報告:第1回審尋(4月24日) 大飯原発3・4号運転差し止め仮処分裁判

わずか15行の答弁書だけで、裁判の引き延ばしに終始する関電
反論もできないのなら、再稼働などとんでもない

2012年4月24日 11:00から約30分間
「関西電力大飯原子力発電所3号機、4号機運転差止仮処分命令申立」
第一回 審尋 大阪地方裁判所508号室
裁判官3名+(研修生3名)、書記官1名
債権者(原告262名)代理人弁護士 5名 原告出席者10名
債務者(関西電力)代理人弁護士 5名 関西電力側10名

 第一回審尋は「論点の整理」と債務者の「時間稼ぎともとれる答弁書」の問題を中心に約30分行われました。

 原告が申立書を提出したのは3月12日ですが、専門家の集団であるはずの関電からはわずか15行の答弁書1枚が提出されたにすぎません。原告代理人の弁護士は、あまりにも誠意のない時間稼ぎをしているとしか思えない対応を厳しく批判しました。関電代理人の弁護士は「福島原発事故の新しい知見が出ている中で、専門知識が求められる案件で自分達の考えを理解してもらう用意に時間がかかる」との返答。しかし、答弁書には「安全性について、適宜新たな知見に照らして評価、確認し、必要な対策を実施しており、安全性は確保」となっており、大きな矛盾を感じた。

 それに対し原告代理人の弁護士から、今回の論点は細かい専門的な分野の知識を必要としない単純明快な事案であることを説明。3・11震災前は「安全審査指針」があり、それに基づき設置許可等の審査を行っていた。しかし、福島原発事故が発生し、これまでの安全審査指針等は崩壊し、「新しい安全審査指針」が必要になった。その指針類をまさに今作っている状況にも関わらず、安全性の基本である指針が無い下で、「4閣僚の判断基準」をもとに再稼働の安全を判断することはできない。原子力安全委員会の班目委員長も「ストレステスト一次評価で安全性を確認することはできない」と言っていることからも明らかであり、今日(4月24日)原告側が提出した主張書面の内容を読めば、いかに大飯原発の再稼働が危険であるかは一目瞭然である。

 原告主張に対する詳細な答弁・回答には時間を必要とすると繰り返す関電側弁護士は、次回の審尋期日を2か月先の6月末に希望。時間稼ぎともとれる対応に原告側弁護士は厳しく抗議した。その結果、1か月後の5月21日に決定した。「新しい安全審査指針」がまだできあがっていない状況で再稼働を始めようとする危険な現状を考えると、関西電力は誠意ある対応がないのはもちろんのこと、安全性を重視していないことは明らかである。

 「安全審査指針」という安全性判断の基礎が崩壊している状況で原発が動くという、とんでもない現実が起ころうとしている。関西電力は原告主張に1か月以上たっても詳細を回答できない状況である(3月12日に提訴し、その直後に関電は申立書を受領している)。関電側弁護士が言うとおり、「福島原発事故からは新たな知見が今なお出続けている」のだから当然なのかもしれない。事故は収束しておらず、だからこそ新しい安全審査指針も作れずに原発の矛盾や危険が露出してきている。

 たった15行の答弁書の最後の段落にはこうある。「福島第一原子力発電所と同様の重大な事故に至ることはなく、債権者らが、命、健康、生活全般に不可逆的、かつ、回復不可能な損害を受ける恐れはない」。
 福島原発事故で何が起きたのか、今もなお苦しんでいる人達がどのような生活をしているのかを電力会社はどう考えているのか。福島・宮城・茨城や東日本の広域で今なお放射能汚染された地域で暮らす人々、避難せざるをえなかった人々の苦しみを感じているのだろうか。このような答弁書を出されることに憤りを感じる。

 これまでの原発に関する裁判所の結果は知っている。しかし、震災後日本は変わったのである。原子力村も安全神話もなくなったと信じたい。この裁判には日本国民が注目し見守っている。こんなでたらめな対応と回答を震災後も平然と行う関西電力が原発を稼働させることは危険すぎる。裁判所に、早期に、そして正義にのっとった判決を期待する。

 次回の審尋は5月21日(月) 午後1時30分〜3時です。

原告M


(12/04/25UP)