大飯3号機の応力腐食割れ等に関する
質  問  書


関西電力(株)社長 森 詳介 様

2008年7月28日

1.大飯3号機の原子炉容器Aループ出口管台溶接部(インコネル600製)での応力腐食割れについて
 大飯3号機の圧力容器出口管台溶接部で深刻な応力腐食割れが見つかっています。貴社は当初、「傷の深さが評価できない非常に浅いもの」と発表していました(4月17日付プレス)。しかし実際には、傷の深さは必要肉厚の70oを割り込んでいました。貴社は、研削を進めるために必要肉厚を64oに変更して削っていきました。それでもまだ傷は現れ、再度必要肉厚を53oに変更して研削を進めようとしています。

(1)貴社は4月17日に、「超音波探傷検査(UT)を行った結果、傷の深さが評価できない非常に浅いものと考えられる信号指示でした」と発表しました。このことはUTの検査精度が全くあてにならないことを示しているのではないですか。UTでは傷の深さがどれくらいなら確認できるのですか。
 今回、深さ測定ができなかった原因については、ただいま調査中でございます。しかしながら、深さ測定はできなかったんですけど、傷の存在するということは検知できております。もともと従来のSGの管台のほうで得られた知見としましては、UTのサイジングですね、深さ方向は5ミリ程度と考えています。今まで深さ測定といった事例では、測定結果と実績がほぼ対応してて、問題ないと思っています。ですから今回、サイジングできなかったことにつきましては、原因については、現時点ではですね、確定的なことは申し上げられませんけれども、今後、今回のことにつき分析していきまして、さらなるUT精度の向上に向けて取り組んでいきたいというふうに思っています。

(2)インコネル600製の管台では、これまでに美浜2号機等の蒸気発生器入口管台や大飯3号機の原子炉容器上蓋管台でも応力腐食割れが多数確認されています。圧力容器出口管台部での応力腐食割れの傷の進展速度をどのように評価していたのですか。
 大飯3号機はですね、前回、8回の定検なんですけれども、傷というのは確認されていなかったんですけれども、仮に深さ3ミリの傷があると仮定しまして、その条件のもとで亀裂を進展させるような評価を実施した結果、深さ約17ミリとなるような結果になっています。

(3)必要肉厚について
[1]当初の必要肉厚70oは、どのような基準で決めたのですか。
  建設時の工認の必要板厚は、出口管台のセーフエンドの最も薄いところの板厚の70ミリを設定しています。強度評価を行って許容値を満足するというのを確認しました。建設時の技術基準というのは、告示501号発電用原子力設備に関する構造等の技術基準です。

[2]必要肉厚を70oから64oに変更しても大丈夫だという根拠は何ですか。
  工事計画の届出書というのは、全周を一様にですね、研削、けずりましたというふうに仮定して二次元の計算モデルで解析しました。

[3]必要肉厚を64oから53oに変更しても大丈夫だという根拠は何ですか。
  それに対してその後53ミリの方の工事計画届出書の方は、実際に削っているのは全周ではなくて、部分的のところ、溶接のところです。そういう局所的な研削というのを模擬した三次元の計算モデルで解析を行っています。いずれの計算モデルも、技術基準に適合して構造健全性を確保するという観点では足りなくて安全上問題になるというものではないと思っています。板厚の53ミリまで研削作業を進めるに当たっては、事業者が技術基準に適合していることを確認してプラントの安全性に問題ないことを確認した上で、工事計画書の届出を国のほうに行って、国によって技術基準の適合性の確認をしていただいて承認いただいて、その結果を踏まえて研削作業を開始しています。

[4]今回貴社は、傷の深さに合わせて必要肉厚を決めるかのように、必要肉厚を薄く変更する手法をとりました。これまでに、このようなやり方をしたことはあるのですか。
  電事法(電気事業法)に基づくそういう手続きをして対応したという例は当社ではありません。今回が初めてです。

[5]必要肉厚の変更は、法的にはどのような法令等にのっとって行ったのですか。
  電気事業法の48条に基づいて工事計画の届出をすることになっています。

(4)国の法律では、配管等に傷が見つかれば補修や取替を行い、必要肉厚を満足していることが確認されて運転が可能となります。
 当該部位は原子炉容器の一部でもあり放射線量が極めて高い部位です。そのため取替は不可能と考えられます。取替不可能な部位で必要肉厚を下回った場合、運転できないのではないですか。
  今53ミリという板厚の範囲内で傷を除去していまして、当社としてはまず傷を取ってしまうことが第一と考えています。ですから取った後の対応というのは、研削結果を踏まえて検討したいと思っています。ですから今の段階で、どうするこうするというのは検討していないというのが答えにさせていただきたいと思います。

