使用済MOX燃料の「処分の方法」、
MOX燃料の内圧評価の変化等に関する
質問書と回答(5月27日)


関西電力(株)社長 森 詳介 様
2010年5月11日

T.使用済MOX燃料について

1.貴社の高浜3・4号機プルサーマルに関する設置変更許可申請書(1998年5月11日付)では、「使用済燃料の処分の方法」について、「燃料の炉内装荷前までに使用済燃料の貯蔵・管理について政府の確認を受けた場合、再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受けることとする」となっています。

(1) この設置許可変更申請書で、貴社が政府に確認を受けたのは、「燃料の炉内装荷前までに使用済燃料の貯蔵・管理」を行うということですか。

答) 「燃料の炉内装荷前までに使用済燃料の貯蔵・管理について政府の確認を受けた場合、再処理の委託先については搬出前までに政府の確認を受けることとする」。(これ)全体について、国に許可を受けている。

(2) 使用済MOX燃料の再処理委託先は、「搬出前までに政府の確認を受ける」となっていますが、委託先の目処はあるのですか。

答) 使用済MOX燃料の処理の方策については、原子力政策大綱において平成22年頃から検討開始することとなっている。平成21年7月に文部科学省、経済産業省、電気事業連合会、日本電気工業会及び日本原子力研究開発機構で構成する5者協議会は、使用済MOX燃料の再処理を第二再処理工場で行うことを含め、将来の核燃料サイクルについて検討事項を技術的論点整理として取りまとめ、原子力委員会へ報告している。原子力委員会はこの報告に対し、関係者が第二再処理工場にかかる検討を継続することは適切との見解が示されており、今後原子力委員会においても、第二再処理工場に関する検討が進められると聞いている。

(3) 再処理の委託先が決まるまで、原発の使用済燃料ピット(プール)で貯蔵・管理するということですが、その安全性の確認にあたっては、何十年を想定し、その間どのようにして安全性を確認しているのですか。

答) 使用済MOX燃料については、今後2010年頃から検討が開始される六ヶ所再処理工場に続く第二再処理工場で再処理される予定となっており、それまでの間、適切に貯蔵・管理していくこととしている。安全性の確認にあたっては、MOX燃料を4分の1炉心装荷した炉心において、定期検査毎に3分の1炉心取り替える運用において、使用済燃料ピットに貯蔵される燃料を想定した使用済燃料ピットの水温を評価し、安全性に問題がないことを確認している。また、使用済MOX燃料の中性子による放射線線量率は使用済ウラン燃料に比べて高くなる一方、使用済MOX燃料のガンマ線による放射線線量率は使用済ウラン燃料に比べて低くなると共に、水中で取り扱い・貯蔵することにより、十分減衰されることから遮へいの観点でも安全上問題ないことを確認している。
 (やりとりの中で、貯蔵期間で評価しているのではないと回答)

(4) 定期検査では、使用済燃料プールについてどのような検査を行っているのですか。

答) 使用済燃料ピットの冷却系、浄化系にかかる定期事業者検査として、使用済燃料ピット関係設備機能検査を実施している。使用済燃料ピット関係設備機能検査においては、ポンプの運転状態、浄化流量、水位、温度などを確認している。

(5) 貴社の設置変更許可申請書は、原子力安全・保安院の内規「『使用済燃料の処分の方法』の確認について」(2004年3月12日付)が出される6年も前のものです。何を根拠にして、「燃料の炉内装荷前までに使用済燃料の貯蔵・管理について政府の確認を受けた場合、再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受けることとする」としたのですか。

答) 当時は海外の再処理工場への搬出が終了し、一時的に使用済燃料の発生量が再処理能力を上回ることから、「当面の核燃料サイクルの推進について」の閣議了解(平成9年[1997年]2月)等を踏まえて、発電所で適切に貯蔵・管理した後、搬出前に再処理委託先の確認を受けることとして申請し許可を得ているものである。

(6) 原子炉等規制法23条第2項第8号では、原子炉を設置及び変更する場合に、「使用済燃料の処分の方法」を記載しなければなりません。使用済MOX燃料のプールでの貯蔵・管理は、この「処分の方法」にあたるのですか。

答) 使用済燃料は再処理することとしており、燃料の炉内装荷前までに使用済燃料の貯蔵・管理について政府の確認を受けた場合、再処理の委託先については搬出前までに政府の確認を受けることとする、として国に許可を受けている。
 (やりとりの中で、プールでの貯蔵・管理は「処分の方法」にはあたらないと回答)


2.「使用済燃料の再処理等を適切に実施する」ことを目的として、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」(2005年5月20日)が制定され、貴社も積立を行っています。

(1) この法律に基づく積立金の対象になっている使用済燃料とは何ですか。

答) 「原子力発電所における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立及び管理に関する法律」では、再処理を行う具体的な計画を有する使用済燃料を対象に積立金を積み立てることとなっている。具体的には、六ヶ所再処理工場で再処理を行う使用済燃料がこれに該当する。

(2) 使用済MOX燃料は積立の対象になっていますか。積立の対象になっていない場合、その理由は何ですか。

答) 原子力政策大綱において、プルサーマルに伴って発生する使用済MOX燃料の処理の方策は、2010年頃から検討を開始することとなっており、現時点では使用済MOX燃料は六ヶ所再処理工場において再処理する具体的計画を有しているとは言えないことから、当面発生する使用済MOX燃料は積立金の対象外になっている。

3.貴社は電気事業会計規則等によって再処理等引当金などの積立を行っています。
 貴社の有価証券報告書では、「使用済燃料再処理等準備引当金」という項目があります。この引当金は「再処理等を行う具体的な計画を有しない使用済燃料の再処理等の実施に要する費用に充てる」と記載されています。この貴社の引当金は現在248.3億円となっています(第85期2008.4.1〜2009.3.31)。

