質問書と回答
美浜3号機事故に関する「中間とりまとめ」等を踏まえた質問書


経済産業大臣 中川昭一 様
原子力安全・保安院長 松永和夫 様

2004年11月

[1]関西電力が9月27日と29日に発表した「対策」について

1.「中間とりまとめ」の当面の対策や、中川経産大臣による関電への厳重注意文書では、「的確な外注管理の実施」を行うことが主要な対策の一つになっています。しかし、関西電力は27日に、「肉厚測定作業を除く2次系配管肉厚管理業務は、当社が自ら全て実施することとし、必要なシステムを含め、協力会社から当社に移管する」(12月末までに実施)との独自の方針を発表しました。
 1)関西電力のこの対策内容は、外注管理を的確にせよという貴院の指導内容と異なるのではありませんか。また、関電のこの措置によって、国の対策等は事実上意味のないものになるのではありませんか。
 2)貴職は、「品質保証、保守管理が機能していない」関西電力が、配管管理業務を行うことを認めるのですか。

(保安院)配管管理自体を自分たちで責任持ってやるということ自体はリジェクトされるような考えではありません。ただ、どうやってきちんとやるのかという所の説明なくして、単にやりますと言われても、はいそうですかとは言えません。今までのように外に投げるんではなくて自分たちでどうやってきちんとやるのか、関電のやり方、実態を調べて、と考えております。

2.9月29日に関電が発表した対策では、現行の管理指針の方式「余寿命が2年以下の場合は取替計画を立案し、耐食性材料(SUS304等)等と取替えるものとする」に替えて、「余寿命が5年以下の場合は点検補修計画を立案するとともに、取替・溶接補修(内面肉盛補修)までの間は、毎年点検を継続する。なお、減肉が進行する場合は、余寿命がゼロとなる前に取替・補修を実施する」となっています。すなわち、「取替」の替わりに「取替・溶接補修(内面肉盛補修)」を行うことにしていますが、この点をどう評価していますか。

(保安院)いかに配管を管理していくかという初動のタイミングを、ずっと上流といいますか、5年前に持ってくるということは、非常にいいことだと思います。その上で、毎年そこの箇所を点検するという考え方も妥当だと、非常にいいと思います。ただ、余寿命がゼロになる前に取り替えをするという所はもう少し検討が必要だと思ってまして、実際には配管の調達とかに時間がかかる場合がありますから、1年を切ってるという場合になるとですね、ちょっと配管のタイミングに間に合わない場合もあるんじゃないかと、そういう実態面をきちんと考慮してですね、技術基準を切る前に、きちんと取り替えられるというようなルールになることが望ましいと思ってまして、先ほどいろいろ議論になりましたけども、配管の取り替えルールについても、今事業者にどういうことを、義務づけるかというのを検討してます。

(市民)内面肉盛補修については?

(保安院)内面の肉盛補修というのは、工学的に妥当な補修方法と認識しております。

[2]福島第一原発5号機の減肉に関する貴院の見解(10月7日付)について

1.福島第一原発5号機の配管は、実際に測定した値と管理方針に基づく評価により、現在既に技術基準の必要最小肉厚を切っていると見なされ、電気事業法第39条に違反している可能性があり、直ちに運転を停止させるべきではないか。「仮に技術基準上の最小許容肉厚に達したとしても、これがただちに安全上の問題に結びつくことはない」との理由で運転継続を容認するのは、自らの規制の法的基準を否定し、原発の運転にあたり、法令を順守させるという保安院の最低限の職務を放棄するものではないか。

(保安院)保安院の職務を放棄するものではないかということについては、そんなつもりはございません。どうして、私たちが言ってる、11月にきちんと計って換えるようにと、9月の時点で言ってるというところを、誰も目をあててくれないかなというところが、悲しいんですけど。

2.保安院は見解において、減肉が局部的であるとしているが、いったいどうなれば「局部的」というのか。厳密にどのように規定されているのか。美浜3号機事故について保安院が作成した「中間とりまとめ」では、局部減肉の評価方法については今後の課題という位置付けになっており、現在は保守的に全周減肉とみなして判断することになっているのではないのか。

