9月27日関電交渉報告
プール臨界事故の危険性増大−基準を緩和しても安全余裕わずか0.3%
国に提出したリラッキング申請書には臨界安全性の評価が記載されていない


 9月27日、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。関電本店で午後6時から約3時間。市民側は約20名が参加し、関電からは広報部員3名が出席した。使用済燃料プールの臨界安全性等、事前に提出していた4つの質問書を基に交渉した。ポイントを絞って簡単に報告する。

◆関電は国に提出したリラッキング申請書に臨界安全性の評価を記載していない

 関電は高浜3・4号機使用済燃料プールのリラッキングについて、2003年7月28日付で設置変更許可申請書を国に提出している。リラッキングとは、集合体を入れるラックの間隔を詰めて貯蔵容量の増強をはかることである。そのため、臨界に至ることがないことを確認する必要がある。大飯3・4号機(変更申請:1997年8月1日)や美浜3号機(変更申請:1998年2月3日)のリラッキング時には、未臨界性の解析条件やその結果としての中性子増倍率を申請書に明記している。ところが、2003年に出した高浜3・4号の変更申請には、直接の変更点であるラック寸法など事実に関する記載がなく、それゆえ解析条件の変更点やさらに結果の記載もない。
 9月3日付の質問書ではこの問題を聞いている。解析結果について関電は、「増倍率はウラン燃料で0.967」であると回答した。なぜ申請書に記載しなかったのか聞くと、「解析条件と結果については、安全審査の中で原子力安全・保安院に説明した」という回答に終始した。大飯や美浜では書いていたではないかと追及すると、「大飯や美浜は申請書に詳細に記載したが、申請書には解析条件や結果を記載する必要はなく、大飯や美浜で実績があったから審査の中で説明するだけで十分なのだ」とした。その時の説明資料は公開できるのか聞くと、「商業機密で公開できない」と言う。申請書は国のみならず、一般市民もそれに基づいて安全を確認できるようなものとして公開されているはずだ。何を変更したのかという基本的な記載すらないのでは、私たちはどのように安全を確認すればよいのかと追及すると、関電は答えられなくなった。

◆リラッキング等で増大する臨界事故の危険。基準を緩和しても安全余裕はわずか0.3%

 リラッキング等によって中性子増倍率は増大している。2010年1月27日の保安院資料は、高燃焼度燃料の場合の高浜3・4号プールの増倍率は0.977としている。一方、臨界を防止するための増倍率の基準値は当初0.95であったが、国に基準がないのを良いことに、関電は0.98へと緩和している(右図)。9月22日付の質問書では、基準値を実態が超えるようになったから、基準を緩和したのではないのか、また、増倍率0.977では安全余裕0.3%とわずかである。これで安全性が本当に保たれるのかどうか聞いている。
 これに対して関電は、「基準は米国のANSI/ANS-57.2を参考にして決めたものだ」とした。その上で、「同規格では0.95より大きい値を採用する場合は、解析の不確定さを詳細に評価することが求められており、ラック製作公差などの不確定性を精密に解析したので0.98を採用したのだ」と説明した。他の電力会社、東京電力や

中国電力などは現在も0.95を採用していることを指摘すると、「BWRでの臨界評価は大雑把で、私たちはもっと詳細に解析している」とまで言った。参加者から、リラッキングというより危険なことを安全側に立って詳細に検討するというのであれば、逆により厳しい基準を採るのが当然ではないかという声が挙がった。
 緩和した基準に対しても0.977はぎりぎりである。地震や事故の場合、臨界事故に至る危険性がないとは言い切れない。「純水で満たされるという保守的な条件で解析をやっている。正味の安全余裕はもっとある」と関電は何度も繰り返した。だが、プール水大量漏えいの場合、ホウ酸なしの水を入れることがあり得る。それも勘案して純水条件で解析しているはずだ。こんなプールに使用済MOXを超長期保管することは非常に危険だ。MOX装荷は中止すべきだ。

◆奇妙なことに、高浜4号機は4体だけで来年定検で装荷を予定

 関電は昨年8月、自主検査で不合格にしたため高浜4号用の1回目製造分8体を4体に減らしている。ところが、2010年1月26日に出した第2回製造分の輸入燃料体検査申請書では、「別途製造の4体分」が高浜3号機用とされている。9月11日付質問で理由を聞いた。
 関電は、「第1回製造分として体数を変更したのは高浜4号機ですが、『別途製造することとしていた4体』については何号機用と事前に決めておりません」と奇妙な答えをした。参加者からは「どの原発で使用するのか決めていなかったのか」と厳しく追及された。また関電は、「高浜3号機については、8体、16体、4体と装荷が可能となるように、また、高浜4号機については4体、16体と装荷が可能となるように準備しておく計画としているためです」答えたが、これもまた奇妙だ。関電のこれまでのプレス発表や、設置変更許可申請書で想定して装荷パターンは、8体、16体、16体という順で装荷し、合計40体となっている。回答では、高浜3号機の3回目の装荷は16体ではなく4体に、高浜4号機の1回目は8体ではなく4体になるという。明らかに想定外のことだ。その理由は答えなかったが、昨年に関電が自主的に廃棄にした4体の扱いに関係がある。4体の製造・輸送は、来年6月予定の高浜4号の定検に間に合わない。高浜4号機の再来年の定検まで待てば1回目に8体装荷となるが、それでは来年からのプルサーマル実施ができない。とにかく来年実施という、当初の予定を優先して、4体装荷という奇妙な方式を選ばざるを得なかったようだ。

◆メロックスに言われるまで故障が頻発していたことを知らずに製造を行っていた?

 関電は昨年8月、自主検査で不合格にしたため高浜4号用の1回目製造分8体を4体に減らしている。ところが、2010年1月26日に出した第2回製造分の輸入燃料体検査申請書では、「別途製造の4体分」が高浜3号機用とされている。9月11日付質問で理由を聞いた。
 関電は8月31日、1月から6月にかけ、メロックス工場で複数の材料取扱設備の故障が発生したことに伴い、第2回製造分の36体を20体と16体に分割して製造・検査することにしたと公表した。ところが、関電は4月6日から製造を開始しており、それに先だって社員を派遣していたはずである。9月3日付の質問書は、設備の故障が断続的に発生していることを知りながら、MOXの製造を行ったのではないかと聞いている。関電は、「故障した状態で製造したわけでないから安全性に問題ない」とした。故障を知ったのはいつかと追及すると「社員を派遣したのは3月下旬、社員が故障を把握していた」という。しかし、いつの時点で知ったのか繰り返し確認を求めても、「答えられない」の一点張り。工程変更を告げられたのが8月17日で、故障について最初に国に報告したのも8月17日だという。本当は8月17日まで故障の発生も知らなかったのではいのかと聞くと答えられなくなった。社員を派遣して品質保証体制をしっかり監視していると言いながら、メロックス社から言われるまで知らなかったのではないか。最後に、分割して申請を行うのか聞くと、20体が完成した時点で補正申請を行うということだった。スケジュールを優先し、20体分だけ先行して輸送を行う可能性が高いことが明らかになった。


(10/10/04UP)