美浜3号機事故「最終報告書」に関する質問書


原子力安全・保安院殿

2005年4月7日提出
各地市民(この質問書は近藤正道参議院議員より提出されました)


1.関電の責任について

(1)事故の責任は、関電トップにあると評価しているのですか。

(2)3月14日付「最終報告書(案)」の34頁にある下記表現は、「最終報告書」では削除されています。「トップは安全第一だったが、現場がそうでなかった」という前回の認識は変更されたのですか。
「これは、安全第一という関西電力鰍フ方針とは裏腹に、現場の第一線では、定期検査工程を優先するという意識が強かったことを示すものであった。この経営層と現場第一線における認識の乖離について、監査機能などが十分に働かず、その結果、こうした状態が長年にわたり是正されずにいたことは重大な問題である。」(3/14付「最終報告書(案)」より)

(3)関電は3月25日に、事故の責任を取るとして藤社長の辞任などの人事を発表しました。しかし、藤社長が品質保証・再発防止担当の役員としてとどまり、秋山会長が会長職を続投することについて、社会的不信が強まっています。保安院は、この関電の人事で、事故の責任をとったと評価していますか。


2.事故の原因について

(1)事故の原因は、関電が定検短縮などの経済性最優先の姿勢・経営方針をとっていたことにあると認めているのですか。

(2)「最終報告書」47頁では、事故原因の背景として「社内での『安全文化』の綻びがあったことが判明した」と指摘しています。また、「企業文化及び組織風土」の問題も指摘しています。関電は、火力発電所でのデータ改ざん事件、MOX燃料のデータ不正事件、美浜2号機での蒸気発生器細管破断事故などを引き起こしてきました。
 関電の「『安全文化』の綻び」はいつからのことだと評価しているのですか。

(3)再発防止のためには「これらの対策が経営層の実質的な意識改革と改善努力を伴い、原子力安全に関する企業文化及び組織風土の改革・定着につながるかどうかが成否の鍵となる」(同上)と記載しています。

 [1]「意識改革」で事故の再発防止がはかられると評価しているのですか。

 [2]経済性最優先の姿勢を改めることも含まれているのですか。


3.被災者を早期に救出するという観点について

(1)前回は「(蒸気が)出てしまった後ですから」と何度も繰り返され、蒸気流出を早期に止めていれば被災者を救出する可能性があったことについて否定されました。現在も、そのような見解ですか。

(2)この判断は、初期の蒸気流出時に被災してしまっており、手当をしても何の効果もないとの仮定に立っていますが、そのような仮定はどのようにして確認したのですか。


4.中央制御室への蒸気流入を知った時期について

 前回は、保安院がこのことを知ったのは、「10月初めに美浜発電所から現地保安検査官に伝えられた」ことによるということでした。また同時に交渉では、「保安検査官は事故当日に、制御室に入ってデータなども見ていた」と発言されました。

(1)そうであれば、保安検査官は制御室に蒸気が流入していることを、事故当日に知ったのではありませんか。検査官から聞き取りを行ったうえで、回答してください。


5.点検リスト漏れについて

 関西電力の報告書「二次系配管破損事故について」(3/1付)では、リスト漏れの経緯として「平成16年7月の大飯1号機のその他部位(主給水管)減肉トラブルを受け、若狭支社は、その他部位も含めて次回定期検査で追加点検すべき箇所を抽出するよう各発電所に指示した」(26頁)と書かれています。

(1)保安院は、若狭支社が出した指示文書を確認したのですか。そうであれば、その文書を公開してください。

(2)大飯1号の減肉問題に関して関西電力が保安院に報告した水平展開は、「給水系統」の配管のチェックではないのですか。「復水系統」の配管のチェックも含まれていたのですか。そうであれば、それを示す資料を公開してください。

(3)関西電力は破断箇所の未検査を認識した時点で余寿命評価を行ったのかについて、どう認識していますか。また、「3号機の定期検査に際し、破損部を含む配管を点検・交換する計画を事故前に県や地元自治体に報告していた」(産経)、「破損個所が点検対象から漏れていたことは2003年11月、日本アームから美浜発電所機械保修課に連絡があった」(共同)、「[関西電力の]品質保証システムは、検査漏れが判明した場合は、管理指針に沿って計算したうえ、原子炉を停止するかどうかも含めて検討することとしている」(読売)という情報についてどう認識していますか。また当該「地元自治体への報告」文書、「品質保証システム」文書を保安院は入手していますか。