(保安院)それを補強するために、括弧2ポツ、3ポツというのが、ちょっと強調する形で、書いてしまったんですけど、確かに2番目のポツの局部的というとこは、定義があいまいで、ここは確かに厳密に言われれば、どこまでが局部的と見て、どこまでがそうでないかというのは、水掛け論になりまして、定義あいまいなものを使ってしまったなぁと。

3.保安院は見解において、東電が評価に用いた0.6ミリ/年という減肉率が、保安院がPWRで解析した0.2〜0.3ミリ/年より大きいことを理由に、減肉率が過大に評価されている可能性を指摘している。しかし、東電の評価は測定値に基づき算出した事実であるのに対し、保安院の解析は電力会社の側で選んだわずかな例の平均値をとったものである。このような数値を都合よく使って、事実を無視することはできないのではないか。

(保安院)実際には減肉率の計算で、東電の場合も計ったら合ってたんですけども、減肉率について強調するということは、ちょっと強調しすぎだったかなと、ただ、安全ですよということを分かりやすく伝えるために、少し強調してしまったということであります。

(市民)比較の対象として持ってきたのは平均値で持ってきたということで良いのか?

(保安院)はい、平均値です。この0.2、0.3という数字を金科玉条のように認識しているわけではありません。

[3]「中間とりまとめ」の内容について

1.PWR管理指針等の評価について
 「中間とりまとめ」では、「PWR管理指針」は「概ね妥当なものと評価される」と結論づけています。これは前回確認したように、美浜3号機は別として電力会社が任意に提出した各原発につき1つの減肉データを基に出された結論です。また、BWRについは、「BWRの減肉率はPWRを下回っている」と結論されています。
(1)なぜ、電力会社が任意に選んだ少数の減肉率データだけから、PWR管理指針は概ね妥当だという一般的な結論が出せるのですか。各原発について最大減肉率を示すデータを徴収し、それで管理指針を見直すことをなぜしないのですか。

(保安院)多い少ないというか、それはできるだけ多い方が、より精度は上がりますけれども、われわれは、ファーストステップとしては、あれだけのデータを可能な限り早く集めて、方針を立てるということについては、間違っていたとは思いません。ただ、PWR管理指針については先ほども申し上げたように、今見直しの検討に入ってますので、これをもって、何も変える必要がないなどとは思ってません。

(2)女川原発1・2号機の減肉について
 1)ステンレス鋼に取替えても年間3ミリに至る激しい減肉が止まらないという事例が明らかになった以上、美浜原発3号機事故「中間とりまとめ」の「PWRとBWRでは減肉の傾向が異なり、BWRの減肉率はPWRを下回っている。」との記述は削除すべきではないか。BWRの減肉管理のあり方については、女川や福島の事例を含めた上で検討をやり直す必要があるのではないか。

(保安院)その通りでございまして、現在の管理指針の見直しについては女川や福島のデータもインプットして、ぶちこんで、それで検討するという形で。記述を削除すべきかというところについては、最終報告書の文言で、ここで削除しますということではありません。そういうものも踏まえた書き方は、修正はあるかと思いますけども。

 2)美浜原発3号機事故調査委員会では、配管の減肉管理のあり方が検討課題となっているのに、この女川の件を取り上げようとしないのはなぜか。現在の減肉管理の範囲外の事例であるのならば、なおさらこの問題を議論し、減肉管理の見直しに反映させるべきではないか。

(保安院)1つは、美浜のやつがエロージョン・コロージョンだったということで、エロージョン・コロージョンについて作った指針についてを評価していたというのと、それから、女川のやつは、事実関係が判明するまでに時期がずれましたから、別に、関係があるものを関係がないということにして外したような、そういうものではありません。減肉管理の指針の見直しには女川のデータも取り入れると、いうことでやっております。やろうとしてます。

(市民)今後は事故調で取り上げるということか?

