相次ぐ高燃焼度燃料の漏えいに関する質問書と回答(5月27日)


関西電力(株)社長 森 詳介 様
2010年5月12日

 最近、貴社のステップ2の高燃焼度燃料(燃焼度55,000MWd/t)から放射能漏えいが相次いで起こり、すでに大飯1、2及び4号機で合計5体の燃料集合体の燃料棒7本から漏えいが確認されています。
 大飯1号では2月1日に燃料棒からの漏えいが確認され、4月28日に2体の燃料集合体の各1本の燃料棒から漏えいしていたことが発表されました。
 また、大飯4号で2008年8月19日に1体1本で、大飯2号で2009年8月31日に2体からそれぞれ3本と1本で、漏えいが起こっています。
 貴社のプレスリリース(2010年4月28日)でも「(大飯発電所で)漏えいした燃料集合体はいずれも平成16年以降採用している高燃焼度燃料(17×17A型:最高燃焼度55,000MWd/t)で、全てが同一メーカの燃料集合体であった」と述べ、5体すべてに関する漏えいの共通原因を求めています。同一メーカとは三菱原子燃料であることはすでに明らかになっています。


質 問 事 項

1.大飯原発での漏えい燃料に関する基礎的事実について
 大飯2号の漏えい燃料集合体はKCHC81とKCHC88、大飯1号の漏えい燃料集合体はKCHC51とKCHC55だと発表されています。
(1) 大飯4号の漏えい燃料集合体の製品番号は何ですか。
答) KCHC24

(2) 漏えい燃料集合体それぞれの、製造年月日、燃料受け入れ年月日を示してください。
答)

  漏えい燃料集合体 製造年月日 燃料受け入れ年月日
大飯1 KCHC55 2004年10月 2005年6月2日
  KCHC51 2004年10月 2005年6月2日
大飯2 KCHC81 2004年7月 2004年12月1日
  KCHC88 2004年7月 2004年12月1日
大飯4 KCHC24 2004年6月 2004年7月9日

(3) 大飯1号の2集合体は同一時期に製造されたものとされていますが、同一時期とはどのように定義しているのですか。大飯1号、2号及び4号の漏えい燃料集合体はすべて同一時期に製造されたのですか。違う場合は、どれとどれが同一時期か示してください。
答) 同一時期とは、一つのプロジェクト、要するに製造単位、発注単位のこと。同一時期に製造された燃料です。大飯1号機、2号機及び4号機の漏えい燃料集合体は全て別の製造時期です。

2.漏えいが起こった推定原因について
 貴社は5体・7本に共通する漏えいの原因調査の結果、「推定原因」として「第9支持格子内での燃料棒と支持板またはばね板の接触面で、燃料の種類による相違点、原子炉内の1次冷却材の流れ、燃料集合体内の流れ(隣接燃料による影響)などの影響が重なったことによって燃料棒の振動が大きくなり、その状態で燃焼が進んだことから摩耗が進展して微小孔(ピンホール)が生じ、漏えいしたものと推定」したと述べています。
 しかし、フレッティング磨耗の傷は未だ確認されていません。また、漏えいした燃料棒7本のうち、支持格子に隙間が認められなかったものが3本あります。
(1) 隙間が認められなかった3本についての漏えい原因も、振動による摩耗だと考えているのですか。そうだとすれば、その根拠は何ですか。隙間がなくても振動は起こり得ると判断しているのですか。
答) 大飯4号機の漏えい燃料集合体については、これは照射後試験実施中ですが、発電所での外観検査では明確な隙間や入り込みが認められなかったものの、照射後試験での燃料棒引き抜き時にひっかかりが確認されており、わずかな入り込み等が発生しているものと推定しており、同様な事象と考えている。今回の漏えい発生の要因として、同一型式の燃料集合体のコーナー部にある燃料棒の第9支持格子部におけるフレッティング摩耗と考えている。

(2) 大飯2号と4号の漏えい燃料は、詳細な原因調査のための照射後試験を行っているのですか。結果はいつ分かるのですか。大飯1号も照射後試験を行うのですか。
答) 大飯4号機の2008年8月に漏えいした燃料(KCHC24)1体の調査は、2010年度の予定です。調査終了後結果をまとめる予定です。
大飯2号機の漏えい燃料、2009年8月に漏えいした燃料ですが、この燃料に関する照射後試験は2013年度内に終了することとしておりまして、計画策定中です。
なお、大飯1号機の漏えい燃料は、ファイバースコープの観察結果等から大飯4号機、2号機の漏えい燃料と同様の事象であると考えられます。したがって、大飯4・2号機の漏えい燃料の照射後試験により必要な知見は得られると考えられますので、大飯1号機の照射後試験を実施する予定はありません。

