BNFL事件裁判での関電桑原部長(当時)の陳述書1
(桑原氏の陳述書から、美浜の会がOCRで読みとったもの)


乙第34号証
平成11年11月29日

陳   述   書

関西電力株式会社 原子力・火力本部
                原子燃料部長 

第一、職歴

 私は、昭和47年に関西電力株式会社に入社し、これまで約30年近くにわたり、ずっと原子力発電に係わってまいりました。その間、発電所・本店・東京支社で勤務してまいりましたが、主に原子燃料関係の業務に従事し、平成8年6月以降、原子燃料部長を務めております。

 さて、この度、当社が高浜発電所4号機で使用を予定しておりますMOX燃料につきまして、安全性に問題があるから使用差し止めするよう申し立てがなされておりますが、これについて私の考えを述べさせて頂きます。


第二、プルサーマル計画の経緯

 まず最初に、わが国がプルサーマルをどのように進めてきたのかという点について、ご説明いたします。

 日本は、エネルギー小国であり、エネルギーの輸入依存率は大変高いものがあります。原子力発電におきましてもウラン燃料の原材料であるウラン鉱石は、全て海外から輸入されています。しかしながら、ウラン燃料の場合は使用済燃料を再処理して回収ウランやプルトニウムを取り出して、再利用できることが、大きな特徴の一つです。これは、一種の国産エネルギー源であり、これらの利用により、資源の有効利用にもつながります。これを有効利用するのがプルサーマル計画であり、国レベルでこの計画を進めようとしております。

 わが国が進めておりますプルサーマル計画は、昭和40年代以来一貫して、国の原子力開発利用長期計画において、実施すべきことが述べられています。国のこの方針に従い、当社は、昭和63年から、美浜発電所1号機でMOX燃料の燃焼実績を積んだり、諸外国のMOX燃料の燃焼実績を集め、評価することにより、着実に、技術を開発してきているところです。
 国においても、平成7年6月19日に原子力安全委員会によって「MOX燃料の炉心装荷率が1/3程度まで、プルトニウム含有率約13%まで、燃料集合体最高燃焼度は45000MWd/tまで、の範囲で検討した結果、MOX燃料の特性・挙動は、ウラン燃料と大きな差はなく、また、MOX燃料及びその装荷炉心は、従来のウラン燃料炉心と同様の設計が可能である。」と評価されました。
 私自身、これらの技術開発や評価・検討に参画し、技術的な安全性には、十分自信を持っております。

 また、プルサーマルは、すでにフランス・ドイツなど欧州各国で長年にわたり本格的に実施されて、数多くのMOX燃料利用実績があり、通常のウラン燃料の利用と同様に普通に行われているものです。

 プルサーマルの本格実施は、長い間原子力に携わる関係者にとって、何とか進めねばならない課題でありましたが、近年、ようやく技術面及び社会的合意という観点からも、準備が整って参りました。そして、まず平成9年1月に、原子力委員会により、2000年までに日本全体で3〜4基について、プルサーマルを導入すべきことが決定され、また、同年2月にはプルサーマルを開始すべきことが閣議了解され、大きなはずみがついたわけでございます。
 これを受けて、平成9年3月には、関係箇所と幾多の調整を経て、ようやく当社は、その具体的な導入計画を公表することができました。その内容は、平成11年には高浜発電所4号機、平成12年には高浜3号機でプルサーマルを開始するというものです。

 その後は、原子力発電所のある地元の皆様あるいは電力消費地の皆様に対し、プルサーマルに関する説明を行い、ご理解を得ながら、ひとつひとつ手続きを進めて参りました。平成10年5月には、国に対して高浜3・4号機でのMOX燃料使用に関わる原子炉設置変更許可の申請を行い、通産省ならびに原子力安全委員会による安全審査を受けました。
 約7ヶ月間にわたる安全審査の結果、当社の計画しているプルサーマルは十分安全に実施できることが認められ、平成10年12月には原子炉設置変更許可を受領することができました。
 また、平成11年6月には地元自治体より、安全協定に基づくMOX燃料利用に関わる事前了解を受領し、諸手続きの中でも一つの大きな山を越えた次第です。

