配管検査の必要を無視した関電は、4名を死に至らせた責任を明らかにせよ


 美浜3号事故に関し、関電の原子力事業本部長・火力事業本部長である松村洋常務は「きちんとした管理ができていればこのような事故は起こらなかった。亡くなられた方々に申し訳ない」と記者会見で話した。まさにその通りである。昨年の4月頃にすでに協力会社は当該部位が健全性確認すべき部位であるのに登録されていないことに気づいていた。関電はそのことを昨年11月に協力会社から指摘を受けながら、9ヶ月間も放置していたのである。しかも、今年7月には、大飯1号の2次系3系統の配管曲がり部で厚さが半分になるほどのひどい減肉が発見されている。それでもまだ検査に取りかかろうとしなかった。
 その結果、11名が被害に遭い、そのうち4名が死亡、3名が重体または重症、他の4名もひどい火傷状態にある。このことの具体的な責任について、関電は直ちに明らかにすべきである。

 突然蒸気が噴き出したのは、8日の15時22分ごろに、直径56cmの復水配管がめくれ上がるように破断したためである。約140℃の蒸気が、暴風をはるかに超える約8気圧差の勢いで逃げる間もなく人々に襲いかかり包み込み気道の中にまで充満したに違いない。
 破断個所は第4給水加熱器から脱気器に至る途中で、通水流量を測定するために通路を狭めるオリフィスの下流部分であった。蒸気混じりの水がオリフィスによって渦巻く乱流となり、配管壁を削り酸化させていたのであろう。約10mmの壁厚が1.4mmにまで減肉(エロージョン)していたというが、実際は酸化(コロージョン)によってさらに弱っていたと思われる。配管壁がまるで紙のように約50cmばかりめくれ上がっているが、その様子は米国のサリー原発2号で1986年に起こった破断の形態にそっくりである。
 破断はほとんどギロチン破断に近いものであった。たちまちにして2次冷却水が破断個所から抜け出していく。その冷却水は本来は途中から3系統に分かれて3台の蒸気発生器に導かれるようになっている。もし蒸気発生器への給水が止まると、炉心を冷やす1次冷却水の冷却ができなくなり炉心溶融の危険が生じるのである。事実、1979年の米国スリーマイル島原発では、2次冷却水の給水ポンプが止まったことが炉心溶融事故の発端であった。今回の美浜3号では冷却水が抜け出すのだから、単に給水ポンプが止まるだけよりなお始末が悪い。
 実際今回は、火災警報から6分後に蒸気発生器への給水が低いという信号が出て、原子炉は自動停止した。スリーマイル島原発ではこの後炉心溶融へと突き進んでいくのである。しかし、美浜3号では幸いなことに、補助給水系が自動作動して3台の蒸気発生器2次側に水を送り込んだために大事には至らなかった。だが、普段は動いていない補助給水系が突然動けと命令されて常に順調に動くとは限らない。今回も一度動いたタービン動補助給水系をいったん止めて、もう一度動くように準備作業を行ったところ3系統のうち2系統の出口流量調整弁の開放ができなかった。その原因は9日午後段階でまだ分かっていない。炉心溶融に至らなかったのは不幸中の幸いだったのである。けっして、放射能がもれていないと強調すれば済むような事故ではない。

 関電は検査を意図的にサボタージュして4名を死に至らせた責任をまず明らかにすべきである。藤社長をはじめ、幹部は自らの責任を明らかにしなければならない。
 このような関電に原発を扱う資格がないことが明確になった。いつ同様の破断が起こるかも知れないような状態にある他の原発をただちに止めるべきである。
 関電は、火力発電のすべてで検査記録をごまかし改ざんしていたが、原発の管理はそれとは別だと言い訳してきた。新しくプルサーマルに進み、MOX燃料製造の仮契約をコジェマ社と結んだのも、原発の品質管理体制がきちんと成り立っていることを仮定したからであった。しかし、今回の事故は、原発の品質管理体制がまるででたらめであることを如実に示した。
 関電はプルサーマル計画を直ちに撤回すべきである。