核燃料貯蔵プールの新たな漏洩事故等を踏まえた日本原燃への申入・質問書
ウラン試験を直ちに中止してください


2005年6月23日

 貴社の使用済み核燃料貯蔵プールのバーナブルポイズン取り扱いピット(BPピット)で、またも放射能を含んだ水が漏れるという事故が発生しました。今回の漏洩個所は、ステンレス製内張り板の溶接部ではなく、曲げ加工部という個所です。プール漏洩は、「総点検」を行ったので「今後は起こらない」と確認した結果、ウラン試験に進むことが容認されたのではなかったのですか。
 また、ガラス固化体貯蔵建屋の解析虚偽の問題も、未だ真相が明らかにされないままになっています。
 そこで、以下に述べる趣旨から、次の点を貴社に申し入れします。

申 入 れ 事 項

(1)ウラン試験をただちに中止してください。
(2)使用済み核燃料貯蔵プールでの漏洩問題について、下記第1項での質問事項に文書で7月1日までに答えてください。
(3)前回4月22日付の質問書に対する回答を、ようやく6月22日にFAXで受け取りました。その中で、回答の書かれていない次の2点について、早急に回答をだしてください。
 ・質問5で、BC,LBCなどの数値を求めていますが、それが書かれていません。これは商業機密に属するという「解析の詳細」ではなく、単なる数値ですので、速やかに公表してください。
 ・質問8では、当該建屋(ガラス固化建屋と東棟)から外部に漏れる放射線の量が変更前とどう変化したかを聞いています。しかし貴社の回答では、再処理施設全体の問題にすり替えています。たとえば、東棟建屋から外部に漏れる放射線量の解析値が、今回の変更申請でどう変わったのか答えてください。あるいは、その変更申請書自体を公表してください。
(4)近藤正道参議院議員の5月20日付質問主意書に対する政府答弁書が6月3日付でだされています(http://www.sangiin.go.jp/japanese/frame/joho7.htm 提出番号20)。それを踏まえて、以下の第2項で関連質問をしますので、文書で7月1日までに答えてください。
(5)貴社の回答について質疑応答の場を設け、内容に精通した責任ある回答のできる人を出席させて対応してください。

1.貯蔵プールの漏洩事故について
 前回の貯蔵プール漏洩事故の際、貴社は、再処理施設の建設時にさかのぼった原因究明よりも、漏洩自体の点検・補修を最優先させてきました。291箇所の「不適切溶接」が確認された後、27万件の書類点検に約130日(1日当たり2千件余り)、16万件の現品点検に約50日(1日当たり3千件余り)をかけただけで「総点検」を済ませ、それで「施設の健全性」は確認されたとして、ウラン試験に突入しました。まさにスケジュール優先の姿勢です。結局、不正溶接等の原因、建設当時の品質保証体制の欠陥については、いまだ明らかにされないままになっています。
 そして今回、予想もしなかったステンレス製内張り板の曲げ加工部で漏洩が起きたことは、その板の製造・加工時または取り付け時に何らかの重大な欠陥があったことを如実に示しているのではないでしょうか。また、貯蔵プールの溶接箇所にしても、その健全性が「総点検」ですべて確認されたわけではけっしてありません。
これらは、貯蔵プールの健全性にまったく信頼がおけないことを示しています。同時に、そのことは、貴社の体質上の欠陥問題を再び浮上させ、ウラン試験へ進むことを容認された前提が根底から崩れたことを意味しています。
 漏洩の原因究明に取りかかる前に、まずはウラン試験を中止することが先決です。スケジュール優先の姿勢は改めてください。
 この問題で、次の点を貴社に質問しますので文書で答えてください。

質問事項 1
(1)前回の「総点検」では、今回漏洩が起こった曲げ加工部を点検していましたか。していないとすれば、それはなぜですか。
(2)前回の「総点検」では、プール全体の内張り板の溶接部について、あますところなくすべての個所を直接点検しましたか。
(3)今回の漏洩後、プール全体の曲げ加工部について点検したか、あるいは、今後点検するつもりですか。それとも点検はBPピット内だけに限られているのですか。後者だとすれば、なぜ全体の点検をしないのですか。

2.ガラス固化体貯蔵建屋の解析の虚偽について
 貴社は、ガラス固化体貯蔵建屋で虚偽の解析が行われたことについては、1月28日公表の文書ですでに認めています。その「原因」は「文献式の解釈誤り」にあったとして、それと同様の誤りのないことはすべて確認したと1月28日に述べています。
 しかし、貴社の解析誤りを事実に則して表現すれば、『設計変更によってガラス固化体等の除熱解析の対象が変わったのに、ガラス固化体温度等の解析値は変更前と寸分違わない同じ値にした』ということです。特に、第1ガラス固化体貯蔵建屋・西棟では、一度目は「施工性を高めるために」、二度目は「貯蔵の効率化」のために2種類の設計変更を行ったのに、2度とも温度の解析値をまったく変えていません。そして、この変えなかったことが誤りであったことを、貴社は1月28日に認めています。 
 近藤正道議員の質問の趣旨は、設計変更によって解析対象が変わったのに、解析値を変えなかったのと同様の誤りが他の施設・設備に存在しないことは確認されているかというものです。これに対する政府答弁書では、「お尋ねの点については、特に確認していない」となっています。このような確認がなされていないのでは、再処理施設の健全性が確認されているとはとても言えないことになります。
 そこで貴社に次の点を質問しますので、文書で答えてください。

質問事項 2
(1)設計変更によって温度解析の対象が変わったのに温度解析値を変えなかったのと同様の誤りが、他の施設・設備に存在しないことは確認されていますか。
(2)貴社の「文献式の解釈誤り」という説明には明らかな矛盾があります。下記で具体的に指摘する事実に即して説明してください。
 貴社の平成13(2001)年7月30日付廃棄物管理事業変更許可申請書において、ガラス固化体貯蔵建屋B棟においては、「迷路部断面積」が4.0平方メートルと書かれています。ただし、平成15(2003)年10月1日付変更申請書で、4.0は2.7に変更されており、政府答弁書では、平成13年の4.0は2.7の誤記であったと書かれています。政府答弁書では、「迷路部断面積」とは「シャフトと下部プレナムを結ぶ導管の断面積から迷路板の面積を除いた面積である」と定義されています。結局、
    迷路部断面積=導管断面積−迷路板面積=2.7平方メートル
となり、貴社はこの面積評価に基づいて申請書を出したことになります。
 他方、この「迷路部断面積」は、貴社の今年1月28日付第2資料での「流路断面積」に相当していると考えられます。その資料15頁で、「文献式の解釈誤り」によって「流路断面積を導管断面積自体(S1)と採ってしまったと記述しています。ところがその場合、「流路断面積」は、ほぼ9平方メートルに近い値になり、前記の2.7平方メートルとはずいぶんかけ離れた値になります。むしろ、2.7平方メートルは、15頁の「正しい解釈」と書かれている値に相当していると見なすことができます。
 つまり、公式文書である貴社の申請書の記述に従えば、1月28日の「文献式の解釈誤り」の説明は成り立たないのではありませんか。申請書では、「流路部断面積」を正しく計算していながら、ガラス固化体の温度等は設計変更前と同じ値にしておいたというだけなのではありませんか。
(3)解析の誤りについての責任は、元請ではなく貴社にあると政府答弁書では答えていますが、この問題で貴社の誰がどのような責任をとったのか明らかにしてください。


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