3月26日、「もんじゅ」運転再開に対する緊急要望書を3団体で福井県に提出

 3月26日、原子力発電に反対する福井県民会議、グリーン・アクション、美浜の会の3団体は、「高速増殖炉『もんじゅ』の運転再開に反対する緊急要望書」を福井県に提出した。県の最終判断が目前に迫るという緊迫した状況の中、緊急の提出行動となった。
 運転再開を目前に控えたこの時期になって、県の原子力安全専門委員会での議論を通じて、「もんじゅ」の危険性が具体的に明らかになってきた。このまま運転再開を許せば、取り返しのつかない大事故を招く危険がある。県民や周辺住民の生命と安全を守る立場から、県として「もんじゅ」運転再開は認められないと判断して欲しいと申し入れた。
 福井、石川、岐阜、京都、奈良、大阪から12名が参加した。対応したのは、原子力安全対策課の櫻本課長で、岩永参事が同席した。県庁の安全対策課の部屋で、午後3時から約40分間の申し入れとなった。
 まず、上記3団体が緊急要望書を提出した。続いて、「放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜」は、前日3月25日に岐阜県議会で採択された意見書を添えた要望書を提出した。さらに、小林圭二さんから、学者・研究者の有志一同による緊急声明が提出された。
 その後、櫻本課長から口頭での回答があり、短時間ながら議論を行った。

◆警報が鳴ってもすぐに止めないのは「熱衝撃によるダメージがあり、緊急停止の回数は限られているため」
 3月18日の専門委員会で原子力機構は、委員からの質問に対して「1種類のナトリウム警報装置が鳴っても原子炉を緊急停止しない」と答えた。警報が鳴っても止めないというような安全性無視の操作手順を認めたままでの運転再開など許されない。事実、1995年のナトリウム漏えい火災事故では、すぐさま緊急停止せずに通常停止の手順をとったために、事故が拡大している。そのため、警報問題について県の姿勢を問うた。
 なぜ、警報が鳴ったらすぐに止めないのかと聞くと、櫻本課長は、「RIDという警報機は非常に感度が高いのでゴミなどを吸い込んで誤った警報を出す場合がある」とし、「警報が鳴った場合は作業員が現場に行って本当に漏えいがあるのか確認する必要がある」と説明した。ナトリウムの漏えいを正しく検知できず、結局、作業員が直接現場に行って目視で確認するしかないという説明に改めて驚かされた。そんなことをやっている間に漏えいが拡大するではないか。警報が鳴った段階で緊急停止するようにしたら、一体どういう不都合があるのか説明を求めた。繰り返し聞いても、櫻本課長は「漏えいを確認したら止めます」と質問に対して直接には答えなかった。しかし、最後に岩永参事は「緊急停止すると急激な熱的変化によるダメージを機器に与えることになる。緊急停止を何回やるのかということは設計上想定されている」と説明した。そこで、「もんじゅの場合、緊急停止を何回想定しているのですか」と聞いたが、「設計上の数値であり、この場では分からない」とした。高温のナトリウムを使う「もんじゅ」は、緊急停止・ドレンを行うことで、通常使用していない配管に熱衝撃が加わり、配管そのものが破損してしまうという別の危険性があるのだ。提出行動後の記者会見で、小林圭二さんは「寿命中10回しか緊急停止できない」と解説された。緊急停止もままならないという「もんじゅ」の構造的な危険性が、警報問題によって改めて露呈した形となった。

◆「もんじゅ」の耐震安全性は確保されていない
 次に「もんじゅ」の耐震安全性に議論は移った。国の地震調査研究推進本部が認めている山中断層を、原子力機構は「文献断層」と決めつけ、評価から除外している。山中断層の存在を認めれば、和布-干飯崎沖〜甲楽城断層と、柳ヶ瀬〜関ヶ原断層の連動性を考慮して、100q以上の断層による地震を想定せざるをえなくなる。そうなれば、「もんじゅ」の基準地震動760ガルは過少評価となり、耐震安全性は確保されないことになる。
 消された山中断層について櫻本課長は、「山中断層も入れて120kmになるが、念のために評価している」と説明した。120kmの地震の規模については、「M8.2になる」と答えた。これでは耐震安全性は確保できないのではないかと聞くと、課長は「基準地震動Ssの760ガルを、長周期、4秒のところで一部超えるが、安全上重要な機器はないので問題はない」と説明した。しかし、この「念のため」の評価は、断層モデルを用いた評価だけであり、設計用応答スペクトルによる評価は行っていない。
 他方、「もんじゅ」直下にあるC断層の評価では、短周期側で760ガルを超えている部分がある。そのため、他の原発では活断層による揺れは基準地震動に包絡されるようになっているのではないかと聞いた。しかし、櫻本課長は「他の原発の話は保安院の方へ確認して欲しい」「県としては国の評価結果を確認することに尽きる」というような回答にとどまった。参加者は、配管が薄く地震に弱い「もんじゅ」の場合、特に慎重に判断すべきではないかと強く訴えた。櫻本課長は、「安全専門委員会の最終的な判断もまだ出ていない。要請事項について各委員に伝えた上で審議に臨んでもらうことにする」と約束した。
 減衰定数の問題は時間がなく、具体的なやりとりはできなかったが、冒頭の回答で課長は、国が4%で認めているのだから、国の基準を満たしていないということにはならないと形式的に回答した。

◆風下住民の広範な不安の声を知事に伝えてほしい−岐阜県議会で意見書が採択される
 岐阜県からの参加者は、岐阜県議会の意見書をしっかり確認して欲しいと訴えた。「年間を通じて『もんじゅ』の風下にある岐阜県では県民の間に不安が高まっている。このことを受け、岐阜県議会は全会一致で「『もんじゅ』の安全に関する積極的な情報提供を求める意見書」を採択した。この種の意見書が採択されたことはかつてなかったことである。意見書採択が示すように、隣県に広範な不安があることを福井県知事にしっかり知ってもらった上で判断して欲しい」と強く要請した。櫻本課長は、「もんじゅ」については国が一義的に責任を持つものだという姿勢は基本的に変えなかったが、「岐阜県民の方々にそういう不安があるということは良く分かりました」と答えた。
 石川県からの参加者も、ナホトカ号重油流出事故のときの経験をもとに、「もんじゅ」で事故が起きれば隣の石川県にも大きな被害が及ぶと話し、運転再開を認めないように訴えた。
 小林圭二さんは、短期間で集まった学者・研究者の緊急声明を提出した。「もんじゅ」の配管などの検査はほとんど行われておらず、諸外国は高速増殖炉から撤退している事実、多額の税金をこれ以上つぎ込むことは許されない等、「もんじゅ」の危険性や社会的・財政的側面からも運転再開は認められないと指摘した。

 提出行動当日の夕方になって、福井県は3月29日に安全専門委員会を開催することを公表した。安全専門委員会が耐震安全性について了承すれば、福井県知事は、文科相、経産相との間で「もんじゅ関連協議会」を開催し、地域振興への国の対応を引き出した上で運転再開を最終判断すると語っている。
 3団体は、安全専門委員会にも耐震安全性等についての要望書を既に提出している。26日に県に提出した要望書の内容についも、櫻本課長は安全専門委員会に伝えると述べた。安全専門委員会は、「もんじゅ」の耐震安全性等の問題について、慎重に議論すべきだ。
 「もんじゅ」の運転再開に反対しよう。

2010.3.28

(10/03/28UP)