(5)他の原発では当該部位を検査しているのですか。検査していない場合は、すぐに検査すべきではないですか。それぞれの原発について検査履歴と検査予定を示してください。
 従来から全部のプラントですね、機械学会の維持規格でですね、保安院さんから文書が出て、平成17年の6月にですね、出てます。「加圧水型軽水炉の一次冷却材圧力バウンダリにおけるNi基合金使用部位に係る検査等について」というNISA文書が出ていまして、これに基づいて供用期間中検査をやっています。ウォータージェットピーニングをうつ前の確認をしていないプラントはどれですかというと、高浜の2号機と、高浜の4号機と、大飯の4号機です。していないものについては、次回定検で、大飯の4号機ですと、この9月頃からです。要するに次の定検からやろうと思っています。高浜ですと、今月末からです。大飯の4号機とかですと、来月の上旬から始まるような。すいません、ごめんなさい、やったものについての日付については別途ご連絡ということで。正確にいつ何月というのはわからないんですが、平成18年から順次ウォータージェッエトピーニングというのを実施してきてて、ウォータージェッエトピーニングを施工しているのは美浜の1号機と美浜の2号機と3号機と、高浜の1号機と高浜3号機と大飯1号機、2号機、それと今回見た大飯3号機がウォータージェッエトピーニングを施工しているということです。その施工する前には当然傷の確認をしていますから、大飯3号機と同様の傷は見つかっていないということです。平成18年度から順次実施しているのですが、ちょっと順番が平成18年の何月なのか、平成19年の何月なのかというのは・・・平成18年から順番にやってまして、まだできていないのは高浜2号と4号と、大飯の4号です。ちなみに、高浜2号、4号、大飯の4号はウォータージェッエトピーニングの施工というのはやっていませんけれども、その前に、超音波探傷検査というのをある頻度でやってますから、高浜2号については平成15年の定期検査で確認しておりますし、高浜4号については平成12年の検査で管台溶接部の確認をしています。大飯4号については、平成17年度検査で確認しています。いずれもその時点での確認では、傷は確認されておりません。

2.AREVA NP社からのウラン新燃料輸送等について
(1)貴社は、今年度第3四半期(10〜12月)に、AREVA NP社の米国工場からウラン新燃料の輸送を計画しています。
[1]なぜAREVA NP社からウラン新燃料を購入するのですか。
  成型加工先というのを多様化して安定したウラン燃料が調達する、できるというようにするために、国内メーカーだけでなく海外メーカーからウラン燃料を調達しているということです。

[2]このAREVA NP社からウラン新燃料を買う契約は何年何月頃に決まったのですか。
 これにつきましては、契約上守秘義務がありますので公表は差し控えさせていただきたいと思います。

[3]なぜ高浜3号機用なのですか。
 AREVAがですね標準的な仕様で製造実績が豊富な17×17タイプの燃料の、高浜3・4号機向けの燃料というのを開発しているからということです。

[4]MOX燃料をAREVA社で製造してもらうことと関係があるのですか。
 MOX燃料の加工とは直接は関係ありません。

(2)最近に限ると、これまで3回AREVA NP社の前身Framatom ANC社からウラン新燃料を輸入しています。全て高浜4号機用です。燃料の到着日は下記のとおりです。
   ・2004(H16)年4月22日
   ・2005(H17)年9月27日
   ・2006(H18)年3月22日
[1]なぜFramatom ANC社からウラン新燃料を購入するのですか。
  発注先、加工先を多様化してウラン燃料を調達するという目的で、国内メーカーだけでなくて、それに加えて海外メーカーさんから調達しているということです。

[2]このFramatom ANC社からウラン新燃料を買う契約は何年何月頃に決まったのですか。上記3回は、同一の契約ですか、個々の契約ですか。
 契約上守秘義務なので、ご容赦願います。3回は個々の契約です。

[3]なぜ高浜4号機用なのですか。
  当社の標準的な仕様で、製造実績がたくさんあるということで17×17の高浜3・4号機用のをお願いしているということです。

(3)上記3回以外で、1999年以降、海外からウラン新燃料を輸送したことはありますか。あった場合、年月日、輸送元の会社名、搬入先の原発名を示してください。
  高浜3号の新燃料集合体をアメリカのシーメンス・パワー社、Framatom ANC社の前身から輸入していて、99年の6月30日に同発電所で受入しています。(同発電所は)高浜3号機です。

3.フランスでのAREVA社の子会社によるウラン溶液流出事故等に関して
 フランスでは、7月に入ってトリカスタン核施設でウラン溶液が流出する事故が起こり周辺の川が汚染され、地下水の使用や川での水泳等が禁止されました。また18日には、ドローム県の核燃料工場で配管が破損しウラン数百グラムを含む核廃棄物が周囲に漏えいしたと、フランス原子力安全庁が発表しました。この配管は数年前に損傷していましたが放置されてきました。この2件の事故はAREVA社の子会社が引き起こしたものです。フランス政府は、全ての原子力施設の点検と地下水の検査を開始すると発表しており、今後新たな事故や汚染が明らかになる可能性が高まっています。
(1)貴社がMOX契約を結んでいるAREVA社に対して、これらの事故について問い合わせ等を行っていますか。
  トリカスタンの施設でウラン含有溶液が環境に放出されたことと、ドローム県の核燃料工場での配管破損について事実関係を確認しまして、特に環境などへの影響はなかったというふうに聞いています。

(2)これらの事故について、親会社であるAREVA社にも責任があると思われますが、どうですか。
  フランスの国内で発生した放射性溶液の漏洩の責任関係については、当社はお答えする立場にないということで控えさせていただきたいと思います。

2008年7月28日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(08/08/04UP)