策定会議での使用済燃料発生量「設定」は余りにも現実離れしている
老朽炉に鞭打つ60年運転、幻の大増設計画を前提


 新長期計画策定会議でのコスト比較などの重要な基礎となるのは、使用済燃料発生量の「設定」である。この発生量が小さいとき、再処理単価は大きくなり直接処分費との差が開く。そればかりでなく、再処理の必要性そのものを揺るがすことになる。
 策定会議では、下記グラフの点線が示すように、2030年以降の発生量は毎年約1150トンと想定している。六ヶ所再処理施設での処理能力800トンを超えて、第二再処理施設が必要な量である。この発生量は、発電電力量に比例し、発電電力量は原発設備容量から決まる。その際、設備利用率約85%と寿命60年が仮定されている(策定会議第9回資料1号4頁と13号4頁、27頁)。
 しかし、美浜3号機事故によって老朽原発の危険性が如実に示されたのに、60年もの寿命を仮定するのは無謀ではないか。参考までに、2004年1月23日付電気事業分科会コスト等検討小委員会報告書では寿命40年が想定されている。また、利用率85%も高すぎる。BWRのシュラウドひび割れが防ぎようのないことはすでに判明しており、BWR全体の設備利用率は2003年で40%を切っている。これは明日のPWRの姿でもあると考えるべきである。
 原発の新増設では、現在準備工事に取り掛かっている以上のものは島根3号までである。芦浜、巻及び珠洲はすでに計画自体が消滅した。事業者自体が、例えば福島第一原発7・8号のように、電力自由化の中で原発の新増設を躊躇している状況を直視すべきである。
 現状を踏まえれば、設備容量としては大きく見積もっても次のような想定になる。(1)2010年度時点では島根3号までの容量。(2)寿命は40年まで。この場合を下記のグラフで示した。使用済燃料発生量の計算には一応設備利用率80%を想定しているが、これも本当は高すぎる。この場合、策定会議の「設定」と比べて使用済燃料の発生量は格段に小さくなり、それだけ再処理単価は跳ね上がる。そうなると、再処理自体が必要かどうかも改めて問題となる。
 策定会議は、老朽炉に鞭打つ60年運転と幻の大増設という現実離れした前提に立っている。その判断で、ウラン試験を早々に開始するというような、取り返しのつかないことは絶対にすべきでない。

2004年10月19日 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(代表:小山英之)