関電の確信犯的な違法点検行為
保安院が「問題あり」としたのはわずか3箇所のみ
大飯2号で25年間1度も検査していない箇所は「問題なし」なのか


2004.10.5 美浜の会

 美浜3号の破断した配管は、検査リストから漏れていたため、運転開始以来1度も検査されていなかった。保安院はその原因を、「管理ミス」だと断定している。単なる「管理ミス」なのだろうか。
事故後、関電の違法な点検行為が次々と明らかになった。配管の余寿命が1年未満と短くなった配管に対しては、火力発電所の「ただし書」を悪用して余寿命を意図的に延ばし、必要肉厚以下になっても配管を取り替えていないことが発覚した(美浜1号・2号)。また、同様の配管の余寿命から類推して、一度も検査を行っていなかった場合も、既に数年前には余寿命を割っていたこと等が明らかになっている(大飯2号等)。これら違法な点検行為は、明らかに確信犯的な行為である。
 破断した配管の「管理ミス」の背景には、関電の確信犯的な違法点検行為がある。そこには、できるだけ定検を短縮し、修繕費をかけないために、点検や配管取替等を先延ばしにする経済性最優先の関電の姿勢がある。しかし保安院は、「管理ミス」の背景でもある、関電の確信犯的違法点検を徹底して追及しようとはしていない。以下に、この問題を具体的にみてみる。

関西電力が行っていた違法または異常な点検行為は次の点である。
(a) 美浜3号の破断箇所(A系統)とそれと対応するB系統の箇所―点検リスト漏れ。
(b) 8月11日付け報告徴収によって明らかになった2種類。
 (b-1) 点検リスト漏れ(4箇所)−美浜3、高浜1、大飯3、大飯4の各1(下記第3表)。
 (b-2) 同一仕様プラントからの類推で点検なし(11箇所)−高浜3(8)、高浜4(1)、大飯3(2)(下記第4表)。
(c) 保安院からの指示によるもの(25箇所)。

 9月27日付け「中間とりまとめ」の表5(9月16日現在)では、(b)は「関西電力による点検状況」欄に、(c)は「保安院からの指示による点検状況」欄に記載されている。
 これらのうち、(c)の25箇所について、新聞記事などの情報を基に以下の第1表にまとめる。
その結果、関電による違法行為は以下のように分類されるだろう。
(1) 点検リスト漏れ:上記(a)及び(b-1)
(2) 類似箇所を点検したからとの理由で点検しなかった箇所:
  上記(b-2)の11箇所、及び第1表のO1-2及びO2-2〜6(5箇所)。
(3) 法定最小肉厚の代わりに勝手な基準をねつ造して寿命を延ばしたもの−違法運転を含む:
  第1表のM1-1、M2-1、M3-1〜4(4箇所)、O1-1
(4) 管理指針では交換が必要なのに交換しなかったもの:(3)の他に第1表M2-2
(5) 減肉率を管理指針に従って計算せず別の計算法を適用:第1表O2-1
(6) 外側からの肉盛溶接で寿命を延ばそうとした:第1表O1-1

■9月27日付け「中間とりまとめ」の判断に関する疑問点
 この問題について、9月27日付け「中間とりまとめ」では、23頁に次のような判断が記述されている。保安院が追加的に点検を指示した箇所は第1表の25箇所であるが、この時点で美浜3号と大飯1号を除く19箇所がすでに点検されている。そのうち「3箇所以外の16箇所については、いずれも問題がないことを確認した」と書かれている。その3箇所とは、第1表で「取替」と書かれている3箇所(M1-1,M2-1,M2-2)である。
 そうすると、他の基準のねつ造や類推によって点検しなかった箇所などは「問題がない」と判断していることになるが、そんなことでよいのだろうか。例えば、大飯2号の場合(O2-2〜6)、周辺の同種の配管の検査データが余寿命35年以上だったため、それから類推して余寿命は十分と勝手に判断し、運転開始以来25年間、1度も検査していない箇所が5箇所ある。その内の4箇所は、4年前に余寿命はゼロとなっていた。管理指針では、余寿命が2年以下になると配管取替のめどとしている。この場合、4年前に法的な必要最小肉厚を割ったはずなので、明らかに違法運転である。しかし、保安院は、この大飯2号の場合について「問題なし」と判断している。なぜ「問題なし」なのか、保安院は明らかにしなければならない。