石橋克彦さんを招いて
9月9日講演・討論会「原発の耐震安全性の崩壊−若狭の原発も危ない」報告
地震はとめられないが、「原発震災」はふせげる
耐震安全審査指針−旧指針と新指針−では耐震安全性は確保できない
若狭湾は活動期にある地震の発生地域内


 

 9月9日、「原発震災」に警鐘を発しておられる石橋克彦神戸大教授(地震学)から、「原発の耐震安全性の崩壊−若狭の原発も危ない」をテーマに講演していただいた。参加者は100名を超え、富山・愛知・岐阜・福井などからの参加もあり、盛況であった。講演の後の質問・意見も次々と出され、終了間際まで途切れることなく続いた。当日の集会の様子について講演内容を主として報告する。
 石橋先生の講演は、「地震・地震動・震災を区別して理解しよう」と地震現象についての基礎から始まり、地震の分類・法則性、そして原発の耐震設計審査の旧指針と新指針の批判と続いた。さらに、兵庫南部地震をはじめ、十数年前から頻発しているサハリンや北海道から福岡で発生している地震が、巨大地震と想定されている東海地震、東南海地震、南海地震の三大地震の前ぶれであり、日本列島の日本海側を西から東に圧迫している「アムールプレート東縁変動帯」(作業仮説)と名付けられたプレートの動きに関係していると、現在の「日本の地震情勢」について話された。若狭湾もこのプレートの影響下にあり、しかも地震の空白域であり、若狭に集中立地している原発が危険であると指摘された。

適地か否かの立地審査を行わないことは根本的な問題
耐震安全審査指針−旧指針と新指針−では耐震安全性は確保できない 

 現在立地している全ての原発の耐震安全性評価に用いられた旧・耐震設計審査指針については、現在の地震学の2本柱の成立−震源断層面のズレが発生源という地震の見方と地震がなぜ起こるかを明らかにしたプレートテクトニクス−以前のものであり、古めかしく、過小評価が多い。「原発の耐震安全性」は今回の中越沖地震以前から崩壊していた。
 また、新指針についても問題だらけだが、特に「震源を特定しない地震動の評価」が問題である。この問題点は、観測された震源近傍の地震計の記録のうち、「『震源と活断層を関連付けることが困難な』地震」の記録を基にして基準地震動の応答スペクトルを設定することで、多くの大地震をへ理屈をつけて「関連付けが容易」として除外している。事実、模範解答として提示されている日本電気協会の「震源を特定しない地震動」では、マグニチュード6.6程度、最大加速度450ガルほどの基準地震動の応答スペクトルにすぎない。安心のために、また「保守的」であるためには、震源近くの観測記録の全てを使用して応答スペクトルを作成するべきである(全て使用した場合の最大加速度は、約1000ガル)。
 さらに、原発の立地にあたって「立地審査指針」に基づく審査を行っていないことこそ根本的な問題であり、「立地の条件がいくら悪くても、耐震設計でカバーできる」というおごりたかぶった、地震を侮った姿勢こそ最悪の問題と強く批判された。
 なお新指針を批判された際に、「耐震指針検討分科会」の最終回に、委員の辞任を決めて臨んだが、退席時には、清水の舞台から飛び降りる気持ちであったことと、あの時辞めた自分に感謝していると語られたときには会場から大きな拍手が起こった。

若狭の原発の危険性
活動期にある地震の発生地域内、かつ[空白域]/越前海岸の隆起は地震活動によるもの

 若狭にある原発の地震の危険性に関して、兵庫県南部地震を契機として地震の活動期に入っている「日本の地震情勢」について話された。それは、極東の小さなプレート(マイクロプレート=アムールプレート変動帯と名づけておられる)が、西から東へ動いている動きが重要である。サハリンから九州にかけての広範囲で活発化している地震は、この動きの影響であり、西からの圧迫を受けて次々に起こっている。それが、やがては南海地震、東南海地震、南海地震につながる。三大地震の歴史上でも同じような地震活動があった。他方、GPS(全地球測位システム)による測量も西から東へのひずみ(年2センチ)を示している(注:新潟−神戸ひずみ集中帯や日本海東縁ひずみ集中帯を含み、もっと広範囲でダイナミックなマイクロプレートの動きについて以前から主張されている。)
 この動きの影響下に若狭の原発群は立地し、その上、地震の「空白域」であることから、地震が起こる可能性が高い。加えて、日本海沿いの陸地で、12〜13万年前は海岸線であったところが、現在は100メートルも隆起している地点がいくつかあり、その一つが越前海岸である。このことは、過去に地震が繰り返し起こったことを示しているが、歴史文献に残っていないことから、地震の可能性が高い「空白域」である。
 さらに、若狭湾沖にある沖トラフの両脇には海底の活断層があり、M7.6クラスの地震での津波の危険性も考慮しなければならない。こうした津波については「津波伝説」が若狭湾の一体に残っており、過去には実際に津波被害があった。
 講演の最後は、インド洋での津波やJR宝塚線脱線事故などの教訓から「起こる可能性のあることはいずれ起こる」と警鐘を発し、柏崎刈羽原発を襲った「中越沖地震を本気で受け止めなければ大変なことになるであろう」と締めくくられた。

 講演の後、当会の小山より「耐震問題に関する次回関電交渉の焦点」について簡単に報告し、質疑と討論に移った。
石橋先生の講演は、几帳面に淡々と事実を慎重に選んで、しかも社会現象である「原発震災」は起こしてはならないという気迫に満ちた内容であり、難しい内容も分かりやすく話され、2時間が短く感じられたのは私だけではないであろう。

※当日、9月26日予定と報告していた次回の関電交渉は、10月2日(火)午後6時から、に決定(参加される方は、6時前に関電本店前に集まってください。)

(07/09/13UP)