 一方、MOX燃料の加工については、平成10年1月にBNFL社において高浜4号機用の8体について開始し、同12月には完成しております。そして、日英仏政府の協力のもと、米国政府の合意も得た上で、当該MOX燃料を海上輸送して平成11年10月に高浜発電所に搬入したところでございます。

 今後は、通産省による輸入燃料体検査を受け、合格後、高浜発電所4号機に装荷することになります。当社としては、すでに平成9年3月に公表した導入計画どおり、平成11年中にMOX燃料を装荷するべく最大限の努力をしているところです。
 そのためには、高浜4号機を平成11年12月に中間停止させてMOX燃料を装荷する必要があります。これは、通常の定期検査とは別に行うものですが、当社としては、原子燃料サイクルを確立させるため、あえて中間停止を実施することとしており、現在準備を行っているところでございます。

 当社の進めているプルサーマル計画は、官民の原子力関係者が長年にわたり多大の努力を注いできているところであり、ある意味で象徴的なものということができます。
 原子力を進めていく上で、MOX燃料を利用することは、原子燃料サイクルの一つの輪を完成させるという非常にエポックメイキングな出来事であります。日本の原子力、更には日本のエネルギーセキュリティの確保に向けて、是非とも、計画通り年内には、高浜発電所4号機でのプルサーマルを開始させたいと考えております。


第三、高浜発電所用MOX燃料のペレット外径検査データの信頼性

 次に、仮処分申し立ての根拠となっております高浜4号機用のMOX燃料ペレット外径検査データに不正がなかったことについてご説明いたします。


一、不正発覚の経緯

 第二で述べましたとおり、高浜発電所4号機用のMOX燃料は、すでに高浜発電所に搬入されております。実は、このMOX燃料を海上輸送している最中に、大変残念ながら、BNFL社より、MOX燃料ペレットの外径検査データに不正の疑いがあるとの連絡を受けました。ただし、その不正は、輸送中の高浜4号機用のものではなく、高浜4号機用MOX燃料の製造後、製造に着手した高浜3号機向けのものの一部に見つかったというものでした。

 BNFL社がどうしでこのような不正に気がついたかと申しますと、同社の品質管理員がデータをチェックしていたところ、高浜3号機用MOX燃料のある製造ロットのペレット外径検査データの集約データ(ロット毎の平均値、標準偏差、最大値、最小値)が、直前のロットの集約データと全く一致していることに気づき、不審を持ちました。BNFL社が内部調査をしたところ、過去の検査データを一部不正流用している可能性が高いことがわかり、当社にも元請けの三菱重工業を通じて連絡してきたものです。
 当社としては、直ちに調査のため当社社員をBNFL社に派遣し、高浜3・4号機用MOX燃料のペレット外径検査データはもちろんのこと、その他の検査データについても、不正がないかチェックしました。
 この調査には、私自身を含めて、当社社員5名及び元請けの三菱重工業社員5名の体制で行いました。

 その結果は、平成11年11月1日に発表いたしました最終報告書に述べるとおり、高浜発電所3号機用22ロット分のペレット外径検査データ以外には、不正は見つかりませんでした。

 以下の項におきまして、一部不正が確認されたペレット外径検査データについて、詳しく説明いたします。

二、ペレット外径検査データに関する不正の有無のチェック方法

 MOX燃料ペレットは、製造工程においてはロット単位で管理されています。1ロットあたり約3000〜4000個のペレットがあり、BNFL社はペレット全数について外径を測定し自動選別していますが、MOX燃料の発注者である当社および元請けの三菱重工業は、1ロットから200個のペレットを抜取検査することを、契約上要求しています。
 
調査対象は高浜発電所4号機用199ロット、同3号機用193ロット、合計392ロットでした。
 データ流用のやり方は、他のロットのデータをそっくりコピーするというものでしたので、この392ロット全てについて、当該ロットより前に製造されたロット全てと比較して、何個のデータが一致するかを確認しました。
そして、それぞれのロットについて、他のロットのデータと一致する個数が最大のものをそのロットの一致個数として採用し、これを相互に比較検討いたしました。


