◆1993 年に廃止されている米国の規格を参考にして
原発プールの未臨界基準値を緩和したのはなぜですか
◆データねつ造されていた989 個もの首藤バルブ製の弁は本当に
「安全上問題がない」のですか? 何故すぐに取り替えないのですか
質   問   書 と回答(11月18日)


関西電力(株)社長 八木 誠 様
2010年10月26日

T.1993年に廃止されている米国の規格を参考にして、原発プールの未臨界基準値を緩和したことについて

1.貴社は、前回の交渉で、大飯3・4号炉増設の設置変更許可申請書(1985年)以来、原発プールの未臨界性評価については、米国のANSI/ANS57.2を参考にしているとのことでした。しかし、この1983年に策定された米国の規格は、1993年に廃止になっています。

(1)この規格が廃止になってからも、この規格を参考にして、高浜3・4号炉のプールの未臨界の基準値を0.98に緩和した(1998年)のはなぜですか。

(回答)高浜3・4号炉のプールの未臨界の評価基準を0.95から0.98に変更したのは、1989年の高燃焼度燃料採用時であります。なお、ANSIの57.2は現在でも米国原子力規制委員会、NRCの文書レギュラトリーガイドの1.13、日本語に訳すと原子力発電所等の規制を行う際の具体的な見解をまとめた指針、及びNUREG-0800これの9.1.1、未臨界性に係わる標準審査指針において引用されており参考とすることに問題はないと考えています。

(2)参考にした規格が廃止になっている中で、基準値0.98の根拠はどうなるのですか。

(回答)今お答えしたのと同じ。

2.基準値を0.98とするにあたって、参考にしたのは、ANSI/ANS57.2のどの箇所ですか。具体的に示してください。

(回答)6.4.2.2.1の式などであります。

3.原子力安全・保安院は、上記の質問に対して、ANSI/ANS57.2の6.4.2.2.1 の式等との回答でした。この回答と同じですか。

(回答)同じです。

4.この米国の規格では、プールの未臨界性評価の確定最大許容増倍率は下記の式で求めることになっています。貴社の設計基準0.98はどのようにして求めたのですか。下記式に即して、数値を基に説明してください。

 最大許容増倍率
 =計算による中性子実効増倍率−計算と製造公差に基づく不確実さ−未臨界の適切な余裕※
 (※0.05 か少なくとも0.02 以上をとること)
 ka = kc −Δku − Δkm → ○= ○ − ○ − ○
 [○の箇所に数値を入れてください]

(回答)ご質問にあります未臨界の適切な余裕ですね、0.05か少なくとも0.02以上とることによって、余裕として0.02をとっています。ので、臨界、すなわち実効増倍率1ですから、1からこの余裕分0.02を差し引いて基準を0.98としています。

5.上記の米国規格に従えば、貴社はΔku を0.02としているため、基準値は0.96になるのではないですか。
1−0.02−0.02=0.96

(回答)未臨界性の計算結果に不確定性を加えたものを評価値としているので、評価基準は0.98で良い。

6.前回9月27日の回答では、9月22日付質問書の「2.使用済燃料プールの未臨界性評価に関する基準値の問題について」の(2)項目の質問と回答は下記のとおりでした。この回答内容とその解釈について、質問します。
質問)基準値を0.95から0.98に変えたのは、リラッキングや高燃焼度燃料の使用によって、実効増倍率が0.95では収まらなくなったからですか。
回答)米国ANSI/ANS の57.2の基準では、0.95〜0.98以下とすることが許容されており、0.95より大きい値を採用する場合は、解析上の不確定性を詳細に評価することが求められている。大飯発電所3・4号炉増設に係る設置変更許可申請(昭和62年許可)の際の使用済燃料ピットの未臨界性評価において、ラック製作公差、ラック内偏心による不確定性への影響に加え、新たに燃料製作公差に伴う影響を詳細に示すことにより、使用済燃料ピットに0.98を適応することが認められ、その後の未臨界性評価で使用されている。

(1)回答の中の、「0.95より大きい値を採用する場合は、解析上の不確定性を詳細に評価することが求められている」とは、ANSI/ANS57.2のどの項目に書かれているのか具体的に示してください。

(回答)ANSI/ANSの57.2の6.4.2.2.3に記載があります。

(2)この回答内容の解釈についての質問です。0.98を適用することが認められた直接の理由は、「新たに燃料製作公差に伴う影響を詳細に示すことにより」ということですか。ラックに関する不確定性の影響は、0.95を適用した時点ですでに考慮していたのですか、それともそれも0.98にした時点で初めて考慮したのですか。