(保安院)事故調については、ちょっと何とも言えません。今後の議論次第なんで。減肉管理の見直しで反映するように入ったらですね、その分についての記述はなされるんじゃないかと思いますけども。言いたいのは、意図的に外してたわけじゃないということです。

2.二次系の定期事業者検査の実際について
 福井県知事から経産大臣に出された「要請書」(9月24日付)では、「今回の事故については、二次系設備の管理を事業者の自主的な点検に任せるという国の制度自体にも問題があると考えている」と記されています。このことに関連して、以下を質問します。

(1)「中間とりまとめ」のP30では、「事故における破損箇所を含む二次系配管は、・・平成15年10月から電気事業法に基づいて事業者に義務付けられた定期事業者検査の対象となっている」とあります。破断した配管部位が、国の法律等のどこで検査対象と規定されているのか、具体的に示してください。

(保安院)要は国では、電気工作物は技術基準を維持しなければならないと。法律の第39条で、事業用電気工作物を設置する者は、省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない、というのもありまして、発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令というのがありまして、そこの第8条とリンクした第34条では、準用という形で、当該部分については、原子力発電所に施設する蒸気タービンおよびその付属設備について準用するということがあって、そこの第3項で、火力、発電用火力に関する技術基準を定める省令という、ここで、破断した配管の部分は技術基準が定められているということでございます。

(2)保安院は、平成15年11月14日付通達「原子力発電所に属する蒸気タービン及び補助ボイラーに係る電気事業法施行規則第94条の3に基づく定期事業者検査の解釈について(原院第2号)」(以下「通達」という)を出しています。

 1)この通達では、PWRの「2次系配管検査」の検査の方法について、「外観検査及び非破壊検査を実施する」と指定されています。その「非破壊検査」の内容は、「配管の代表部位について肉厚測定を行い必要最小肉厚以上あることを確認する」とだけ書かれています。

 ・「配管の代表部位」とは何を指すのですか。

(保安院)これはPWR指針のですね、代表部位のことを指してます。

(市民)主要点検部位ということか?

(保安院)そうですね。オリフィス下流部とか制御弁下流部とか、あそこのことです。

 ・肉厚測定の頻度などは何も書かれていませんがなぜですか。

(保安院)NISA文書のですね、最初のページにですね、原子力発電所の保守管理規定という、JEAC4209、2003年版というのがありますけど、に示すことの他、云々云々に基づき定期事業者検査を実施するものとするというのが、最初のページに書いておりまして、そこのJEACの4209の中にですね、点検対象の選定の仕方であるとかですね、いろんなメンテナンスルールについて詳細に書かれており、それを引くという形になっております。

 ・電力会社の「管理指針」についても触れられていませんがなぜですか。

(保安院)これも同じく、NISA文書の構造上ですね、先ほどのJEACの4209の中にですね、その他事業者が定める何に従ってやるかということが書かれてまして、経済省産業省の省令に従うとか、いくつか項目ある中で、最後のその項目の中に、事業者が自主的に定めた規定に従うということが書いてありまして、その中に管理指針について、が含まれるという構成になってます。

 ・配管の健全性は、上記内容で確保されるという考えですか。

(保安院)われわれは、今報告書に書いてるように、一定の安全を確保するものとしては有効に機能していると、ただ、いくつか、外れてるものについて見直しをしなきゃいけない、修正していくという考え方です。

 2)この「通達」では、BWRのタービン設備の配管検査について、「漏えい検査」のみが指定されています。その「漏えい検査」の内容は、「漏えいまたはその形跡、き裂、変形等の有無を目視により確認する」と規定されています。配管の健全性は「目視検査」のみで確保されるという考えですか。

(保安院)別途NISA文書が出てまして。そこの部分は、原子炉冷却系統といって、BWRの場合、構造が違うというのはそういうことですけども、ここは、先ほど申し上げたようなNISA文書ではなくてですね、もう一つですね、NISA文書の番号を申し上げると、NISA−163c−03−1というやつなんで、もう一つ、原子力発電所の定期事業者検査に関する解釈について、これは平成15年11月14日、そこの方に規定されております。

