検査リスト漏れ──6基の原発で17箇所も
「1度も検査していないが、他の原発から類推して安全」(関電)
「2次系配管だから破断しても大丈夫」(関電)

関電に染みついた安全性無視・人命軽視の体質


 関電は18日、検査リストから漏れていて、運転開始から1度も検査していなかった箇所を発表しました。6基の原発で、17箇所にも及んでいます(下記一覧表参照)。関電の管理が、いかにずさんであったかを改めて示しています。
 2002年に東電データ不正事件が起きた時、全ての電力会社が過去の検査に不正等がないか一斉点検していたはずです。にもかかわらず、関電の原発では、検査リストから漏れていた箇所が次々と明らかになっています。2年前の点検は一体なんだったのでしょうか。

「1度も検査していないが、他の原発から類推して安全」
 さらに驚くべきことは、検査をしていなかった箇所が多数あっただけでなく、関電は昨日の記者会見で「安全性は確保されている」を繰り返していることです。関電ホームページでも、昨日新たに発表した11箇所については、「同一仕様の他のプラントの測定結果から健全性が確認された部位」としています。すなわち、運転開始以来1度も検査していないが、他の原発の同部位で過去13〜1年前に測定した結果から類推して、健全性が確認されているから、安全だというのです。
 事故を起こした今でも、こんなことを言っているのです。運転開始以来1度も検査したことのなかった美浜3号機の配管が破断し、4名もの死者を出しておきながら、配管の肉厚検査もしないうちから、「類推して安全」と繰り返しているのです。配管がどれだけ減肉して薄くなっているかも分かっていないのです。全く許せません。1度も検査しなくても「類推で安全」を確認するなどということは、現在の抜け穴だらけの国の規制でも認められるはずがありません。さらに、今回点検リスト漏れが最も多かった高浜3号については、「技術上は大丈夫だが、止めるのはご安心のため」などと述べています。事故後の今も、関電の安全性無視、人命軽視の姿勢は何も変わっていません。これは、1999年のMOX燃料データ不正事件の時と全く同じです。「データ不正燃料を使っても、安全性に問題はない」と言い続けていたのです。これが、関電に染みついている体質なのです。

「最も激しい破断でも原子炉は大丈夫」(関電)
──2次系配管事故を軽視する関電

 今回明らかになったリスト漏れの中には、2次系の主要な配管である主給水管も含まれていました。昨日の記者会見で、主給水管が破断すればどうなるのかとの記者の追及に対して、関電は「最も激しい破断でも原子炉は大丈夫」と答えています。2次系配管に対する安全無視そのものです。原発の2次系は、原子炉を含む1次系と一つのシステムを形成しています。2次系配管を流れる冷却水で1次系の熱を冷やしているのです。今回の美浜3号機の事故では、約70%の2次冷却水が噴出しました。2次系の補助冷却機器が働いたため原子炉の冷却は保たれましたが、普段動いていない補助機器が作動しなければ、米国スリーマイル島原発事故のように、炉心溶融、放射能放出の参事につながる危険性があったのです。関電、保安院、原発推進学者達が何度も繰り返している「2次系配管の事故だから放射能漏れはない」「原子炉に直結していないから大丈夫」等々は、事故を過小に見せかけようとしているものです。

プルサーマルを予定していた高浜3号機でも検査リスト漏れ
 検査リスト漏れが最も多かったのが、高浜3号でした。高浜3号は、関電がプルサーマルを予定している原発です。関電は昨年10月に品質保証体制が整ったとしプルサーマル再開を表明しました。今年2月には、国の保安院がそれを了承していたのです。保安院は高浜原発や関電本店に立入検査まで行って、「大丈夫」とお墨付きを与えていたのです。その高浜3号で、運転開始以来検査していない箇所が8箇所も見つかったのです。保安院の検査がいかに陳腐なものであったかを如実に示しています。保安院は、関電のプルサーマル了承を取り消すべきです。


関電原発2次系の検査リスト漏れ一覧

注:8月18日発表分は、関電が「同一仕様の他プラントの測定結果から健全性が確認された」と称している部位