関電のずさんな配管管理を改めて示す−美浜3号の配管減肉調査結果
昨年の定検で既に必要最小肉厚を下回っていた配管を放置
前々回の定検で余寿命ゼロの配管を放置
根拠も示さず「余寿命が短く算定されていると推定」し、配管取替の方針を示さず



 関電は、事故を起こした美浜3号機の配管減肉調査を開始した。12月21日に、破断したオリフィス下流部や保安院から追加点検指示のあった30カ所の調査結果を発表した。今後、運転開始以来30年を過ぎている「高経年化プラント」と同じ扱いで、全ての配管減肉を検査するという(美浜3号機は運転開始以来28年経過)。
 30カ所の配管減肉の調査結果は、改めて、関電がいかにずさんな配管管理を行っていたかを示している。関電は確信犯そのものである。調査結果は、破断した配管が「たまたまチェックリストから漏れていた」ために事故が起きたのではなく、関電のずさんな配管管理そのものが事故を引き起こしたことを改めて示している。関電の発表に即して問題点を見ていこう。

 30箇所の配管調査に関する関電プレスの要点は以下である。
(1)保安院から必要最小肉厚を下回っていると指摘されていたB−給水ブースターポンプ吐出管(スケルトン番号121−11)は、今回測定でも「計算必要厚さ」を下回っていた。
(2)保安院から余寿命が1年未満であると指摘されていた3箇所は、今回測定で「判定基準である必要最小肉厚を満足」。この3箇所の内、余寿命が最も短いのは0.3年(主給水管A−主給水ポンフ吐出管・スケルトン番号53−1)。
(3)上記4箇所については、今回の定検中に取替補修する。
(4)主給水管(給水ポンプミニマムフロー管オリフィス下流部)12箇所は、余寿命が10年以下になっているが、「配管形状や測定位置の差異の影響により余寿命が比較的短く算出されていると推定されていることから、次回定期検査以降継続的に測定し減肉の有無を確認」。

■B−給水ブースターポンプ吐出管(スケルトン番号121−11)は、
 既に昨年の測定時に必要最小肉厚を下回っていたが、その責任も明らかにしない関電


 今回の測定で計算必要厚さを下回っていたと関電が言うB−給水ブースターポンプ吐出管(スケルトン番号121−11)は、既に前回測定時(20回定検・昨年5〜7月)に、計算必要厚さを下回っていた。関電は、昨年の定検で既に法令違反の減肉を知っていた。昨年の定検で当然取り替えるべきなのに放置し続けた。なぜ配管の取替を行わなかったのか、一切説明はない。責任を明らかにすべきである。さらに、昨年の定検時に必要厚さを割り込んだ配管があることが分かっていたのだから、他の箇所も念入りに調査しておれば、5名もの死者を出した事故を防ぐことも可能だったはずである。

B−給水ブースターポンプ吐出管(スケルトン番号121-11)測定最小値履歴(関電hpより)
 公称肉厚  計算必要厚さ 余寿命
(年)
 今回測定 
04.11.30
 前回測定 
20回定検
前々回測定 
19回定検
前々々回測定
16回定検
12.0 o 9.5o 9.3o 9.4o 10.0o 10.7o
[注:第20回定検 2003年5月〜7月、 第19回定検 2002年1月〜3月]

■復水処理装置主復水管(スケルトン番号103−31)の枝管は、
 前々回の測定時で余寿命ゼロなのに放置


 保安院から余寿命が1年未満と指摘された3箇所のうち、復水処理装置主復水管(スケルトン番号103−31)の枝管の状態もひどい。20回定検(昨年5〜7月)どころか19回定検(2002年1〜3月)の測定で、既に必要最小肉厚と同じにまで減肉している。つまり余寿命はゼロである。少なくとも前々回の定検(19回定検)で取り替えるべきものだ。このことについても全くほおかむりしている。そして今回測定では、肉太りして「必要厚さを満足」となり、余寿命は4年に延びている。2002年の第19回定検でなぜ取り替えなかったのか、その責任を明らかにすべきである。
 さらに、これら3箇所は、保安院から余寿命が1年未満と指摘されていた。今回の発表では、そもそも「余寿命1年未満」とは、具体的に何年だったのか、それすら明らかにしていない。今回の測定で余寿命が1年を切っているのは主給水管(スケルトン番号53−1)だけだ。他の2箇所は、余寿命1.3年、4.0年と寿命が延びている。これは、今回測定によって配管の肉厚が増えたためである。
 関電がこの間発表している配管の肉厚については、「減肉」ではなく、肉厚が大きくなる「肉太り」が多々ある。それによって、余寿命が大きく引き延ばされている。「肉太り」の原因は何か、サビが付着して肉厚が大きくなっているのか。そうであれば、腐食を考慮すべきである。「肉太り」の理由も明らかにせず、単純に肉厚が大きくなったとして余寿命を引き延ばすやり方そのものに問題がある。