(3)2次系配管の検査については、基本的に電力会社にまかせ、国として2次系配管の検査を軽視していたことが、今回の美浜事故の原因の一つでもあります。そのことを踏まえ、2次系配管を「定期検査」の対象とすべきではないですか。

保安院は答えていない

3.2次系配管の未点検箇所の検査について
 貴院の8月11日付け原発に関する報告徴収では、「点検リスト漏れ」の有無を報告させただけです。リストに記載されていても、例えば関電の11基の原発では、未だ一度も検査されたことのない部位が約11,000箇所もあり、その大部分はその他系統に属すると見なされています。その他系統は減肉が起きないはずの部位ですが、大飯1号では、まさにその他の部位で大幅な減肉が発生しました。減肉の検査をしない限り、配管の実態を把握することはできず、対策も立てることができません。 
 1)全ての電力会社に対し、2次系配管の未点検箇所がどれだけあるかを早急に報告徴収し、そのすべてを直ちに点検するよう指示すべきではありませんか。
 2)点検した部位であっても、前回点検からすでに10年以上経過している箇所もあるものと考えられます。そのような部位についても実態を掴み、直ちに点検するよう指示すべきではありませんか。

(保安院)答えになると思うので、今やっていることを話します。管理指針では偏流部位とその他の部位のデータを出せというやり方でのアプローチではなく、機械学会で減肉についてデータを集めて指針を一から見直すと。代表部位・主要点検部位とその他部位を見直すという活動をいまやっているところです。その他部位は減肉は進まないとなっているが、10年で25%検査となっているのが、実態とあっているのか、事業者にデータを出させるよう指示をしましたので、機械学会で指針の見直しという形で進めることになると思います。そういうやり方になります。
 そういう箇所をチェックするというやり方はしていないんですが、減肉にかかわるデータ、PWRもBWRもそれぞれの場を作りますが、それぞれデータわ整理して出すよう進めています。
 恣意的なデータではないかとか、漏れはないかをチエックしなければならないので、それをきちんと伝えなければならないし、そういう調整をしなければならないと。
 機械学会でやるときに申し上げているのは、誰から見てもアウトプットまで、客観性と透明性をもったやり方でやるようお願いしています。

4.美浜発電所の保安規定違反について
 「中間とりまとめ」26〜27頁では、現在の美浜発電所の保安規定では、「「点検リスト」を作成しなければならないことを規定しています。しかしながら、「『点検リスト』として体系的に作成し、統一的に管理するという基本的対応が未整備であった」と書かれています。このことは、美浜発電所が保安規定に違反していることを示していると思われますが、貴院としてもそのような評価ですか。

(保安院)現行の制度の下では、保安規定違反です。そう認識してます。

(市民)その後が何かあるんですか?それとも違反ですということでいいんですか?

(保安院)ええ、ただ、ここでも書いたように、事故発生部位の色々な規定の整備とか、何とかというのは、新制度になる前の話であったので、そこまで遡及できないというこです、補足すれば。現行の規定であれば、保安規定違反と認識しています。

5.大飯1号の違法運転について
 大飯1号では、今年6月からの定検で、2次系主給水管エルボ部で国の技術基準を大幅に下回るほどの減肉が見つかりました。大飯1号は恐らく5年以上もの間、違法状態で運転していました。このような違法運転について、貴院は関電に対しどのような処分を行ったのですか。

(保安院)今年の7月に、これは事故案件として扱われておりまして、7月の27日までにまずは当該部分については取り替えると、それから、これは玉型弁の下流部の曲がり部で発見された、発生したんですけども、当該部位以降の、その大飯2号の、含めてですね、関電の同型のプラントの玉型弁下流部の曲がり部での減肉傾向の監視を強化する、それから、他のプラントも含め、主給水系統で著しい減肉の発生をする可能性のある炉についても、同様の措置、要は減肉傾向の監視を強化するという措置を取ると、いうような指示を出しております。

(市民)違法運転ということは前回確認した通り、違法運転でいいんですよね?