(4)保安院として、関電が当該箇所のリスト漏れ、未点検に気づいたのはいつと判断しているのですか。


6.福島1−5に関する保安院の評価について

 「最終報告書」21頁では、福島1−5の配管減肉問題に際して、保安院は東電に対し、「配管管理方針を社内標準とすることを指摘し、同社は、平成16年11月に『配管減肉管理指針』を策定した」とあります。保安院は昨年10月に、東京電力が当時の管理方針に従って測定値から算出した減肉率を、過大評価であるとの見解を示していました。保安院の指導による東電の新しい管理指針に従って減肉率を算出した場合には、これが過大評価ではない数値になるのですか。そうでないのであれば、過大評価であるとした当時の保安院の見解にこそ問題があったのではないですか。


7.関電に対する保安院の「特別な」指導について

 「最終報告書」の37頁では「関西電力鰍ノ対して、特別な保安検査や特に厳格な安全管理審査を継続して行っていくほか、必要に応じて立ち入り検査を実施するなど、現行検査制度を十分に活用しながら、同社の取り組みを厳格にフォローアップしていく」と書かれています。

(1)関電に対する「特別な保安検査等」の具体的内容を示してください。

(2)大飯2号は3月16日から定検に入っています。この定検では、保安院が2月18日に出した「暫定指針」が適応されることになります。配管対象箇所・検査方法などで関電に指導した内容はありますか。また、関電から、報告を受けていますか。


8.機械学会の規格案等について

(1)日本機械学会は、配管管理に関する「機能性規格案」に関する意見公募を行い、先日寄せられた意見に対する回答を、ホームページで公開しています。この規格策定については、保安院も積極的に参加しています。意見に対する回答内容について、保安院の評価を示してください。

 [1]規格の性格として、意見8に対する回答では、「規格の採用はそれぞれ設備管理者が選択するものです。また適合性の確認は採用者が自ら行うべきものであります」となっています。
 ところが、「最終報告書」48頁には「配管の肉厚管理の具体的方法を各事業者の社内基準に委ねてきたことが、不適切な判断基準の運用を招いた一因であるとの反省に立ち、今後の統一的な指針に基づいた管理を徹底することとし」と記述されています。美浜事故の教訓として、配管管理を電力会社にまかせてきたことの反省のうえにたって、統一的な規格をつくるとなったはずです。それなのに規格を採用するかどうかも電力会社にまかせるという機械学会の考えは、事故の教訓に反するのではありませんか。

 [2]上記「最終報告書」の「統一的な指針」とは何を意味するのですか。

 [3]意見6に対する回答として、「偏流発生部のみに対象を限定するものではなく、広く流れによる減肉事象をとらえる必要があると、規定するものです」となっています。
 これは、従来の「その他部位」は検査の対象から除外すると受け取れますが、それで妥当なのですか。

 [4]意見14は、規格策定の基礎となる約10万件の肉厚データの信頼性を問うています。これに対する回答は、「データの信頼性は学会、年会などの公の場での発表で議論されるべきものと考えています。規格の策定は公開された論文などをベースとします」となっています。
 保安院はこれまで、規格策定にあたっては、電力会社がもつ全ての肉厚データを使用すると言って来ました。上記回答は、「公開された論文などをベース」となっています。規格策定のためには肉厚の実態を示すデータを使用すべきではないのですか。

(2)「最終報告書」23頁では、「規格の策定が行われ次第、別途、改めて同規格に関する技術評価を行い、行政手続法上の判断基準として位置づけるとともに、事業者が同基準に則り適切な配管肉厚管理を行っているかについて、保安検査等を通じ監視を行う方針である」と記載されている。

 [1]これは、規格が策定されれば、電力会社はこの規格をもとに「管理指針」を策定することが義務づけられるということですか。

 [2]そうであれば、なぜ規格にそのことを明記しないのですか。

 [3]「行政手続法上の判断基準として位置づける」とはどのような意味・内容ですか。

 [4]「行政手続法上の判断基準として位置づけ」られた基準と、従来の技術基準とはどのような関係になるのですか。


(3)保安院が2月18日に出した「暫定指針」では、従来の「その他部位」は、「中期計画」を立てるのみとなっています。これは、検査の簡略化です。美浜事故の教訓を踏まえれば、また美浜事故後、配管穴あき事故が多発している状況を踏まえれば、検査の簡略化ではなく、厳格な検査を指導すべきではありませんか。

(4)2月18日に出した「暫定指針」に対して、各電力会社から、二次系配管業務の変更内容について報告を受けていますか。また、「暫定指針」の内容を満足しているかについて確認しているのですか。

(5)「暫定指針」を踏まえて、各電力会社が管理指針をどのように変更したのかを検証するために、各電力会社から、新たな管理指針を提出するよう求めてください。同時に、その管理指針を公開してください。


