要   望   書
美浜3号機の運転再開を了承しないでください
5月16日に起きた400リットルの水漏れ事故は、
関西電力の安全管理が「基本」の基本さえできてないことを示しています



福井県知事 西川一誠 様

2006年5月23日

 関西電力は、5月10日に、美浜3号機の運転再開協議願いを貴職に提出しました。新聞報道によれば、まもなく貴職が運転再開を了承するとも報じられています。
 しかし、関電が運転再開を口にし始めたとたん、16日には管理区域である格納容器内の原子炉キャビティ水400リットルの漏えい事故が発生しました。関電は19日にこの事故について報告書を提出しました。その報告書は、11名の死傷者を出した美浜3号機事故の教訓が未だもって全く生かされていないことを如実に示しています。
 関電は「再発防止策」として、昨年11月26日に、「互いに安全を確かめあい、作業が始まった」と題する新聞一面広告を出しました(「作業前ミーティング」編)。その中では、ツール・ボックス・ミーティング(TBM)とは「作業を開始する前、その日の工程や役割分担などをこまかく確認しあう大切な打ち合わせのことです」と説明し、「関西電力は、発電所運営の責任者として、安全をより確実なものとするために、協力会社の方々が行うこのTBMに積極的に参加しています。そして、作業上の注意事項や安全のための情報をお伝えするとともに、・・・協力会社の方々と思いをひとつにしながら、原子力発電所の安全性向上に努めてまいります。」と結んでいます。この広告には、関電社員と協力会社の社員が円陣を組んで、「安全よし!」「安全よし!」と人差し指を突き出している大きな写真が添えられています。
 「安全を、なによりの使命に」という合い言葉の新聞広告の精神が本当に貫かれているのでしょうか。今回の400リットルの漏えい事故に照らして見てみましょう。ホースを取り外す前にポンプを停止しなければならないことを知っていたのは協力会社の作業責任者だけで、他の作業員は知らなかったと関電の報告書では書かれています。これでは、協力会社のTBMに積極的に参加しているはずの関電が「作業の注意事項や安全のための情報を伝えて」いなかったことになり、関電の責任は重大です。関電は、作業をしていた三菱重工業に対し厳重注意をしたとのことですが、自らがこの作業前に、どのような情報を協力会社の社員に伝えていたのかいなかったのかについては、何も明らかにしていません。まずは、今回の事故について、関電自らの責任を具体的に明らかにすべきです。
 このように、今回の事故は、関電自らが述べている「協力会社社員との意思疎通」さえもなく、「毎日意識する」はずの「基本」の基本さえできていないことを端的に示しています。現在の状況は、「安全性の向上」や美浜3号機事故の再発防止策以前の問題です。
 今回の事故後の対策として関電は、1週間の「意識高揚重点運動」を行うとしています。1週間の意識啓発で安全管理の「基本」の基本が身につくのでしょうか。また関電の森本本部長は、「私自身を含め経営トップが現場に行き、一人一人に基本動作の大切さを説いていく」と話しているようですが、社長や本部長が格納容器内の作業の指導にあたるのでしょうか。ひざ詰め対話は事故後に十分にやっていたはずではなかったのでしょうか。
 昨年から関電の原発では事故が頻発しています。また運転再開をしようとする矢先のこの5月だけでも、この事故の他に、美浜2号機での約1.4トンの水漏れ、大飯2号機での作業員の被ばく事故が立て続けに起きています。
 現在はまだ何が起こるか分からないような状況にあります。その中で、貴職が美浜3号機の運転再開を認めれば、貴職の責任が厳しく問われることにもなりかねません。5名もの尊い生命が犠牲になった美浜3号機事故を重く受け止め、運転再開を了承しないよう要望します。
 美浜3号機の事故は老朽化によって起きたことを貴職は強調されました。確かに事故当時、稼動暦を考慮した実年齢では、美浜3号機は関電の原発で最高齢に達していました。現在はさらに老朽炉に鞭打とうという危険な傾向が強まっています。美浜3号機が2004年8月の事故で止まって以来、1年9ヶ月になりますが、電力供給不足も起きていません。美浜3号機はこのまま運転を停止し、廃炉に導いてください。

2006年5月23日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581