(回答)基準値の変更、0.95から0.98にあたっては、貯蔵する燃料として許可を受けている燃料の新燃料時の濃縮度、高浜1・2号炉では、4.60wt%、高浜3・4号炉は、4.10wt%を上回る濃縮度、5.05wt%とすることやホウ酸水のホウ素濃度をゼロとするなど保守的な条件を想定した上で従来から考慮していたラックに関する不確定性の影響に加え、新たに燃料製作公差に伴う影響も示すことにより未臨界性評価上の不確定性を見直している。その際、燃料貯蔵設備を模擬した臨界実験データによる解析コードの精度の確認も行い評価の妥当性も確認している。

7.高浜3・4号機の場合、プールの未臨界評価の基準値が0.95であった当時、下記の数値を示してください。

・ 臨界計算上の不確定性( )
・ 製作に係わる不確定性
 ラック間隔公差( )、ラック内辺公差( )、ラック内偏心( )、
 燃料製作公差( )
・ 設計に用いる不確定性 ( )
・ 臨界評価値 ( )

(回答)未臨界性評価に関する数値は以下の通りです。臨界計算上の不確定性というのは1.66%Δkです。ラック間公差は0.58%Δkです。0.0058です。ラック内辺公差0.25%Δk。ラック内偏心は0.43%Δkだから0.0043。燃料製作公差は不確定性の余裕として考慮しています。設計に用いる不確定性は3.3%Δkですから、0.033。臨界評価値は、0.897です。


U.首藤バルブ製作所のデータねつ造された弁について

 原子力・安全保安院は10月12日、首藤バルブ製作所が製造していた弁の材料試験成績書がねつ造されていたと発表しました。同日に、四国電力と九州電力は、この件についてプレス発表しています。しかし、貴社はこの件について、なんら発表していません。
 新聞報道によれば、材料試験成績書がねつ造されていた弁2411台がPWRの原発に納入され、その内、貴社の美浜・大飯・高浜原発には989台もの弁が納入されていると報じています。また新聞では、首藤バルブ製作所は試験片を作らずに、基準値を満たしているよう成績書をねつ造しており、不合格になると無駄が多くなるため、コスト削減が動機だったと報じています。

1.四国電力や九州電力は、10月12日にプレス発表を行っていますが、貴社は未だこの件について何も発表していません。なぜですか。

(回答)保安院のご指導に基づき慎重に調査を進めてきたものであるが、保安院が事業者の調査結果をとりまとめて公表した12日以降お問い合わせに回答させていただくこととした。

2.首藤バルブ製作所が製造した弁は、貴社の各原発の各号機でどれだけ納入され使用されているのか、それぞれ示してください。

(回答)美浜は1号機が23台、2号機が31台、3号機が89台、共用が9台、美浜合計で152台。高浜は1号機が113台、2号機が102台、3号機が48台、4号機が96台、1・2号共用が24台、3・4号共用が4台、共用が54台。高浜合計すると441台。大飯は1号機が92台、2号機が40台、3号機が74台、4号機が76台、1・2号共用が58台、3・4共用が56台。大飯は合計で396台。美浜、大飯、高浜を足すと989台。

3.保安院は12日のプレスで、成績書にねつ造はあったが、PWR事業者に「当該弁の設置状況及び健全性の確認等について調査を指示し、その結果、安全上の問題はないことを確認しました」と述べています。同時に、「安全上の問題はない」という根拠として、以下をあげています。それぞれについて、貴社の原発に即して答えてください。
(1)弁は「原子炉施設の安全機能を直接担うものではない箇所に設置されていること」について
(a) 各原発の各号機で、弁はどのような箇所で使われているのですか。具体的に示してください。

(回答)設置場所は発電機冷却系統、変圧器油系統、海水系統等の常温低圧の系統であり、安全機能を直接担うものではない箇所に設置されている

(2)「今回新たにPWR設置者において、漏えい、割れ、変形その他の異常に関する外観点検を実施しており、これまでのところ、異常は確認されていないこと」について
(a) 989台全ての弁の外観検査を行ったのですか。