三、チェックの結果と評価

各ロットについて、一致個数の分布状況を調べたところ、概略は次のとおりでした。

一致個数が13〜39個のあたりに分布するケースが369ロット
一致個数が138〜200個のあたりに分布するケースが22ロット
一致個数が66個のものが1ロット

 ほとんどのロットが、一致個数13〜39個の範囲に入っていますので、一致個数が138個以上のケース22ロットは、別のロットの検査データを流用しているのではないかと疑いました。これらの22ロットは全て高浜3号機用のものです。

 また、一致個数が66個のケース(ロットP824)は一致個数がやや多く、一致個数のみでは判断できないと考えました。これは、高浜4号機用のロットです。
 そこで、製造時に全数測定し記録されているペレット外径の全数自動測定結果約3800個からコンピューターにより模擬的に無作為に200個のデータサンプリングを行った結果と比較しました。その結果、検査データと類似するサンプリングデータのあることがわかりました。
 また、ロットP824は、ペレット研削の途中で一度研削機を停止させ、約6時間後再び動かしていますが、全数自動測定結果を見ると研削機停止の前後で外径の平均に変化が見られます。ペレット外径検査データも、このことを反映した傾向が見られます。
これらのことを考慮するとロットP824の抜取検査は適正に行われたものと考えられます。


四、検査員の証言

 高浜3号機用22ロットの検査に関与した検査員は3名であり、また、高浜4号機用のロットP824については、別の検査員が関与しています。
 BNFL社は、これらの検査員等について事情聴取を行っておりますが、これについて当社がBNFL社より聞いている内容は次のとおりです。

 「高浜発電所3号機用22ロットのうち18ロットに関与した検査員は、検査データ流用の行為を認めている。その方法等について、過去の検査データをハードディスクから全面コピーし、ロット番号と一部のデータの書き換えを行った。また、何ロットの検査で流用を行ったか明確には覚えていないが、10数ロット行ったとしている。測定は単純作業であり、全数自動測定を行っているものを再度測定するのは無駄な作業と思った。測定を省略し時間を短縮したかったと言っている。
 高浜3号機用3ロットに関与した検査員は、検査データ流用を否定しているものの、おどおどして落ち着かない様子であった。
 高浜3号機用1ロットに関与した検査員は、検査データ流用を否定している。
 高浜4号機用のロットP824に関与した検査員も、データ流用はしていないと証言している。」

 事情聴取については、当社と検査員は直接の雇用関係にないため、当社はBNFL社の検査員と直接には面談しておりません。ところが、高浜4号機用のロットP824に関与した検査員は、私が調査を実施していた当時、病気で自宅療養中であったにもかかわらず、BNFL社に事情聴取のため出社した際に、自ら当杜に対して面談を求めてまいりました。

 私自身も、直接に心証を得たいと考え、面談に応じました。その時の、証言の内容は次のとおりです。

 「データ流用はしていない。自分は、測定したデータの入力作業はできるが、コンピュータ操作に習熟しておらず、検査データの複写など複雑な操作はできない。また、検査については、必ず自分で実施し、記録を確認したものにしかサインをしない。200個の抜取検査は品質管理上決められた仕事であり、手抜きをするようなことを考えたこともない。同じ仲聞からこういう問題が起きたことに非常にショックを受けている。」

 短い時間ではありましたが、面談して、私は、この検査員は不正を行っていないという印象を持ちました。
 なお、この検査員は、他にも高浜3・4号機用のロットの抜取検査を行っていますが、検査データを流用している痕跡は見あたりません。
 また、検査実施当日に勤務していた他の複数のメンバー(5人)に対しても事情聴取がなされていますが、全員が検査データの流用を否定しています。

五、不正の有無について

 今回の調査対象の392ロットについては、その検査データ一致個数の分布状況、並びに検査員の証言状況から、私は、不正の有無について次のように判断しております。

 高浜3号機用の22ロットの検査データについては、他ロットとのデータ一致個数が138個以上あることから、検査データの流用がなされていたと判断しています。

 一方、高浜4号機用のロットP824については、一致個数がやや多いものの、ペレット製造時の全数自動測定結果との比較や検査員の証言などから、検査データを流用していないと判断しています。

 以上の結果から、高浜4号機用のMOX燃料検査データについては、データ流用という不正は認められず、信頼できるデータであると考えられます。
また、高浜3号機用のMOX燃料については、その一部について、検査データの流用がなされており、その検査データについては信頼できないと考えられます。


