は じ め に


 2006年3月31日、六ヶ所再処理工場は本物の使用済み核燃料の処理をするアクティブ試験を開始しました。燃料棒がせん断されるたびに、気体放射能が大気中に放出されています。タンクに溜まる液体放射能は頻繁に海に放出されています。
六ヶ所から海に放出される放射能は1年で4万7千人分の経口急性致死量に相当します。しかし、日本原燃は、放射能は海岸に打ち寄せずに、拡散し、海水で薄まるので影響はないとしています。放射能の年々の蓄積は全く考慮されていません。
 しかし、英仏の再処理工場がもたらした汚染の実態はそうではありません。フランスのラ・アーグでの小児白血病多発は、海岸での放射能の蓄積、魚介類の摂取によるものです。イギリスのセラフィールドでは、海底に堆積した放射能が、絶えず海水と魚介類とを汚染し続けています。英仏の実態に照らせば、日本原燃の想定は現実的なものではありません。
 日本原燃の公表によれば、4月〜6月に、計13回、約23兆ベクレルの放射能が海に放出されました。6月末にアクティブ試験の第1ステップが終了しましたが、第2ステップでは、より燃焼度の高い燃料が処理されるため、より多くの放射能が海に放出されます。来年夏頃の本格運転となれば、海への放出は2日に1回の頻度で行われると報道されています。とりかえしのつかない深刻な汚染が始まります。とりわけ海産物の宝庫であり、名勝でもある三陸海岸の被害は深刻なものとなります。
 本冊子では、再処理工場から海に流される放射能の影響に焦点をあてます。英仏の放射能汚染の実態を紹介することで、放射能の蓄積はなく、拡散して薄まるから影響はないとする日本原燃のデタラメを明らかにします。
多くの方に、海に垂れ流される放射能がもたらす深刻な汚染について知っていただき、再処理工場からの放射能放出を早期に止めるための一助となれば幸いです。
2006年9月