復水処理装置主復水管・枝管(スケルトン番号103-31)測定最小値履歴(関電hpより)
 公称肉厚  計算必要厚さ 余寿命
(年)
 今回測定 
04.11.30
 前回測定 
20回定検
前々回測定 
19回定検
前々々回測定
17回定検
5.5 o 3.0o 4.0年 3.2o 3.0o 3.0o 3.3o

湿分分離加熱器ドレン管(スケルトン番号52-44)測定最小値履歴(関電hpより)
 公称肉厚  計算必要厚さ 余寿命
(年)
 今回測定 
04.11.30
 前回測定 
20回定検
前々回測定 
19回定検
前々々回測定
9回定検
8.2 o 3.8o 1.3年 4.2o 4.1o 4.3o 7.5o

主給水管(スケルトン番号53-1)測定最小値履歴(関電hpより)
 公称肉厚  計算必要厚さ 余寿命
(年)
 今回測定 
04.11.30
 前回測定 
20回定検
前々回測定 
19回定検
前々々回測定
18回定検
30.0 o 22.0o 0.3年 22.1o 22.1o 22.3o 22.5o


■根拠も示さず「余寿命が短く算定されていると推定」し、配管取替の方針を示さず

 関電プレスの「その他」項目では、「給水ポンプミニマムフロー管オリフィス下流12箇所については、配管形状や測定位置の差異の影響により余寿命が比較的短く算出されていると推定されることから、次回定期検査以降継続的に測定し減肉の有無を確認していく」とある。余寿命10年を切ったこれら配管については、取替ではなく「測定継続」としている。
 関電の新たな老朽炉に対する肉厚管理では「減肉傾向が認められるもので余寿命10年未満のものは数回の定検でステンレス鋼等に取替」となっている。この新たな方針でいけば、当然取替の対象である。しかし「余寿命が比較的短く算出されているとの推定」によって、取替方針は示していない。しかし、その「推定」の根拠は何も書かれていない。
 関電が打ち出した老朽炉に対する配管管理の方針は、「減肉傾向が認められるもの」に限られることになる。上記のように、関電が「余寿命が短く算定されていると推定」すれば、配管を取り替える必要はないというわけだ。金と時間のかかる配管取替を極力避けようとしている。「老朽化対策」とは名ばかりである。

■関電と国の責任を厳しく追及していこう

 国と福井県は、改めて関電のずさんな配管管理について厳しく責任を問わなければならない。しかし国は、これら問題から目をそらそうとしている。12月25日(土)、経産大臣、保安院長、資源エネ庁がそろって福井県を訪問し、原子力安全基盤機構の事務所を福井県に設置すると表明した。さらに、新幹線関連予算、エネルギー拠点化計画の予算を増額するなど予算のばらまきで事故に蓋をしようとしている。知事は、予算のばらまきを歓迎している。
 また、国は原子力関係の安全規制を抜本的に改悪しようとしている。配管管理指針の「見直し」によって、他の配管から類推して検査を大幅に省略する手法にお墨付きを与えようとしている。そのための指針をつくっているのが機械学会の減肉タスクであり、その幹事は関電社員である。さらに、原発機器の材料や強度等を細かく規定している告示501号等を廃止し、技術基準の「性能規定化」を狙っている。また、「確率論的安全評価」の概念を導入し、米国なみの検査の合理化、効率化最優先の路線をいっきに押し進めようとしている。
 「再び事故を起こしてくれるな」という遺族の叫びを踏みにじってはならない。5名もの死者を出した事故の教訓から、今後も福井、全国の人々と連携して、関電と国を厳しく監視し、その責任を追及していこう。

2004年12月27日