(回答)すべてについて外観検査を実施しています。

(b) その結果を示してください。

(回答)すべての弁について外観検査を実施し問題のないことを確認しています。

(c) 「外観検査」で「これまでのところ異常は確認されていない」と言われても心配です。四国電力のプレス発表では「7月14日、本件について調査するよう」保安院から指示あったと書かれています。
 保安院から貴社に指示があったのはいつですか。

(回答)保安院さんから指示があったのは平成22年の8月の4日です。

(d) 7月14日頃だとすれば、その頃、高浜2号機(6月9日定検入り)、大飯2号機(6月7日定検入り)、美浜2号機(8月20日定検入り)は定期検査中でした。
 定検中にどのような検査等を行ったのですか。

(回答)定期検査中のプラントから代表サンプルとして弁を設置している系統から取り出し、試験片を採取し機械試験等を実施している。また、運転中プラントと同様に全数の外観点検を実施し異常がないことを確認した。

(3)「試験片を採取して、構造強度上の裕度を十分に有している」について
 九州電力のプレス発表によれば、試験片(テストピース)は製造ロット毎に作製され、材料メーカが材料試験を行い材料検査記録が作られます。今回は、試験片そのものが作られていませんでした。
(a) いくつの試験片を、いつ、どこで採取したのですか。

(回答)試験片を定期検査中のプラントの大飯2号機から1台採取している。また、プラントメーカーが保有していた弁1台についても試験片を採取している。

(b) 試験片の検査は誰がやったのですか。その結果はどうだったのですか。

(回答)プラントメーカーである三菱重工業の検査部門で行っている。その結果、特に強度試験、成分分析の結果、特に問題ないことを確認している。

(4)「弁の技術基準適合性については、確認できる範囲において技術基準上の要求が満たされている」について、
(a) どれだけの弁で、技術基準を満たしていることを確認したのですか。

(回答)代表サンプルによる強度試験の結果、問題がなかっただけでなく、全数の外観検査や過去の運転パラメータなどの確認を実施している。また、これらの試験および点検結果は保安院にも確認を受けている。なお、実際に取り付けられていた弁を使用し、化学成分分析、機械試験等を行い問題のないことを確認している。

4.九州電力のプレス発表によると、首藤バルブ製作所は、材料メーカが作製した「材料検査記録」をわざわざ「転記」して「工場検査記録」を作製し、九州電力に納入していました。
(1)貴社の場合も、同様な状況だったのですか。

(回答)同様な状況と考えています。

(2)わざわざ「転記」すれば、試験片を作製していてもデータを改ざんできるのは明かです。貴社は、このようなやり方で「工場検査記録」が作製されていたことを知っていたのですか。

(回答)当社は知りませんでした。

5.保安院は、「今後、このような製品が納入されることがないよう調達管理の充実を図ることについて、すべての事業者に注意喚起しました」と述べています。どのように「調達管理の充実を図る」のですか。

(回答)設備重要度が高い弁等の調達においてJIS規格等への適合が必要な場合、テストピースを製作し、試験・分析をすること、および試験や分析の実施状況を必要に応じて立ち会い確認することを調達文書に明記することとしている。

6.今回の件では、「材料の化学成分や機械試験の結果を証明する材料試験成績書」がねつ造されていました。材料試験成績書は、材料・機器の強度や耐熱性、耐震性等の指標であり、弁の安全性確認にとって不可欠のものです。材料試験成績書がねつ造された弁は使用しないというのが、安全を最優先にする姿勢ではないですか。

(回答)弁の技術基準上の要求事項が満たされていることを原子力安全・保安院に確認されており、すぐに取り替える必要はない。しかし、当該弁の点検計画に合わせて他社製の同等品へ交換を行うこととしている。

7.保安院プレスでは、「D・・今後、PWR設置者は、計画的な点検や他社製の同等品への計画的な交換を行う予定である」となっています。
(1)データがねつ造されていた首藤バルブ製の弁はすぐに取り替えるべきです。貴社は、取替について、どのように計画しているのですか。

(回答)他社製の同等品へ該当弁の点検計画に合わせ取り替えを行う予定である。

(2)少なくとも、現在定検中の高浜3号機については、定検中に、首藤バルブ製作所の弁は取り替えるのですか。

(回答)弁の技術基準上の要求事項が満たされていることを原子力安全・保安院に確認されておりすぐに取り替える必要はないが、今後他社製の同等品へ当該弁の点検計画と合わせ取り替えを行う予定である。なお、今回の定検中に取り替え対象の弁はありません。


2010年10月26日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
     京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
     大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581


(10/11/25UP)