(1) この引当金の対象である「再処理等を行う具体的な計画を有しない使用済燃料」とは具体的にどのような使用済燃料ですか。使用済MOX燃料は含まれますか。

答) 「再処理等を行う具体的な計画を有しない使用済燃料」とは、日本原燃(株)六ヶ所再処理工場において再処理を行う具体的な計画を有するもの以外の使用済燃料をさす。使用済MOX燃料については、原子力政策大綱上、2010年頃から再処理の方策の検討を開始するとされていることから、具体的な計画を有しない使用済燃料に該当し、使用済燃料再処理等準備引当金の対象である。

(2) この引当金の対象として使用済MOX燃料が含まれる場合、引当金の計上は、MOX燃料の装荷時ですか、それとも使用済MOX燃料が発生した時ですか。

答) 電気事業会計規則に従い、MOX燃料の燃焼に応じて引当を行う。

(3) 248.3億円の内訳はどうなっていますか。

答) 参照いただいている平成20年度の有価証券報告書における使用済燃料再処理等準備引当金248.3億円は全て、再処理等を行う具体的計画を有していないウラン燃料にかかる引当額である。


U.MOX燃料の内圧評価の変化(14.6→16.1MPa)について

 設置変更許可申請書でのMOX燃料の内圧評価値はA型燃料で約15.7MPa、B型燃料では約14.6MPaであることは確認済みです。輸入燃料体検査申請書ではB型燃料の値が16.1MPaに上がっています。なぜ上がったのかという質問に対し、次の電話回答がありました。
電話回答: 「変更許可申請での評価は代表例での内圧評価結果を示したものです。輸入燃料体検査申請書では実際に使用するMOX燃料のプルトニウム富化度等を考慮して、内圧評価結果は16.1MPaとなったものです。」
 しかし、この回答では理解できないため、なぜ14.6が16.1に上がったのかについて、再度質問します。

1.設置変更許可申請書では代表例を示したとのことですが、MOX燃料に関する第3.2.5(2)図では、「1領域中燃料」(平衡炉心での取替燃料)のとり得る内圧範囲が示されており、A型ではその最大値が約15.7MPaとなったことが示されています。結局は、すべての燃料が取り得る内圧の最大値がB型では約14.6MPaとなったと考えられます。この考えで間違いないですか。

答) 設置変更許可申請書における平衡炉心において、B型燃料の代表的な燃料棒の最大値が14.6MPaであるということです。

2.その14.6が16.1に上がった理由は、「実際に使用するMOX燃料のプルトニウム富化度等を考慮」した結果だということでした。設置変更許可申請書ではプルトニウムは代表組成(核分裂性プルトニウム割合約68%)が採られていましたが、それが低組成(同割合約64%)になって、アルファ線によるヘリウム発生量及び放出量が増えたことが一因であるということですか。

答) ヘリウム生成量はプルトニウム富化度等により影響を受けるため、そのことは内圧評価値の違いの一因にはなりますが、内圧評価値が異なるのは、プルトニウム富化度を考慮したことと炉心での燃料運用をさらに保守的に考慮して評価したこと等によるものです。具体的内容については、商業機密に該当するため回答は差し控えさせていただきます。

3.第95部会資料によれば、代表組成が低組成に変わったとき、B型MOX燃料の内圧は14.6から15.4に変わります(設計基準19.0×設計比0.83=15.4)。しかし、これでは16.1には届きません。次の各可能性について答えてください。

(1) 内圧評価に用いている解析コードFPACの不確定性が増加したのですか。特に、FPガス(核分裂生成ガス)の放出率の不確定範囲が増大したのですか。

答) FPガスの放出率の不確定性の考え方を変えたものではありません。なお、不確定性の設定の考え方は商業機密に該当するため回答は差し控えさせていただきます。

(2) 蒸発性不純物の量が増えたためですか。

答) 蒸発性不純物の量とは関係がありません。

(3) 最初に封入するヘリウムガスの量を増やしたのですか。

答) 封入するヘリウムガスの量については、商業機密に該当するため回答は差し控えさせていただきます。


V.島根原発で発覚した機器の点検漏れなどに関連して

 島根原発では、機器の点検や交換の漏れが多数発覚しています。2007年には当時の甘利経産大臣の指揮のもと不正報告などの「徹底的な洗い出し」が行われ、全ての電力会社が、不正報告や点検漏れ等はもうないと表明していたはずでした。それにもかかわらず、今になって多数の点検漏れ等がまた明らかになっています。

1.貴社も、2007年に不正報告や点検漏れ等はもうないと報告していました。島根原発でこのような事態になったことを受け、点検漏れ等がないことを改めて確認しましたか。

答) 今回の件では、点検実施箇所と点検計画表の管理箇所の連絡不足により、未点検のものが記録では点検済みとなっていたことが問題となっているが、当社では点検を担当した本人がシステムに入力しない限りは点検未実施と記録される。このため、未点検のものが点検済みとして記録されることはないと考えており、また現時点で同様の問題も認められていないが、当社としても中国電力が取り組まれている根本原因の分析状況を注視し、必要に応じて対応を検討してまいりたい。

2.貴社の原発で点検漏れ等は一切ないのですか。

答) 当社では、点検計画表をシステム上で作成するが、その際に定められた点検周期以内で計画されていることをシステム上でチェックする機能を設けている。仮に点検周期を超えた計画を策定しようとしても、担当者がその理由を入力し上司の承認を得なければ点検計画表が確定できない仕組みとしていることから、適切な点検周期の管理ができる。

2010年5月11日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581


(10/06/01UP)