第四、製造工程におけるペレット外径の自動測定について

 引き続きまして、MOX燃料用ペレットの外径測定は、ペレットの製造工程におきましても、精密に実施されておりますので、そちらの状況を説明させて頂きます。


 当社と元請けの三菱重工業は、ペレット外径の品質を確認するため、BNFL社に対して、1ロットあたり200個の抜取検査に合格することを要求しています。
 BNFL社は、顧客の要求する品質を確保するため、製造工程の途中において、全てのペレットについてその外径を自動測定し、仕様値の範囲外にあるものは工程から自動で取り除いています。

 このことから、製造工程を通過したペレットは、その時点で、基本的に当社が要求している仕様を満たしていると考えることができます。
 さらに、BNFL社は、製造時にペレット選別のため測定していた全数自動測定結果を残していましたので、当社は、これにより全てのペレットが仕様値を満たしていることを確認することができました。

以下に、その状況を説明いたします。

一、ペレット製造方法の概要

 まず、MOX燃料用のペレット製造方法を簡単に示します。
 MOX燃料のペレット製造は、二酸化ウラン粉末、二酸化プルトニウム粉末を混合し、粉末流動性を得るために造粒(微細な粒にする)を行った後、円筒形のダイスに粉末を入れ、プレスで圧力を加えて円筒形のペレットに成形します。このペレットを焼結炉にて焼結し、セラミックとした後、所定の寸法にするため研削機で研削することにより、ペレット完成品ができあがります。

二、製造工程でのペレット外径の測定方法

 製造工程でのペレット外径測定については、製造の最終段階において、ペレット全数について、一つづつ測定されています。その測定は、抜取検査の時に用いる測定装置と同一機種であるレーザーマイクロメーターにより行われ、コンピュータにより自動制御されています。
 ペレットは自動測定に当たり、自動的に位置決めされた後、ペレット上部、中央部、下部の計3箇所についてそれぞれ外径が測定され、データは全てコンピュータ内部へ自動で保存されています。この間、人間が介在することはないため、今回間題になったような、人為的な不正が発生する可能性は全く考えられません。
 また、この自動測定結果に基づいて、自動選別装置により、ペレット外径仕様値(8.179〜8.204mm)を外れるペレットが、自動的に工程から取り除かれる仕組みになっています。

測定装置および校正方法を以下に示します。

(1)測定装置
   型  式:レーザーマイクロメーター
   測定原理:製造ライン中のペレットに対して、レーザー光線を照射し、
       受光側で観測される影の幅を測定する形式のものです。
   測定精度:当社のMOX燃料加工開始前に性能確認試験を行い、必要
       な測定精度があることを確認しています。

(2)装置の校正
  予め寸法の定められた校正用の模擬ペレットを用いて、測定装置の校正を各ロット毎の測定開始前に実施しています。校正用模擬ペレットの外径は、3種類(8.179mm、8.190mm、8.204mm)です。


三、ペレットの選別

 研削されたペレットは、外径の寸法について定められた仕様を満たすもののみ選別する装置により、自動的に選別されます。
 選別装置の信頼性については、まず当社のMOX燃料加工開始前に選別装置の性能確認試験が実施され、外径自動測定結果に応じて確実に選別されることが確認されます。また、各ロットの測定が開始される時にも、試験用模擬ペレットを用いて、選別装置が正しく作動するか確認を行っています。

 自動選別の具体的な方法は、次のとおりです。
 研削機で所定の寸法になるように研削されたペレットは、横置きの状態でコンベヤーにのせられて、測定装置の前まで移動した所で、測定装置により、ペレットの上部・中央部・下部の3ポイントの外径が測定されます。
 自動測定結果は、仕様内、上外れ、下外れそれぞれのケースで色を変えて測定器の表示装置に表示されるとともに、自動選別装置に送られます。
 自動選別装置は、コンベヤーの上でゲートを常時閉じています。そして、送られてくるペレットの自動測定結果が、3ポイントとも仕様内である場合のみ、ゲートが開き合格品とするようになっています。一つでも仕様外れがあれば、ゲートは閉じたままであり、ペレットはゲートに遮られて、コンベヤーから外れ、不合格品として取り除かれることになります。この間、全てコンピュータにより制御されています。

