BNFL事件では燃料棒にネジやコンクリート片が混入
今回メロックスでは陸上輸送容器に木片が混入
関電とメロックス社の安全管理のずさんさを示す
MOX燃料の陸上輸送容器に混入していた異物(木片)等に関する
質問書と交渉での回答(2010年1月14日)


関西電力(株)社長 森 詳介 様
2009年12月22日

 貴社は12月21日の福井県原子力安全専門委員会で、高浜原発用MOX燃料のフランス国内での陸上輸送において、輸送容器1基の内部に26個もの木片が混入していたことを口頭で報告しました。この問題及びMOX燃料の安全性の問題について、以下に質問します。

1.陸上輸送容器内に木片が混入していた問題について
 新聞報道によれば、MOX燃料12体をメロックス工場から約800q離れたラ・アーグにある海上輸送のための詰め替え施設に陸上輸送を行っている中で、輸送容器1基の内部に木片が混入していたことが明らかになったとのことです。これは11月19日に発見され、メロックス工場から運びだす際には異物がないことを確認し、その後密閉状態でラ・アーグの施設に陸上輸送され、施設到着後に容器からMOX燃料を取り出した後に異物が発見されたとのことです。
(1)事実関係に関する質問

  @ 陸上輸送を実施したのはいつですか。
答   輸送日程に関する情報は、核物質防護上お答えできません。

A 1基の輸送容器から異物が見つかったとのことですが、輸送容器は何基使用したのですか。
答   製造したMOX燃料12体について順次、陸上輸送を行なっているところ。陸上輸送容器のMOX燃料の収納体数は1基当り1体であることから、何基使用したかは何体輸送したかと同じであり、核物質防護上お答えすることはできません。

B MOX燃料体1体を1基の輸送容器で輸送するとのことですが、これは事実ですか。異物が見つかった輸送は、何番目の輸送だったのですか。
答   陸上輸送容器1基には1体の燃料が収納される。製造したMOX燃料12体について順次、陸上輸送を行なっているところでありまして、何体輸送したかは核物質防護上お答えすることはできません。

C 12体のMOX燃料の陸上輸送は全て完了しているのですか。
答   何体輸送したかは核物質防護上お答えできません。

D 異物は、MOX燃料集合体を入れたステンレス製のバスケットと輸送容器の間で見つかったとのことです。また輸送容器の底部で見つかったとも報道されています。輸送容器のどの部分で見つかったのか具体的に示してください。
答   燃料を抜き取った後の陸上輸送容器内の底部から見つかった。

E 10年前のBNFL事件では、製造したMOX燃料棒にネジが混入しており、貴社はそのX線写真を公表しました。
 今回の異物は、26個の木片(5〜7pの長さで、直径1o程)だと報道されています。その写真を公表してください。
答   当該部の写真については、公表に際してメロックス社の了解が必要となるため、現時点では公表することはできません。


(2)11月19日に異物が発見されたにもかかわらず、貴社が口頭で報告したのは1ヶ月も後の12月21日です。
  @ なぜすぐに公表しなかったのですか。また、貴社のホームページで未だ公表されていないのはなぜですか。
答   燃料の健全性に影響を与えるものではないが、地域の皆様にご安心頂くとの観点から調査結果がまとまったのち、しかるべきタイミングで公表したいと考えている。

A 原子力安全・保安院と福井県にはいつ報告したのですか。
答   12月8日に情報提供しています。


(3)輸送前には輸送容器内には異物はなく、輸送中は密閉されていたのに、輸送完了時に異物が見つかったとのことです。現在メロックス社が調査中とのことですが、1ヶ月を経過してもまだ原因は明らかになっていないと報道されています。
 このことは、メロックス社と貴社の安全管理がずさんであることを示しているのではないですか。
答  メロックス社は適切な品質保証システムに従い、原因調査等を実施しており、当社の進捗状況について適宜情報を得ている。今後調査結果がまとまったのち、しかるべきタイミングで公表したい。

(4)貴社は、「MOX燃料の健全性に問題はない」と話していますが、どのようにして健全性を確認したのですか。
答  念のためホルダーを取り外し、燃料集合体の外観確認を行い異常のないことを確認した。

(5)また貴社は、「海上輸送など今後の工程には大きな影響はない」とも話しています。異物混入の原因も明らかにならない内から、なぜこのようなことが言えるのですか。海上輸送はいつ頃に開始する予定なのですか。
答  今回の事象は、燃料健全性に問題がないことから、今後の工程には大きな影響はない。海上輸送時期については、関係者間で調整しているところであり、現時点では決まっていない。

(6)今回の輸送容器への異物混入事件は、メロックス社と貴社の安全管理のずさんさを示すものであり、さらに、輸送容器だけでなく、MOX燃料棒にも異物が混入しているのではないかという疑義が生じます。
 燃料棒に異物が混入していないことを、どのようにして確認しているのですか。
答  陸上輸送前にはMOX燃料の外観確認を行い、異常がないことを確認している。当該燃料1体については、念のためホルダーを取り外し、当社及びメロックス社で燃料集合体の外観確認を行い、異常のないことを確認した。

2.プルサーマルの安全性に関するMOX燃料棒内圧の評価について
 燃料の燃焼が進むにつれて、ペレットは核分裂生成物やガスによって膨張し、他方被覆管は1次冷却材による圧力によって縮まり、やがてペレットと被覆管のすき間はなくなります。このすき間が再び開くようなことになれば、燃伝達率が低下し燃料が溶融する危険があるため、すき間が再び開くことのないように、燃料棒内圧などが厳しく制限される必要があるとされています。

(1)燃料棒内圧の設計基準値について、貴社は設置変更許可申請書では、約19〜約20MPaと設定しています。他方、輸入燃料体検査申請書では、これを19.0MPaとしています。20ではなく、19.0MPaを採用したのはなぜですか。輸入燃料体検査申請書2−16頁に書かれているように「最も厳しくなるものとして」低い値を採用したということですか。

答  燃料棒内圧の設計基準は燃料棒の仕様により異なる。今回高浜3、4号機向けに製造した17×17のB型MOX燃料については燃料棒内圧の設計基準は19.0MPaとなる。

(2)燃料棒の内圧評価にあたって考慮すべきガスの影響としては、初期ヘリウムガス、放出核分裂性ガス、放出ヘリウム、揮発性不純物によるガス放出が考えられます。貴社の燃料棒内圧評価で考慮しているガスの影響は、基本的にこの4点ですか。
答  燃料棒内圧評価にあたっては、初期ヘリウムガス、核分裂生成ガス、照射により生成されるヘリウムガス、を考慮している。燃料棒内圧評価に使用する設計コードについては、様々な照射試験により得られたデータにより妥当性が考慮されている。

(3)設置変更許可申請書では、BNFLで製造することになっていたA型MOX燃料についての解析結果(3.2.5図)では最大内圧は16.1MPaよりかなり低い値に見えます。最大内圧をいくらと評価したのですか。
 他方、輸入燃料体検査申請書では最大内圧は16.1MPaとなっています。この違いはA型とB型の違いによるものですか、それとも揮発性不純物などの評価が新たに加わったためですか。
答  高浜3、4号機の設置変更許可申請書添付書類8第3.2.5図に記載している燃料棒内圧評価結果は15.7MPaである。輸入燃料体検査申請書で最大内圧が16.1MPaとなっているのはA型・B型の違いなどのためであり、評価において新たな内圧への影響因子を追加したものではない。


2009年12月22日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
 京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
  大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581


(10/01/18UP)