予断によって検査箇所を限定している関電
米国トロージャン原発では直管部でも減肉

トロージャン原発の教訓を汲み、配管のすべての箇所を検査せよ


 関電は書類点検に継いで、一部の原発を停めて2次系配管の点検を始めたが、その箇所は、乱流を発生させる弁やオリフィスなどの下流にあたる箇所に限られている。どこまでの下流域まで調べるのかははっきりしないが、恐らく弁などから管の口径の2倍程度までの領域に限られるのであろう。なぜなら、「原子力設備2次系配管肉厚の管理指針(PWR)」(平成2年5月)によれば、「減肉大な部位の調査」の項目に、「上流偏流発生部位までの距離が配管口径の2倍を越すと(L>2D)、その影響は見られなくなると考えられる」と書かれているからである。ただし、この判断の根拠は何もいっさい書かれていない。
 しかし、関電のこの限られた箇所だけの点検は、1987年に米トロージャン原発で発見された減肉の事実に照らせば、まったく不十分なものである。米原子力規制委員会(NRC)のInformation Notice No.87-36やNo.88-17などによれば、トロージャン原発では、1987年の定検時に、主給水配管の直管部の2箇所で、相当な減肉が発見されている。配管の公称厚さ1.51cmが、次の運転中に法的な設計上の最低厚さ(1.30cm)に到達すると判断された。その減肉の箇所は、乱流を起こす曲がり部や何らかの機器のある箇所から下流側に少なくとも管口径の7倍下ったところであった。この事実は、配管口径の2倍を越える箇所には影響が及ばないとする上記の判断を完全に覆している。
トロージャン原発のこの箇所での水流速度は秒速約6.9mで、大飯1号の給水管での流速毎秒約5.3mに比べるとかなり早い。このことも、減肉を促進した原因であるかも知れない(参考:美浜3号の破断箇所の配管では、毎秒通る水量は大飯1号と同じだが、直径がより大きいため流速は毎秒約2mと遅い)。しかしいずれにせよ、トロージャンの教訓を真摯に捉え安全側に立つなら、乱流がとうてい起こりそうにない箇所でも減肉は起こるとの判断に立つべきである。
それゆえ、関電は2次系配管のすべての箇所を点検するべきであるし、原子力安全・保安院もそのように指導すべきである。