10月2日 保安院交渉報告


福島老朽原発を考える会(ふくろうの会)
2008年10月4日

 交渉は10月2日午後2時〜3時半まで、原子力政策「転換」議員懇談会の主催で参議院議員会館第二会議室で行われました。近藤正道議員(社民党参議院:新潟)、下田敦子議員(民主党参議院:青森)と市民側は青森、宮城、名古屋、京都、大阪、首都圏他から約50名が参加。保安院は、原子力防災課の大橋氏、核燃料サイクル規制課の金城氏が対応しました。

 交渉に先立って午前11時から1時間ほど、経済産業省別館前でビラ巻きとアピール行動を行いました。グリーンピースによるぐらぐら活断層の上の再処理工場のオブジェによるアピールもありました。30名を超える人が集まりました。交渉もアピールもいつもの5割増し。顔ぶれも多彩で運動の広がりを感じさせました。交渉後には経済産業省記者クラブで記者会見を行いました。

 交渉では、まずはじめに青森の菊川さんから、保安院に要望書を提出しました。要望書は全国各地161団体2005名(47都道府県)の賛同を連ねました。交渉は、事前に提出していた質問事項に沿って行われました。

1.原燃が流下停止の原因としている「付着物」説について
 原燃は流下停止の原因をガラス温度の低下とし、その原因を「付着物」による反射率の下降としており、保安院もこの「付着物」説が有力な原因とされいるとし、前日の10月1日に行われた事故・故障ワーキンググループでもこのような原因分析を「おおむね妥当」としているとのこと。ところが交渉では、その肝心の「付着物」については、成分や厚み、実際にどの程度の反射率の下降と温度低下をもたらすについては何もわかっておらず、反射率の下降が温度低下をもたらすという一般的な関係を解析で確認しただけだということが、明らかになりました。

2.4月には流下したのに7月にはなぜ流下停止したのか
 原燃は7月の状況を、昨年11月の第4ステップでの試験開始の最初の1本目の製造とを比較し、温度上昇の違いを付着物で説明しようとしています。しかし、そのような比較をするのであれば、7月の一本前、4月に1本だけつくったときのものとも比べるべきでしょう。このときは、「付着物」の状況は7月と同じ、加熱時間なども同じでしたが、7月とは違いガラスは流下しました。「付着物」は同じなのに、流下したりしなかったりというのは、「付着物」説では説明できません。原燃は都合のいい比較を行って、都合の悪い比較を行っていないのです。保安院の大橋氏は、それも含めて辻褄が合うように検討すると述べました。

3.白金族の影響について
 原燃は、流下停止の原因に白金族元素は関係ないとし、白金族問題を意図的に避けてきました。保安院は、7月2日の試運転再開を認めるにあたって、昨年末までに炉内に溜まった白金族は取り除かれたとしていう立場をとり、その根拠として、底部にA、Bの2つある電極の抵抗値が改善したことをあげています。しかし、その抵抗値をあらわすグラフは、白金族を取り除く作業の前後でほとんど変化がありません。市民側は、このグラフからも白金族は取りぞのかれていないのではないかと主張しました。保安院は、このグラフが、A、Bそれぞれで改善されたことをみるのではなく、AとBの相対的な関係をみて、BがAに比べて改善されたことをみるだけだと説明しました。これに対しては参加者から「成績のいい子を例にあげて、全体が改善されたように見せかけているだけ」といった声があがりました。保安院は、最終的には「白金族は完全には除去されていない」と認めました。その上で白金族の発生は避けられない、なくすのではなく管理することが大事だなどとと開き直っていました。

4 データの公開について
 市民側は、溶融炉内の底部ガラス温度データを公開するよう要求しました。保安院は、企業ノウハウなので…という話をはじめました。しかし要求したデータは原燃の2月の報告書では昨年の試験時のものとして公開されていたものです。参加者は情報非公開の姿勢を批判し、近藤議員から「転換議連から、公開するよう要請があったことをまず伝え、結果を報告してほしい」と厳しく話をされました。保安院の大橋氏は「要請があったことは伝える」と回答しました。

5 流下試験を勝手にやった
 原燃は、9月28、29日に流下試験を行い3体のガラス固化体を製造しました。これは審議会での承認も保安院の許可もなく、原燃が勝手にやったものです。これについて保安院を問いただすと、試運転全体の許可は出しているからいいんだという返事でした。

6 証拠隠滅
 事前の質問事項では、流下ノズルの内部についても、白金族元素の有無を確認するよう求めていました。ところが9月28、29日の流下テストより、流下が停止していた時にノズル内にあった溶融ガラスは、ガラス固化体の中に落ちてしまいました。これによって、流下ノズル内の白金族を調べることはできなくなってしまいました。証拠隠滅ではないでしょうか。

7 事故・故障対策ワーキンググループの公開を要求
 今回の流下停止について、原燃がすぐにでも最終報告書を出すとの報道が流れています。報告が出たときの対処について大橋氏は、「通常であれば、事故・故障対策ワーキンググループで審議する」と述べました。そこで承認を得てその後に保安院が了承という段取りでしょう。ところが、その事故・故障ワーキングは、原発関係は公開なのに対し、六ヶ所再処理の案件の審議については非公開となっています。これだけ重要な問題を密室での審議で決めるというのはとても納得ができません。このワーキンググループの会合の公開を強く要求しました。
 また、ワーキンググループの委員について、名字しか公表されてないため、氏名と所属を明らかにするよう要求しました。最後に、次回の事故・故障ワーキングの前に再度交渉をもつよう近藤議員から強く要求がありました。

 今後、原燃の報告書提出と事故・故障ワーキンググループの動きを注視し、交渉や委員へのはたらきかけを行っていきましょう。

(08/10/06UP)