―8/2関電交渉報告―
「見かけ上の減肉」=「測定位置のずれ」は単なる推定だった。
「『見かけ上の減肉』も通常の減肉と同様に管理する」(関電)
「見かけ上の減肉」は何のため?

 8月2日、関電本店にて、市民23人が参加し、午後6時より2時間半にわたり2次系配管の管理問題について関西電力と交渉を行った。
 関電は、8月9日の美浜3号機事故1年を前にして、はやばやと、破断した配管を取り替えて運転を再開する準備を始めた。そして、電力会社と機械学会が「見かけ上の減肉」概念などの導入によって、老朽原発の配管検査の手抜きを画策しようとしている。そのため、関電が5月11日に福井県に提出した『美浜発電所3号機2次系配管の点検結果について(第3回報告)』の内容を中心に、「見かけ上の減肉」に焦点をあてて交渉を行った。
 「見かけ上の減肉」とは、関電が美浜3号機の測定結果を整理する途上で5月11日に突然持ち出した概念である。測定結果の数値は減肉を示しているが、それは実は、例えば測定位置がずれたことによる見かけ上の傾向と解釈しようというものである。この場合は、測定位置が実際にずれたという証拠はあるのかが問題になる。
 関電は交渉で、「減肉の現象を正確に把握するために『見かけ上の減肉』という概念を使う」と回答した。しかし、やり取りの中で、「見かけ上の減肉」には根拠のないことが次々と明らかになっていった。そのため関電は、「配管管理は通常の減肉の場合と同じにする」との新たな方策に重点を置いて繰り返し説明した。それなら、「見かけ上」と評価すること自体に意味がなくなることは明らかである。それでも関電は最後まで「見かけ上」の適用に固執し続けた。

■「測定位置のずれ」は推定。「見かけ上」に根拠なし。
 配管の肉厚が減肉傾向にある部位を「見かけ上の減肉」と評価したのは、「測定位置のずれ」によるとするなら、その根拠は何かと私たちは何度も問いただした。当初、関電は「シンニング加工部での測定位置のずれ」を確認していると自信ありげに発言していたが、どのように確認したのか、すべての部位について根拠があるのか、推定ではないのかと追及すると黙り込み、「見かけ上」でも、管理は通常の減肉と同じ管理をするから問題はないのだと、事柄をすりかえ、結局、「見かけ上」と評価した根拠について具体的に回答することができなかった。

■「肉厚が太ることはありえない」。しかし、肉太りは「見かけ上」とはみなさない。
 肉厚測定値が減っている部位で、測定位置のずれや測定誤差によるものを関電が「見かけ上」とみなすというのであれば、測定値が大きくなって太っている部位こそ、測定位置がずれている可能性が高いのだから、「見かけ上」と分類して、「減肉現象の正確な把握」に努めるべきではないかと追及した。
 関電は、肉厚が太ることはありえないということは認め、「減肉が大きくないだけと理解している」と言う。しかし、減肉の場合のように、測定点のずれによって肉太りがおきたことは認めなかった。余寿命999年と評価していた肉太り配管は、余寿命を100年に変えたそうだ。「減肉事象の正確な把握」というなら、肉太りのケースこそ、減肉の実態がわからず危険な状態だという認識をもつべきだと厳しく批判した。

■「見かけ上の減肉」とは、「デタラメな肉厚測定」であることを関電自ら認める
 「第3回報告」によれば、美浜3号機で余寿命5年未満(次回定検時)と評価された104箇所中39箇所も「見かけ上の減肉」と判定されていた。その中には、関電の「見かけ上」判断に依拠すれば、測定位置が本来の位置より最大45ミリもずれたことになる部位があった。これでは、まともに測定ができていないのではないか、「見かけ上の減肉」の存在を認めることは関電が検査をきちんと行えていないことを示しているのではないかとの追及に、関電は「『見かけ上』とは、まさしく正しく評価できていないことを自ら言っていることになる」と認めた。デタラメな検査をやってきたことへの追及にはのらりくらりと回答し、測定位置の基準について「溶接線にそって測定位置を今後は決める」と今後のことになると妙に開き直る始末。「減肉現象の正確な把握」と強調しながら、「見かけ上の減肉」と判定された部位を交換する場合に、交換前に再測定して、正確な肉厚を把握するのかと問いただすと、関電は言葉を濁した。

■5月以降「(配管管理の)ルールをより明確化した」
 5月11日に『第3回報告』を出した時点から配管管理の「ルール」を変更したという。「見かけ上の減肉」とはみなしても、通常の減肉と同じ以下の「ルール」を適用することを関電は認めた。

 余寿命13ヶ月未満 → 今定検で取替。
 余寿命13ヶ月以上2年未満 → 次回定検で取替。
 余寿命2年以上5年未満 → 取替計画を策定し、取り替えるまでの間、毎定検時に測定。

■関電は「見かけ上の減肉」評価をやめよ!
 「管理」は通常の減肉と同じルールで行うのなら、そもそも「見かけ上」という区別をする必要はないはずである。「減肉現象の正確な把握」をいうなら、まずはデタラメな計測方法の改善をするべきである。しかし、関電は、今後も「見かけ上」の評価をするし、すでにその知見を機械学会に報告したと回答した。関電が「見かけ上」に固執するのは、老朽原発の検査の簡素化=手抜きの手法のひとつとして残しておきたいとの強い意図があると疑わざるをえない。機械学会では、そのような概念によるデータ整理を採用して、検査の手抜き方針を打ち出す可能性が高い。関電は、ただちに「見かけ上の減肉」評価をやめるべきだ。