9月10日 関電交渉報告
アレバ・メロックス社製の高浜原発用MOXペレット不良品製造問題

九電MOX燃料にも不良品が混ざっている可能性が濃厚
九電は、不良品がないかを確認して、結果を公表せよ
「詳細データを要求したがアレバ・メロックス社に提出を拒否された」
「MOXペレット4体分すべて(約40万個)が不良品だった」−製品の25%もが不良品
「想定理由は聞いているが確定されていないため、改善策は確定していない」
同じことが繰り返される可能性がある→「その場合は、また不採用(廃棄)にすればいい」


2009年9月14日 美浜の会

 9月10日、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。関電本店で、午後6時から約2時間。関電からは広報3名、市民は約20名が参加した。事前に提出していた質問及び要望書「高浜原発用のMOX燃料ペレットで不良品が製造されたことに関して BNFL事件の教訓を踏まえて どの検査項目で不良品となったのか等すべての情報を公開するよう求めます」(8月26日付)を基に進めた。
 冒頭、不採用とした4体分のペレットについて、どのような自主検査項目で目標範囲に収まらなかったのかなど具体的データの公表を要望した。

 交渉は、関電が8月19日に、アレバ・メロック社で製造している高浜原発用のMOXペレットで不良品が出たため4体分は不採用にしたとプレス発表した問題についてであった。
 参加した誰もが驚いた回答は、「燃料集合体16体の1/4にあたる4体分のペレットすべて(約40万個)が不適格」と何食わぬ顔で答えたことである。これほど大量のペレットが不良品であるのにもかかわらず、「メロック社から想定原因は聞いている。内容は機密事項」と答える。「想定原因」だけなら、改善策や再発防止策も確定していないではないかと追及すると、そのことを認める。それでは、今後再び不良品ペレットが作られるのではないかとさらに追及すると、その可能性を認めたうえ「その時は今回と同じように不採用にする」とまで回答した。
 他方、アレバ・メロックス社は、25%もの不良ペレットを製造したのに、「これまでの経験に基づき、当該MOXペレットは採用可能」と主張したという。「これまでの経験」とは、要するに製造実績である。つまり、今回のような不良品ペレットも採用してきたと言える。
 燃料装荷が直前の九電・玄海原発のMOXペレットもメロックス社製である。玄海原発でも不良品ペレットが混ざっている可能性が浮上した。九電は、不良品がないかを確認し、結果を公表するべきである。
 以下、主要な問題に限って報告する。

「国や福井県、高浜町には不採用にした検査項目を知らせている。」
(※1)
 不合格としたのは自主検査7項目中のどの検査項目かと質問をしていた。回答は、「具体的な検査項目やデータについてはメロックス社の製造に関する機密事項であり、当社は契約上の守秘義務を負っているためご容赦を」と。予想どおりである。しかし、福井県は「どの検査項目で不良品となったかは関電から聞いている」(9月8日福井県への申し入れでの原子力安全対策課長の返答)とわれわれに答えている。県には知らせることができるのに市民にはなぜ教えられないのかと追及。関電は、「機密事項のため公開はできないが、規制当局や行政当局に具体的内容を伝えることはメロック社から了解を得ている。」と回答した。また、高浜町にも知らせたと答えた。(※1)

「16体の1/4に相当するペレット(約40万個)すべてが不良品」

 不良ペレットが判明したのは、燃料棒や燃料集合体に組入れられる前かと質問していた。関電は、「集合体の前」と回答。さらに、「ペレット全部」が不良品と答える。これにはびっくり。そこで「16体の1/4に相当する4体分、約40万個のペレットすべてが不良品」ということかと確認するとすんなりと認める。非常に多数のペレットが不合格なのにその検査項目も答えられないのかと声が飛ぶ。「機密事項」をたてに「答えられないものは答えられない」と関電。

「不良品の検査記録データを追加要求したがメロック社に拒否された」
 不合格となった4体分のペレットの検査データを関電は持っているのかどうか質問していた。
初めは「当該検査の結果はメロックス社より入手している」と回答。より詳細なデータの提供は拒否されたのではないかと質すと、「メロックス社に対してより詳細な追加データを請求し、補足データが提供された。それだけでは不十分なのでさらなる追加データを請求したが、追加データは提供できないと言われ、それで不採用にした」と回答。これには、交渉参加者から、「自分の仕事の経験上では、客にデータを出せといわれて出さなければ、契約を打ち切られる。そんな会社とは契約するな」と怒りの発言が上がった。ペレットを使用する関電が、品質保証に係るデータの提供を要求しても、それを拒否され、そのことに甘んじている。結局、メロックス社の言いなりではないか。
 そもそも各検査項目の許容範囲は契約時に合意しているはずである。その範囲を外れた製品が作られ、その詳細データを要求してもメロックス社に拒否されている。これでは、品質保証体制が確立しているとは到底いえない。