(3) 炉内中央部の流速は、高燃焼度燃料になったために早くなったのですか。そうでないなら、炉内中央部の流速が高いことは、以前から漏えいを起こす条件になっていたということですか。
答) 従来から把握している事象については、設計に反映し影響がないことを確認しているが、今回更に、要因が重なった場合に漏えいに至る可能性があることを確認したものであります。


3.貴社の対策について
 貴社は今後の対策として、以下を示しています。
漏えいが確認された燃料は取り出し、今後使用しない
同じ型式で同時期に製造された燃料については、現在実施中の照射後試験等を踏まえた漏えい原因が判明するまで、再使用しない
漏えい原因が判明するまで同型の燃料について
1) これまでに漏えいが発生した燃焼度以上とならないようにする
(ウラン燃料は38,000MWd/t未満、ガドリニア入り燃料は36,000MWd/t未満)
2) 炉心中心には装荷しない
今後、燃料設計の一部変更について検討を行う
(1) 貴社の推定原因によれば、設計と炉内配置が問題になるものの、燃料の製造時期は関係しないのではありませんか。同型の燃料はすべて使わないようにするべきではありませんか。
答) 今回の対策を実施することで、漏えいの可能性を十分低減することができると考えているとともに、一次冷却材中のヨウ素濃度を監視し、漏えいの徴候が見られた場合は適切な措置をとることとしていることから、全ての三菱製燃料を使用しないという対策は考えていません。

4.高浜1号と美浜2号の漏えいについて
 大飯原発以外にも、ステップ1の燃料(燃焼度48,000MWd/t)で漏えいが起こっています。2008年1月9日に高浜原発1号で2集合体から、今年4月19日には美浜原発2号で漏えいが起こっています。
(1) 高浜1号(15×15)の漏えいは2つの集合体(KAEA70、KAEA72)で起こっています。KAEA72では漏えいした燃料棒が特定できず、KAEA70では1本が特定されていますが縦向きのどの位置で漏えいしたかは確定されていません。
(a) この燃料集合体の、製造メーカ、製造年月日、燃料受け入れ年月日を示してください。
答) 製造メーカは三菱原子燃料(株)です。2体とも2003年10月に製造され、2003年11月に発電所に搬入しています。

(b) 漏えいから2年以上が経過しましたが、詳細な原因調査をしたのですか。結果を公表してください。
答) 漏えいが確認された燃料集合体の外観検査、履歴調査、要因分析を実施した結果、いずれにおいても漏えいの原因は特定できなかった。しかしながら、これらの調査結果及びヨウ素の濃度、ヨウ素131とヨウ素133の比の関係から、一次冷却材中のヨウ素濃度の上昇は燃料棒に偶発的に発生したピンホール(微小な漏えい孔)によるものと推定しており、さらなる調査は実施していない。

(2) 美浜2号(14×14)については、漏えいに関する情報はまだ何も公表されていません。
(a) この燃料集合体の、製造メーカ、製造年月日、燃料受け入れ年月日を示してください。
答) 漏えい燃料がまだ特定されていません。そのためお答えのしようがありません。

(b) この燃料の漏えい原因について究明する方針を示してください。
答) 今後原子炉から燃料を取り出して、その後漏えい燃料を特定するためのシッピング検査及び特定された漏えい燃料の外観点検を実施する予定です。なお、調査結果については、まとまり次第公表する予定です。

5.漏えいは全て三菱原子燃料製の燃料で起きていることについて
 貴社は大飯原発での漏えいに関して、すべて三菱原子燃料製であり、その設計にも原因があったと述べています。

(1) このメーカの同一型式の燃料集合体はすべて使わないようにするべきではありませんか。
答) 今回の対策を実施することで、漏えいの可能性を十分低減することができると考えているとともに、一次冷却材中のヨウ素濃度を監視し、漏えいの徴候が見られた場合は適切な措置をとることとしていることから、全ての三菱製燃料を使用しないという対策は考えていません。


2010年5月12日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581


(10/06/01UP)