(保安院)それは、まぁ、明らかではなかったですけどね、状態としてはということですね。知りうることはできなかったいうことなんでしょうけど。

(市民)だけど、知ってしまえば違法運転だと。

(保安院)知ってしまえば。

(市民)なったということですね。はい。

6.保安院からの指示による点検について
 1)「中間とりまとめ」表5の「保安院からの指示による点検状況」欄にある対象25例について、どのような問題があったために点検の指示を出したのか、それぞれについて具体的に明らかにしてください。
 2)貴院は「中間とりまとめ」で、大飯1号を除く19箇所のうち美浜1号と2号の3箇所を除く他の16箇所については「いずれも問題がないことを確認した」と述べています。しかし、例えば大飯2号では4年前に余寿命ゼロで違法運転をしている場合もあったのではありませんか。なぜ、16箇所は問題がないと判断できるのですか。

(保安院)大飯2では、両側を測定していて、当該箇所より厳しかった。90度エルボが両側で当該箇所は45度。はっきりいいといったわけではないが、測定した結果は大丈夫だった。関電のやり方はいいと思っていますが、伝えてはいません。関電の判断は間違っていなかったと。

7.ランクCへの格下げについて
 貴院は9月27日、美浜1号、高浜3号、大飯2号の3基の「定期安全管理審査の評定結果」をBからCに格下げしました。
 1)Cランクとは、「当該審査を受けた組織は、定期事業者検査の実施につき重大な不適合があり、品質マネジメントシステムが機能していない」と規定されています。このことは、関西電力の品質マネジメントシステムが機能していないために取られた措置と理解してよろしいですか。

(保安院)関西電力の、定期事業者検査にかかる保守管理活動については、品質マネジメントシステムが機能してないと、理解していただいて結構です。もう少し言えば、配管の管理に付随する保守管理ということになりますけども、それに対する定期事業者検査では、定期事業者検査を実施する組織とか、検査の方法、工程管理、協力事業者の管理、検査記録の管理、教育の訓練という6項目からチェックしてるんですけども、定期事業者検査には配管の管理ってのは入ってますから、そこのところで、きちんとなされていなかったということで、BからCに格下げしたということです。

 2)ランクCへの格下げは、関西電力には原発を運転する的確な能力がないということと同意義と理解していいですか。その場合、関電の運転許可を取り消すべきではありませんか。

(保安院)そうは考えておりません。設置の時に品質保持について要求してあります。それは、事業者において運転、保守を的確に遂行するために必要な品質保証活動を行う体制が適切に構築されているか、または構築される方針が適切に示されていることというのが、許可の要件となっておりまして、関西電力はまず方針についてはきちっと示していると、いうことと、それと、配管管理とかですね、定期事業者検査に関わる部門の品質保証とか、機能してない所があるというのも事実でありますが、逆に、海外からMOX燃料を輸入調達するという所の品質保証については、われわれが調べた結果、能力はあると判断しておりまして、すべてがないわけではないと。したがって、関電の運転許可を取り消すということまでには考えておりません。該当しないと思ってます。それから、ただ、もうちょっと言えば、関西電力は、品質保証活動で欠けてる部分があるというのはですね、非常にやっぱりきちんとしてもらわないといけないと、そこは、きちんと是正させるようにやっていかなきゃいけないと、そう認識してます。

 3)高浜3号もランクCに格下げになりました。貴院は今年2月に高浜3・4号でのプルサーマル再開について行った立入検査等の結果、「社長をトップとした品質保証体制は整っている」との評価を行いました。この2月の貴院の評価は間違っていたということになりますが、この点について貴院の責任を明らかにしてください。

(保安院)これについては、間違っているとは思っておりません。ここの部分については確かに、われわれが立ち入り検査とか、聞き取り、書面、検査等々やった中で、ここは機能してると認識しております。