原因は確定されていない → 改善策も確定されず
 関電は不良品の原因について、「メロックス社から想定理由は聞いているが、内容は守秘義務」と回答。また、「原因については、『メロックス社側でほぼ推定し改善策を講じていると聞いているが、十分な情報を得ていない』と説明するにとどまった」(福井新聞)との新聞記事の内容を基本的に認めた。「想定原因」だけでは、改善策や再発防止策は立てられるはずがない、このことを認めた。そうすると、同じ工場で製造すれば今後再び不良品ペレットが作られるのではないかとさらに追及。関電は、その可能性を認めたうえ「その時は今回と同じように不採用にする」とまで回答した。全く無責任だ。安全性をないがしろにしている。

「これまでの経験に基づき、当該ペレットは採用可能」(メロックス社)
 九電MOXに不良品ペレット混入の可能性が濃厚
 関電が不採用にしたペレットに対して、メロックス社は「これまでの経験に基づき、当該ペレットはMOX燃料として採用が可能」と主張したと関電はプレス発表している。そこで、「これまでの経験」とはなにかを質問していた。
 関電は、「これまでの経験とは、メロックス社がこれまで数多くのペレットを製造する中で蓄積されてきた知見やデータに基づくものである。他の顧客に関することは承知していない」と回答した。つまり、メロックス社は、これまでの数多くの製造実績に基づいて「(今回の不良ペレットでも)採用可能」と主張したということになる。これは、目標値をはみ出したペレットでも使用可能として実際に採用されている可能性を示している。MOX燃料装荷直前の九電・玄海原発のMOXペレットもメロックス社製である。そのため、不良品が混ざっている可能性が濃厚である。九電は、不良品があるかどうかを調査し、その結果を公表しなければならない。

データ公開の重要性というBNFL事件の教訓を認めず
 BNFL事件の教訓からすべてのデータを公開して安全性を立証すべきではないかと質していた。関電は、「BNFL事件ではデータねつ造があったから具体的データを公表した。今回は適切に品質保証が機能しているので公開しない」と回答。BNFL事件の教訓は、品質保証が機能しているかどうかを勝手に判断するべきではないということだ。当時関電は、高浜3号機にはデータねつ造があったが、4号機にねつ造はないと強調していた。しかし、ペレットの具体的な情報が公開されたので、4号機でのねつ造が明らかになった。データ公開の重要性こそがBNFL事件の教訓である。関電は、この教訓を生かし、すべてのデータを公開するべきだ。

上記のほかの交渉内容は次の通り。

・目標値の定義

 「目標値の範囲におさまらなかった測定値」があったことで不良品としているので、「目標値」とは何かを質問していた。関電は、「目標値の定義は、目標値の範囲内に入っていれば無条件に合格。目標値を外れた場合は、その影響を評価して使用可能かどうかを判断する性質のもので、制限値ではない」と回答した。この目標値の定義に照らせば、約40万個のペレットが目標値を満たしていなかっただけでなく、目標値を超えた度合いが相当大きかった可能性が高い。
 事実関電は、不採用の4体について、「品質が確保されているかどうか判断できないから不採用」にしたと答えた。

・不合格の4体と合格の12体は、別のロットで製造。
 合格した12体と不合格の4体の違いを「バッチが違うのか」と質問していた。関電は、「通常、ロットという表現をしていますので、ロットというふうに修正させていただきますと、別のロットとして製造されたもの」と回答した。1ロットから何個のペレットが作られるのかについては「製造上の機密事項」で回答できないとした。なお、バッチとロットの違いについて後日返答となった。(※2)

・費用負担の協議は今後
 不合格4体分の費用をどちらが持つのかについては、「今後メロックス社と協議」と回答。

 交渉を通じて、参加者は関電MOXへの不安感と不信感を一層強くした。
 玄海原発のペレットに不良品が混ざっていないのか、明らかにさせねばならない。


 [注]
 ※1:その後、関電からの電話回答で、高浜町には検査項目は知らせていないと訂正があった。
 ※2:その後電話で、メロックス社にはバッチという概念はないと回答があった。

(09/09/14UP)
(09/09/16 注を追加)