  なお、参考までに申しますと、選別された合格品のペレットは、専用のトレイに並べられ、ペレット全数について、さらに目視により欠けなどがないかチェックされ、もし異常があれば、その時点で工程からとり除かれます。
その後、初めてペレット外径に関する抜取検査に供されます。


四、製造工程における全数自動測定結果

  以上のように、ペレット製造工程におけるペレット外径測定は、適切に校正された測定装置により自動的に行われていること、また、ペレットの選別はその信頼性が事前に確認された選別装置により自動的に行われていることから、製造工程における選別結果は信頼できるものと考えることができます。
したがって、製造工程を通過して抜取検査に送られるペレットは、基本的に仕様を満足していることがわかります。


第五、ペレット外径仕様値の安全評価での考え方

  次に、MOX燃料ペレット外径の仕様値を設定するにあたり、どのように安全性が確保されているかを、説明します。
  MOX燃料ペレットの外径の仕様値については、設計上の要求と、製造上どれくらいのばらつきで製品を製造できるかという製造実力の両方を考慮して決められます。安全評価にあたっては、燃料ペレット外径にばらつきがあっても、燃料の健全性が確保されることを確認し、一方、BNFL社に対しては、その仕様値を満足させるよう製造することを要求しています。

一、MOX燃料ペレット仕様値の設定

 私どもは、高浜4号機に装荷するMOX燃料ペレットの外径寸法の設計値をウラン燃料の場合と全く同じ約 8.19mm としています。
 実際のMOX燃料ペレットの製造においては、製造上のばらつきを考える必要がありますが、これについても、ウラン燃料ペレットと同じ仕様幅として 8.179〜8.204mm を採用しました。


二、通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時における仕様値

(1)燃料の健全性を評価する項目については、原子力安全委員会により、以下の基準が設けられています。
 [1]燃料中心最高温度は溶融点未満であること。
  [2]燃料棒内圧は、通常運転時において、ペレットと被覆管ギャップが増する圧力を超えないこと。
  [3]被覆管応力はジルカロイ−4(被覆管材料)の耐力以下であること。
  [4]被覆管に生じる円周方向引張歪の変化量は、各過渡変化に対して1%以下であること。
  [5]被覆管の累積疲労サイクルは設計疲労寿命以下であること。
 なお、運転時の異常な過渡変化とは、「原子炉施設の寿命期間中に予想される機器の単一の故障若しくは誤動作又は運転員の単一の誤操作、及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって生ずる異常な状態」を意味しています。

(2)通常、大量の工業製品に対する検査は、全数検査を行わず、抜取で検査することが一般的です。抜取で検査する場合には、ある確率で、製品が仕様値を外れることを認めることになります。
   これと同様に、MOX燃料ペレットの場合も大量の数が検査対象となりますので、BNFL社に対して、抜取検査を行うよう要求しています。具体的にはAQL(合格品質水準)1%、「(5、6)判定」(200個のうち5個の不良まで合格、6個以上になると不合格となる。JIS Z 9015) を課しています。この場合には、抜き取ったペレット200個のうち、仕様値8.179 〜8.204mm を外れるペレットが5個以内であることをロットの合否の判定基準としています。

(3)設置変更許可申請書においては、上記の検査方法で保証されるレベルでペレットの外径が仕様値に入っていることを前提にして、燃料の健全性を評価しており、その結果を記載しています。
   なお、この考え方は原子力安全委員会でも認められているものです。


三、事故時における仕様値

 前項におきまして、通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時の燃料健全性評価について説明しましたが、さらに、非常に厳しい事故が起きた場合について、ペレット外径のばらつきがどのような影響を及ぼすかについて、ご説明します。

(1) 事故時の安全評価については、原子力安全委員会により以下の基準が設けられています。
   [1]炉心は著しい損傷に至ることなく、かつ、十分な冷却が可能であること。
   [2]燃料エンタルピは制限値を超えないこと。
   [3]原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力は、最高使用圧力の 1.2倍以下であること。
   [4]原子炉格納容器バウンダリにかかる圧力は、最高使用圧力以下であること。
   [5]周辺の公衆に対し、著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと。