 4)貴院の「中間とりまとめ」では、事故の直接的原因として「関西電力鰍フ品質保証、保守管理が機能していなかったこと」と指摘されています。また、貴院が行った高浜3号等の定期安全管理審査に係る評定では、事故後BランクからCランクへと格下げとなっています。その理由は「当該審査を受けた組織は、定期事業者検査の実施につき重大な不適合があり、品質マネジメントシステムが機能していない」というものです。しかし、関西電力は11月2日の市民との交渉の場で、「保安院の指摘は認められない」とはっきり述べ、「問題があったのは、配管の肉厚管理に関する品質保証だけ」との見解を明らかにしました。この関西電力の見解は、貴院の指摘をもないがしろにするものです。関電に対して、なんらかの指導を行うべきではありませんか。

(保安院)、定期事業者検査の中に配管の肉厚管理というものが位置づけられていて、それに対する先ほどの6項目と申し上げましたけど、組織体制とか検査方法とか工程管理とか、ああいうものがちゃんとなってるかというのを検査する定期事業者検査について、問題があるということを指摘したものに対して、関西電力がそれは別物だと考えていると、いうことについては非常に憤りといいますか、遺憾のものを感じます。われわれの説明は先ほど申し上げたように、配管の管理、これは、定期事業者検査の一部であって、それに対してきちんとなされているかどうかという観点からは、なされていないと、われわれの方には、こんなものは認められないなんていうのは、関電から来ておりません。藤社長は、必ずそこを直しますと言って、中川大臣に言って帰っていきました。もし、事実であるとしたら、そういうトップの思いというものが、下にまで通じているかどうかという点についてやはり、品質保証上の問題があるんじゃないかという気がします。

8.老朽化対策について
 今回の事故の背景には、老朽化した原発で、基準を恣意的にゆるめたり、検査を手抜きしたり、定期検査を短縮する等の経済性最優先の運転があります。しかし「中間とりまとめ」では、事故の直接的背景として「3者による管理ミス」とだけ規定し、これら老朽原発の危険な運転の実態から目を逸らしています。
福井県は9月24日付の経産大臣宛の要請書で、「正に美浜3号機の事故は高経年化対策を怠った事故である」と規定し、老朽炉に対する「安全対策に万全を期すよう」要請しています。
 福井県からの要請があるにもかかわらず、「中間とりまとめ」で老朽化対策が具体的に
示されていないのはなぜですか。

(保安院)老朽化対策を軽視しているていうつもりはまったくありません。むしろ、これからますます、高経年化、年を経ていくものについての、メンテナンス、うまく長く、安全に使っていくものはですね、非常に取り組みが必要になると思ってますし、保安院のミッションとしても、とても今後重くなってくると思ってます。その1つの示唆を、美浜の3号の事故では、示されていると理解してます。ただ、事故調査委員会というのは、事故の原因を究明して、その再発防止策を決めるということについて、あそこの配管の部分は確かに、その、年が経ったから破断したものでありますけど、それは、老朽化という、高経年化という話ではなくてですね、あの、きちんと点検されるものが、ちゃんとその点検されていなかったという、メンテナンスルールの方の問題だと思ってまして、ですから、調査委員会の報告書ではですね、古いプラントが問題であるというような考えではまとめておりません。ただ、そういうものをしなければ、年が経てば、必ずその、ガタがくるというか、問題が出てくるというのは当たり前の話で、そこについては、僕らしっかりやらなきゃいけないという、認識は持っております。

