防衛庁だけではなかった――
電力各社と資源エネ庁外郭団体が思想調査を実施し個人情報リストを作成
関電はリスト作成について謝罪し、個人情報の収集をただちに中止せよ




 資源エネルギー庁の外郭団体である電源地域振興センターが、原子力立地給付金の受け取りを拒否した住民の拒否理由の報告を各電力会社に指示し、拒否者リストを原発立地道県に提供していたことが明らかになった。中国電力が作成し、センターが島根県に提供したリストには、住所氏名と共に「原子力反対」「原子力発電に対する小さな抵抗」「原子力発電に対する思想信条による拒否ではない様子」などと、個人情報のみならず、個人の思想信条に関わる情報が記載されていた。また東京電力が作成し、茨城県に渡っていたリストにも住所氏名に加え「JCO事故があったので辞退したい」等の記載があった。さらに、福井県地域対策室にも、関西電力と北陸電力の作成したリストが提供されていたことが明らかになっている。

個人情報リストの作成は明白な人権侵害であり、犯罪行為である。
 リスト作りは防衛庁だけではなかった。電力各社と資源エネ庁外郭団体も同じように個人情報リストを作成していたのである。単に給付金の交付状況を確認するためなら、拒否理由まで知る必要はない。住所氏名と共に原発に対する政治的信条を特定できるようなリストを作成するなど言語道断である。給付金の受け取りを踏み絵にして、原発に対する政治的信条をあぶり出した上で、原発に反対する市民を特定し、批判活動と運動を弾圧することを目的とした思想調査に他ならない。明白な人権侵害であり、犯罪行為である。

政府・電力は個人情報リストを是認し、犯罪性を認めていない。
 しかし資源エネ庁、電源地域振興センター、電力会社はその犯罪性を認めていない。センターは、「個人情報のリストを渡したのは、県とは信頼関係があり、乱用される恐れはないと思ったからだ(給付金課長)」とコメントし、リストを地方自治体に渡すことについて「個人情報保護の観点から検討していく(本郷理事長)」としているだけである。「電力会社が独自に作成したもの」と直接の責任を回避しながら、リスト作成そのものは是認し続けている。当然、謝罪と反省は一言も口にしていないし、リスト作りを中止するとは言っていない。監督官庁である資源エネ庁は、センターの独断ということで責任を逃れようとしている。リストを直接作成した電力各社も、謝罪や反省の意志を一切示していない。リスト作成を中止するとも何とも言っていない。中電が見直しの検討を発表しただけである。

電力が思想信条を含む個人情報を収集し、リスト化していたことが最大の問題。
 この問題を最初に報じた朝日をはじめ新聞各紙は、個人情報が自治体に流されたという点にのみ比重を置いている。電力会社や資源エネ庁の外郭団体が個人情報リストを作成し、保持していること自体の犯罪性を等閑視している。自治体へのリスト流出に問題が矮小化されている。
 自治体にリストを渡しことも大きな問題であるが、電力会社が思想信条を含む個人情報を収集し、リスト化していたこと自体がまずもって重大問題である。関西電力から福井県に渡っていたのは、イニシャル表記による匿名リストだということになっているが、拒否理由を聴取しまとめる過程で、関西電力は拒否者の個人情報を知り得たはずである。詳細なリストを関電は作っているはずだ。しかし関電は、謝罪どころか何のコメントも釈明も発表していない。リスト作りをやめるとも言っていない。関電を追及し、リスト作りを即刻中止させなければならない。今持っているリストを破棄させなければならない。

政府ぐるみの組織的で大規模な思想調査ではないか。
 さらに、政府ぐるみの組織的な調査であった疑いが非常に濃厚である。拒否者リストの作成は、電源地域振興センターが設立された1990年から現在まで10年以上にわたって続けられてきた。センター設立以前は、通産省の別の外郭団体が同種の業務を行っていたとされている。したがって、リストの作成はもっと以前から行われていた可能性が強い。また、島根や茨城、福井の他、北海道、青森、宮城、福島、新潟、石川、愛媛と10もの立地道県に個人情報のリストが渡っていた。長期間かつ広範囲にわたって、各電力と資源エネ庁の外郭団体が、目的意識的・組織的にリストの作成を行っていたのである。このような大がかりな調査を外郭団体が独断で指揮・実行していたとは到底考えられない。資源エネ庁ぐるみ、政府と電力による組織的な行為ではなかったか。資源エネ庁は「把握していなかった」と関与を否定しているが、極めて疑わしい。当然、資源エネ庁にもリストが渡っているに違いない。

 政府・電力による思想調査とブラックリスト作りに反対しよう。政府・資源エネ庁の関与と責任を追及し、情報収集を中止させよう。関電の責任を追及しよう。関電は、個人情報リストの作成について謝罪し、情報収集をただちに中止せよ。福井県に渡したリストの内容を明らかにせよ。個人情報収集活動の実態を明らかにせよ。



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