事故時の評価にあたっては、種々の事象を想定しますが、いずれも結果が厳しくなるように条件を設定し、さらに、燃料の製造上のばらつきも考慮して計算しています。その結果、上記の基準を満足できることを確認しています。


(2)次に、「設計基準事故」の一つである「制御棒飛び出し」について、ペレット外径の製造上のばらつきがどのように影響するかを説明します。

   「制御棒飛び出し」は、燃料内部において核分裂反応が急速に進みペレットと被覆管により構成される燃料が破損する可能性のある事故です。これについては日本原子力研究所が、原子炉安全性研究炉(NSRR)で次のような実験を行っています。

  この実験は、被覆管と燃料ペレットの間げきが設計値95ミクロンの燃料(ペレット外径の設計値は9.29mm)について、その間げきが50及び195ミクロンとなるように外径を調整したペレットを用いて、燃料の破損状況への影響を調べたものです。
その結果、ペレットと被覆管との間げきを大きく変化させても、それが、燃料の破損に与える影響はわずかであることが判りました。

このことから、ペレット製造における外径のわずかなばらつきは、制御棒飛び出し事故に影響がないと考えることができます。


第六、原子力発電所全体で見た安全性

 第五において、MOX燃料の使用に係わる安全性について説明しましたが、原子力発電所全体としては、異常が起こらないよう、設計の段階から、きめ細かい対策を講じています。さらに、仮に異常が発生したとしても、その拡大防止策が何重にも講じられており、周辺に放射線の影響をもたらすことはないように設計しています。

一、原子力発電所は、異常が起こらないように安全上余裕のある設計となっています。各機器や燃料は、運転中に加わる力や温度に対して、これらの機器などが十分耐えられるような余裕のある設計が行われ、また、機器や材料は高性能・高品質のものが使用されています。

二、原子力発電所では異常の発生は極力防止されていますが、異常が発生しても、それが拡大しないよう安全対策がとられています。
  安全上重要な装置(たとえば非常用炉心冷却装置等)については、多重性や独立性を持たせるなど、いろいろなバックアップを備えるようにしています。たとえば、ある一つの装置が期待される機能を発揮できないことを想定した場合でも、別のバックアップが備えられていて、それらの機能(たとえば非常用炉心冷却装置であれば炉心を冷却する機能)を失わないように設計されています。

三、また、原子力発電所の装置に何らかの故障が起こり、万一放射性物質が環境へ放出されるような事故を評価する場合において、通常、燃料は健全な状態でありますが、評価上は1%(約400本の燃料棒相当)の燃料被覆管欠陥率をもとにした核分裂生成物の漏れがあるものとしています。結果として、原子力発電システム全体にとって大きな安全上の余裕を持たせていることになります。
  なお、もちろん、現実の運用では、このような多量の核分裂生成物の冷却材中への漏れがあれば、原子炉の運転を止めるなどの必要な措置をとることになりますので、1%という燃料被覆管欠陥率に伴う核分裂生成物の漏れは現実には起こるとは考えられないことです。

四、さらに、原子力発電所では、万一、燃料から核分裂生成物が放出されるような事故を想定した場合でも、核分裂生成物を原子力発電所の中にとどめ、周辺の公衆に対し著しい影響を与えることがないように対処できる設計としています。
  このように、原子力発電所では、いかなる局面でも、安全性について十分配慮した設計がなされています。

五、以上のような点に関し、MOX燃料を使用する場合に原子力発電所全体として、安全性を確保し得るかどうかについて、国による安全審査の過程で十分なチェックが行われています。
  具体的には、事業者が原子力安全委員会が定めた指針等に基づいて評価を行い、これに基づいて、通産省にて専門家の意見を聴取しながら審査が行われ、さらに原子力安全委員会のダブルチェックを受けるという厳格なものとなっています。

  以上、繧々述べさせていただきましたが、原子力発電所全体の安全性が十分に確保される中で、私どもが進めておりますプルサーマル計画は、全く安全に実施できるものと確信しております。高浜4号機でのMOX燃料使用は、安全性が確保されていないとする申し立てには、根拠がないと考えます。

以 上