9.点検リスト漏れの経緯について
 「中間とりまとめ」では、リスト漏れの経緯については今後調査を継続するとなっていますが、その内容について質問します。
 1)8月11日の日経夕刊及び12日の福井新聞によれば、三菱重工業鰍ヘ日本アームに対して、1999年4月と2000年8月に、検査漏れの指摘や破断した配管部が減肉する可能性があるため検査が必要であることを文書で知らせ注意を喚起していたと報じています。この内容について貴院は三菱重工業鰍ノ調査を行いましたか。調査した場合、その結果を明らかにしてください。
 2)泊原発1号機でも当該オリフィス下流部がリストから漏れていたにもかかわらず、1995年にはリストに復活したと「中間とりまとめ」には書かれています。その経緯を具体的に明らかにしてください。
 3)同様に、敦賀2号でも当該オリフィス下流部がリストから漏れていたにもかかわらず、2000年にはリストに復活したと「中間とりまとめ」には書かれています。その経緯を具体的に明らかにしてください。
 4)8月30日付の報告徴収では、日本アームに対する指示事項として、「保守点検を的確に遂行し得る能力を有していることの説明」という項目があります。この項目について、日本アームからどのような説明があったのですか。
 5)日本アームの説明を受け、貴院は日本アームに対し「的確に遂行し得る能力を有している」と判断したのですか。
 6)8月17日付「福井新聞」では、日本アームの社員の話として、高浜4号と美浜1号でも当初オリフィス下流部がリストから漏れていたが、その後確認され、それぞれ1998年と2002年に肉厚測定を行ったと記載されています。この内容について、貴院は調査しましたか。

(保安院)点検リスト漏れの件についてなんですけども、これは、第二弾の再調査を始めたとこでありますけども、今まで、なかなか事業者の言い分が核心に迫るというのがなかなか、時間だけ経ってですね、難しかったので、体制をですね、まず保安院の中できちっと、追及する体制というのを構築いたしました。また、どういう点を今後、きちんとつめていくべきかというのも、今までの情報を元にきちんと整理しまして、今再度、関電、三菱重工、日本アームについて、取り調べというか、経緯を追及するような活動を始めている、ということです。で、今日書かれているようなことについてはですね、まだ、これからであります。これからまだ追及していくということでございます。

(市民)調べは今からということはいいが、4)5)については過去にやった報告聴取について聞いているのだが?

(保安院)4)につきましては、保守点検を的確に遂行する能力を有していることの証明ということで、4)5)を合わせてお答えします。保守点検を的確に遂行する能力ということで、その体制がきちんとなってるかどうかということで、品質保証体制を構築して回しているかどうか、そういうことについて聞き取りをしました。それと、そういった品質保証体制を回す上で、資格を持った検査官、そういったものがちゃんと整備されているか、そういった面についても、聞き取りを行いました。中間報告書にも、指摘されておりますように、三菱、日本アーム、関西電力、それぞれ3者の間で、品質保証がキチッと構築できて回っていなかったという指摘をしております通り、日本アームは当時、きちっとした品質保証体制になってなかったということを確認しております。それは、中間報告にとりまとめられてる通りですが、先ほどご説明いたしましたが、今後、どういう理由でそうなっていたのか、あるいは、今後どうしていくのか含めまして、詳しい調査を進めていくことにしております。

(市民)能力は有していないという判断か?

(保安院)能力というか、中間報告までの時間的な制約もあったんですが、品質保証体制が十分ではなかったという風に確認はしております。

10.作業者の安全確保について
 美浜3号機事故では、8月14日から定期検査が開始される予定でした。しかし、その前の原発が運転している状況の中で、定検のための作業が行われていました。そのため、多くの犠牲者を生み出すことになりました。
 定期検査の期間は、「電力系統から解列した日から検査の最終段階に行われる総合負荷検査終了の日まで」と決められています。明らかに定検の作業でありながら、解列前の作業を「準備作業」と呼ぶのは、単なる形式的な区別でしかありません。
 「中間とりまとめ」では、「運転中に定期検査準備作業のため作業員がタービン建屋で作業していたことが直ちに問題となるものではない」と、運転中の定検作業を容認しています。
 1)定期検査準備作業と定検作業とはどのように区別されるのですか。

(保安院)工程上、定検というのは、キチッと事業者から定期検査の実施についてスケジュールが申請出されまして、何月何日から何月何日まで決まってますんで、それが、われわれの認識してる定検の、ま、作業の開始時期もその日になってますし、そう認識しております。