9.情報の公開について

(1)「最終報告書」37頁では、再発防止策の実施について「『原子力品質安全委員会(仮称』を設置し、実施状況を定期的に評価して、公表することを定めている。したがって、その実施及び内容については、社会全体で注視されることになる」と記載しています。公開されるのは「委員会(仮称)」の評価に関するものです。
 しかし肉厚測定のデータ等の配管実態を示すデータが公開されなければ、「社会全体で注視」することはできないのではないですか。それらを公開するよう関電や他の電力会社を指導すべきではないですか。

(2)3月30日付で請求している資料を公開してください(別紙※の資料請求参照)。


10.保安院の責任について

(1)「最終報告書」41頁で述べられているサリー原発事故後の対応について、「我が国の対応には反省すべき点が多いと思われる」とは、具体的に何をさしているのですか。

(2)事故に対する国の責任について、「最終報告書」のどこに記載されていますか。




[資料請求 3/28付資料請求……一部改訂]

■リスト漏れに関するもの

1.当該破断箇所が含まれているスケルトン図102
 このスケルトン図102については、関西電力が3/1発表した事故概要資料に掲載されている2枚について、付番が読みとれるものを公表してください。
(2枚とは、[1]2003年(H15)5月の付番が欠落しているスケルトン図、[2]同年6月の付番がついたスケルトン図)

2.当該箇所スケルトン図102−63番が記載されている点検管理票

3.下記の点検整理票

 スケルトン図102−52、54、59、63、64

4.日本アームから関西電力に出された下記2件の資料

 ・第21回 2次系配管経年変化調査工事 対象箇所一覧表
 ・第20回 2次系配管経年変化調査工事 対象箇所一覧表

※以下は3/28付の資料請求を加筆訂正しています。

5.当初42箇所のリスト漏れがありました。42箇所それぞれについて、
[1]リスト漏れが確認された年月、[2]部位の名称、[3]部位のスケルトン図番号並びに付番、[4]スケルトン図、[5]点検管理表、[6]点検結果整理票
 ・三菱重工業がリスト漏れを確認した10箇所
 ・日本アームがリスト漏れを確認した17箇所
 ・事故後にリスト漏れを確認した15箇所

■技術基準違反などの不適切な配管管理に関するもの

 保安院の「最終報告書」35頁で示されている、78件それぞれについて、
[1]部位の名称、[2]部位のスケルトン図番号並びに付番、[3]スケルトン図、[5]点検管理表、[6]点検結果整理票

(なお、上記2つの資料については、関西電力が4月4日付で「補足」を公表していますが、不十分なものなので、上記それぞれの資料を公開してください。)

■事故による設備影響に関するもの

 電気ケーブルの絶縁抵抗の全ての測定結果




[3/18のヒアリングで確認するとなった点について]

■関電トップが安全第一だったという保安院の評価について

 保安院の「最終報告書(案)」34頁では「安全第一という関西電力(株)の方針とは裏腹に、現場の第一線では、定期検査工程を優先するという意識が強かったことを示すものであった。この経営層と現場第一線における認識の乖離・・・」と書かれています。
 関西電力のトップが安全第一であったということを、何によって判断したのか明らかにしてください。

■被災者救出のために、蒸気流出を早期に止める必要性について

 ヒアリングでは、「(蒸気が)出てしまった後ですから」と何度も繰り返され、蒸気流出を早期に止めて被災者を救出する必要性について否定されました。現在もそのような見解ですか。

■中央制御室への蒸気流入を知った時期について

 3/18の交渉では、保安院がこのことを知ったのは、「10月初めに美浜発電所から現地保安検査官に伝えられた」ことによるということでした。また同時に交渉では、「保安検査官は事故当日に、制御室に入ってデータなども見ていた」と発言されました。
 そうであれば、保安検査官は制御室に蒸気が流入していることを、その時に知っていたのではありませんか。検査官からはどのような聞き取りを行ったのですか。

■関電が当該箇所がリスト漏れであると確認した時期について、保安院はいつだと判断しているのですか。

■大飯1号の減肉問題の水平展開で、美浜3号の破断箇所が未検査であることを確認したという経過に関して

 関西電力の報告書「二次系配管破損事故について」(3/1付)では、リスト漏れの経緯として「平成16年7月の大飯1号機のその他部位(主給水管)減肉トラブルを受け、若狭支社は、その他部位も含めて次回定期検査で追加点検すべき箇所を抽出するよう各発電所に指示した」(26頁)と書かれています。
 ・保安院は、若狭支社が出した指示文書を確認したのですか。そうであれば、その文書を公開してください。
 ・大飯1号の減肉問題に関して関西電力が保安院に報告した水平展開は、「給水系統」の配管のチェックではないのですか。「復水系統」の配管のチェックも含まれていたのですか。そうであれば、それを示す資料を公開してください。