高浜原発用のMOX燃料ペレットで不良品が製造されたことに関して
BNFL事件の教訓を踏まえて
どの検査項目で不良品となったのか等、
全ての情報を公開するよう求めます

質問及び要望書


関西電力(株)社長 森 詳介様
2009年8月26日

 貴社の8月19日付プレス発表では、フランスのアレバ・メロックス社で製造中の高浜原発用のMOX燃料ペレットに不良品が出たため、4体分は採用しないと発表しています。しかし、この件については、具体的な情報が一切公表されていません。そのため、以下を質問・要望します。

[質問事項]
1.MOX燃料ペレットの不良品の内容について
 貴社のプレス発表では、「今年6月、原燃工とメロックス社がペレットの性状を確認するための自主検査の一つを実施したところ、一部のペレットで目標値の範囲内に収まらない測定値を示すものがあった」と記載されています。また新聞報道では、「性状に関わる7項目の自主検査の内1項目」で目標値の範囲に収まらないものがあったと報道されています。

(1)不合格となった検査項目等について

  (a) 自主検査の項目とは、8月19日の記者会見で発表した別紙資料の内容に間違いないですか。この自主検査項目について貴社ホームページで公表しないのですか。

(b) 今回「目標値の範囲内に収まらなかった測定値」とは、自主検査の「性状に関わる検査項目」7項目の内、どの検査項目についてですか。

(c) その項目では、何を測定するのか、及び測定の目標値の範囲と判定基準を示してください。

(d) 「範囲内に収まらない測定値」とは、目標値をどれくらい超えていたのですか。また、それはどれくらいのMOXペレットで生じていたのですか。

(e) 不合格となった4集合体分のペレットは、合格となった12集合体分のペレットと何が異なるのですか。別のバッチで製造されたのですか。

(2)確認の方法等について
  (a) 「目標値の範囲内に収まらなかった測定値」を確認したのは、記録確認によってですか。

(b) その場合、その記録とは、ペレット全数についての記録ですか、それとも抜き取り的な記録ですか。

(c) 確認した時期は、燃料棒や燃料集合体に組み入れられる前ですか。


(3)検査データ等について
  (a) 不良品の記録のデータを貴社は持っていますか。もっていない場合、それはなぜですか。

(b) 国の検査項目と自主検査項目について、全てのデータをアレバ・メロックス社から提供されていますか。


(4)判定基準について
  (a) 同じものでありながら、アレバ・メロックス社は合格だと判断し、貴社は不合格だと判断するような事態がなぜ生じたのですか。契約上では、自主検査で目標値の範囲を超えた場合に、採用するかどうかの基準はどうなっていたのですか。

(b) 自主検査の「性状に関わる検査項目」7項目の内、例えば「核分裂性プルトニウム含有率」の検査項目に即して、検査方法や目標値の範囲、及び判定基準を示してください。


(5)品質の確保等について
  (a) 貴社はプレス発表で、「製造体数を、現計画の16体から品質が確保されているペレットのみを用いた12体に変更し」としています。
 採用しなかった4体分のペレットについては、「品質が確保されていない」と判断したと理解していいですか。


(b) 他方、アレバ・メロックス社は「これまでの経験に基づき、当該ペレットはMOX燃料として採用が可能」と主張したとプレス発表では書かれています。
 「これまでの経験」とは、他社用のMOX燃料では、今回貴社が採用しなかったようなペレットを採用した経験があるということですか。その場合、日本向けのペレットでそのような経験があったということですか。

(c) このことは、ペレットの品質確保に関して、貴社とアレバ・メロックス社との間に、認識の相違があるということを示しているのではないですか。

(d) 4体分のペレットは作り直すということですが、その分の追加費用は貴社が負担するのですか。

(e) 「品質保証には万全を期す」と貴社は何度も繰り返してきました。しかし今回、品質が確保されないペレットが製造されたことの原因は何ですか。また、その責任の所在を明らかにしてください。


2.BNFL事件の教訓に照らして
 BNFLの場合は、検査項目・判定基準などは公表されていました。また、ペレット外径のデータについては、全てのデータが公開されました。

(1)BNFL事件の教訓を踏まえれば、不良品に関する情報をすべて公開すべきではありませんか。公表しないのはなぜですか。

(2)BNFLの場合、問題となったペレット外径についてはデータが公表され、「企業機密」ではありませんでした。今回の場合も、ペレットの安全性に関する問題であり、「企業機密」は適用できないのではないですか。

(3)「どの検査項目で問題が生じたのか」さえ公表しない貴社の姿勢で、MOX燃料の安全性に責任を負えるのですか。


[要望事項]
 貴社が不採用とした4体分のペレットに関して、どのような検査項目で「目標値の範囲内に収まらなかった」のかを含め、これに関する具体的データなどを全て公開してください。

2009年8月26日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
  京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
  大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581





 別紙資料 ペレットに関する検査項目(2009.8.19関電記者発表)
ペレットに関する輸入燃料体検査項目 ペレットに関する自主検査項目
輸入燃料体検査は、電気事業法第61条に基づく検査の合格基準である「燃料体の技術基準に適合していること」を確認し、燃料が健全に使用できることを確保するための検査。 自主検査は。当社、原燃工、メロックス社の三社が、輸入燃料体検査項目に加え、より高い品質の燃料を調達するため、各製造工程で自主的に行っている検査。
<性状に関わる検査項目>
 ・プルトニウム含有率
 ・プルトニウム組成
 ・U235濃度
 ・不純物
 ・水素含有率
 ・ボロン当量
 ・(U+Pu+Am241)含有率
 ・O/M比
 ・プルトニウム均一度
<性状に関わる検査項目>
 ・核分裂性プルトニウム含有率
 ・全不純物総量
 ・蒸発性不純物
 ・介在物
 ・結晶粒径
 ・空孔分布
 ・熱的安定性
<その他検査項目>
 ・外観
 ・寸法(直径)
 ・密度
<その他検査項目>
 ・プルトニウム含有率識別マーク
 ・ペレット高さ
 ・端面形状
 ・端面直角度


(09/09/09UP)