(保安院)定検のスタートは、そういう事前に、定検計画というのが届けられて、それで発電を停止してから、解列してからですね、点検が終わって、再閉列をして、ある一定の期間、調整運転というんですけど、慣らし運転みたいなものをして、で、その、総合負荷試験という検査がまたあって、それで定検終了ということになるわけですけども、われわれが問題にしているのは、問題といいますか、法律上求めているのは、止めて、計画にのっとって検査を行うということが、あの法律上、求めていることでございまして、それを定検、定期検査と呼ぶんだという、検査を行う義務があるということを、そういう義務を法律上課しているということになるわけです。で、検査というのは、別に定期検査に限らずですね、何かトラブルが起こって、そのまま定期検査の期間中以外でもですね、計画停止をして、チェックすることもありますし、いろんな形の点検があるわけでして、その点検はもちろん、その安全上必要なものはどんどんやっていかなくてはいけませんし、それで定期検査についてもですね、止めて検査をしなさいという義務はあるわけで、じゃあ、その検査の準備なりですね、それをそのどのように行うかと、いうことについては、これはもう、電気、電力会社の判断で行うと、いうことが、ということで、法律上何ら規定されていないと、いうことでございますので、それを違法、電気事業法の問題としまして、定期検査を義務づけている電気事業法という法律の、そのー規定といいますか、要請からしてですね、別に違法ということではございません。ですから、区別とは言う話ではなくて、今点検を行うといういうことを、そのー電力会社に求めている、設置者に求めているということでございます。

 2)原発が運転している状況で、定検の作業を行うことは違法ではないのですか。

(保安院)今ので、2)もお答えしたということで。

 3)いつから、原発が動いている状態で定検の作業を行うようになったのですか。監督官庁としてその実態を把握し、公表してください。

(保安院)ですから、3)も、実態を把握するというようなことは考えておりません。

 4)福井県は、9月24日の経産大臣への「要請書」でも作業者の安全を第一に確保するよう要請しています。定期検査の作業はすべて、原子炉を止めてから行うよう、全ての電力会社に指導すべきではないですか。

(保安院)労働安全法を主管する厚生労働省の方から、きちんと資料なり取りまして、止めて行うようにということではなくて、リスクの評価をきちんとして、それに対する安全対策をキチッと立てるということで、指示がいっております。

 5)また「中間とりまとめ」では、「作業環境の潜在的リスクを周知する方策として、事前研修の実施」等をあげています。事前研修を受けていれば、今後死傷事故には巻き込まれないということですか。

(保安院)われわれとしては、厚生労働省からの指示みたいなものも含めてですね、そういうものを受けてきちんと点検を行う協力企業の方々も含めてですね、そういうリスクを、とそれへの対処法を認識してやっていくと、いうことは非常に大事だと考えております。これは、厚生労働省の方の指摘で出てましたけど、そういう活動が非常に、美浜の場合は形骸化していたと、いうようなことが指摘されています。後、安全責任者が出てきて、その、委員会を開く、あるいはその、事業者、協力事業者に対して、それをレクチャーするという活動がですね、非常に低調であったと、これをきちんとするように、いうような話を、指示出ておりますんで。ということでございます。

(市民)事前研修を受けていれば、今後死傷事故には巻き込まれないということですかという質問に答えてない。

(保安院)それはイコールにはなりません。それだけではなくて、あらゆるいろんなことをしなきゃダメだと思います。それでも、われわれ、いろんな努力をしても事故がゼロになるということは誰も保証できないと思います。一生懸命、ゼロにするように努めるということしかないと思います。

[4]国の責任について

1.国の責任の内容について
 5名もの死者を出した美浜3号機事故に関する、監督官庁としての国の責任を明らかにしてください。
 中川大臣は、9月27日午前の記者会見で、「もちろん経済産業省、行政の責任者として責任をとらなければいけない」「経済産業省、行政にとっても一つのいい教訓になった」と述べています。この「責任」の内容を明らかにしてください。

(保安院)道義的には感じております。今われわれがしていることは、先ほど申し上げたように、配管の肉厚の管理の仕方に対して事業者任せであって、国として、こういう具合にやりなさいよと、いう所まではきちんと示してこなかった、それについては、国の責任としてきちんとやらなければならないという認識に立っております。ただ、法律上何か責任があるかと言われれば、それは、ないと認識してます。