがこの「点検計画」を承認するかどうかについては結論が出ず、次回の会合で原燃から事情を聞いた上で審議を継続することになったという(デーリー東北9/13)。
安全・保安院は、「総点検を指導する」ためにわざわざ検討会を設置していながら、日本原燃がその結論をまたずに見切り発車で総点検にとりかかったのを追認している。この点を聞かれた同院の核燃料規制課は「国として日本原燃の作業をとめることはできない。今後、検討会で出た意見を点検作業に反映させる必要がある」と話しているという(東奥日報9/23)。これでは、「規制課」の看板がしくしくと泣くであろう。

 これらの過程を通じて、明らかになったのは次の点である。
(1) 日本原燃は、300カ所近い不正溶接などを行っているにもかかわらず、まともな原因究明を放棄し、補修と形だけの点検を強引に先行させている。その目的は、東京電力の原発が運転を再開し始めているいま、使用済み燃料の搬入再開を急ぎ、同時に、ウラン試験開始を最優先させることにある。また、補修という既成事実をつくり上げることによって、不正溶接の原因究明を遠くへ追いやり、もって真の原因を覆い隠そうとしている。
(2) 原子力安全・保安院は、本来は日本原燃を監督・指導すべき規制当局の立場にありながら、指導責任を放棄し、日本原燃の無謀な先行を後追いし、その代弁者として振る舞っているだけである。

 しかし他方、8月8日の小委員会での議論や、9月12日の検討会で結論が出なかったことが示すように、政府が設置した公的な場においてさえ、日本原燃の強引なやり方に対する疑問が生じていることもまた事実である。
青森県民をはじめ、すべての心ある人々は、このような理不尽をけっして許さないであろう。日本原燃と原子力安全・保安院は、抗議の声に耳を傾け、ただちに補修作業と点検作業を中止すべきである。