2月14日の交渉での1月23日付質問への回答

1.事故・トラブル増加による「緊急非常事態」について
 貴社の原子力事業本部の肥田善雄副本部長は、昨年12月25日の福井県原子力安全専門委員会の冒頭で、事故やトラブルが多発している状況について、「緊急非常事態だと考えている。県からは厳重注意も受けており、徹底した水平展開で未然に防止したい」と述べました。
 
(1)「緊急非常事態」とはどういう意味ですか。
 当時、本年度既に19件の異常事象を発生させたことを当社として緊急事態と考えており、今回過去5年間のトラブル全件についてその原因をプラント毎にまで掘り下げて分析した結果に基づき、全プラントに共通して実施する対策のほか発電所毎、号機毎に実施していく対策を取りまとめたものである。

(2)「緊急非常事態」という認識は現在も続いているのですか。
 本年度既に19件の異常事象を発生させたことを当社として緊急事態と考えており、今回過去5年間のトラブル全件について、その原因をプラント毎にまで掘り下げて分析した結果に基づき全プラントに共通して実施する対策のほか発電所毎、号機毎に実施していく対策を取りまとめたものである。
 トラブルの低減対策を進める現在は、緊急事態の認識が重要ではなく、トラブルの低減を目指す取組みが重要であると考えています。

(3)「緊急非常事態」は終了したのですか。終了したとすれば何故ですか、そしていつですか。
 本年度既に19件の異常事象を発生させたことを当社として緊急事態と考えており、今回過去5年間のトラブル全件について、その原因をプラント毎にまで掘り下げて分析した結果に基づき全プラントに共通して実施する対策のほか発電所毎、号機毎に実施していく対策を取りまとめたものである。
 トラブルの低減対策を進める現在は、緊急事態の認識が重要ではなく、トラブルの低減を目指す取組みが重要であると考えています。

2.「トラブル低減に向けた取り組み計画」の位置づけについて
 貴社は1月15日に、「トラブル低減に向けた取り組み計画」(以下「取り組み計画」という)を福井県に提出し公表しました。

(1)福井県知事は昨年11月の議会の答弁で、プルサーマル再開に関して県民の安心と合意を得るために4項目を提示しました。今回の貴社の「取り組み計画」は、4項目の一つである「トラブル低減対策」に該当するものですか。
 1月15日は、知事からご示唆いただきました4項目のうち、トラブル低減に向けた取組み計画についての方針と方向性を取りまとめ、報告を行ったものである。1月30日に4項目全ての取組みについて今後の具体的な実施計画を作成するとともに、迅速かつ強力に取り組むというスタンスについても取りまとめて報告しました。
 「4項目の一つであるトラブル対策に該当するのですか」との質問には、はいそうですと答えさせていただきます。

(2)貴社は昨年12月12日の交渉で、「プルサーマル再開と4項目への取り組みは別のもの」と明言しました。現在も同じ認識ですか。
 知事からご示唆いただきました4項目は、全社をあげて安全文化の再構築に取り組んでいる当社として、まさに常日頃から心に留める努力をしていかなければならない内容であると考えており、当然やるべきことと考えています。知事からご示唆いただいた4項目について、全体の取りまとめを行ったものであるが、プルサーマルの準備再開にあたっては、それだけではなく、総合的な観点から判断したものであります。

3.「取り組み計画」の内容について
(1)福井県知事が「最近のトラブル増加の軽減対策」を要求したのに対し、貴社の「取り組み計画」は5年間(2003〜2007年)のトラブル156件を対象にしています。しかし、知事は「最近」のトラブルを問題にしているのです。なぜ今年度のトラブルに特に焦点を当てなかったのですか。
 トラブルの傾向分析を行い、プラントの共通要因を比較分析するために必要となるデータをそろえるために、今年度も含め過去5年間の156件にのぼるデータを分析したものである。

(2)今年度のトラブルに焦点をあてていない貴社の「取り組み計画」は、福井県知事が要求した「最近のトラブル増加に対する対策」になっていないのではありませんか。
 今年度のトラブルを含め過去5年間、平成15年から19年度に発生したトラブルの全て、法令に基づく報告事項とか安全協定に基づく報告のほか、それにいたらない軽微な事象も含めて分析対象としています。プラントの傾向分析を行い、複数のプラントの共通要因を深堀分析するために、必要となるデータをそろえるために、今年度も含め過去5年間の156件にのぼるデータを分析したものである。

(3)156件のトラブルの内、美浜3号機事故はどの分類に入るのですか。また、昨年11月の大飯2号機の2次系配管の大幅減肉と12月の湿分分離加熱器空気抜き管の穴あきはどの分類に入るのですか。
 美浜3号機の2次系配管破損事故は、運用管理面の肉厚管理不良に入ります。大飯2号機主給水配管曲がり部も運用管理面の肉厚管理不良に分類しています。美浜1号機の第2段湿分分離加熱器空気抜き管からのわずかな空気漏れに関しましては設備面の2次系配管減肉に分類しております。

(4)1月16日の福井県原子力安全専門委員会では、委員から「水平展開の突っ込み不足によるトラブルはなかったのか。水平展開の立て方に問題はないのか」「大飯2号機の配管減肉は大飯1号機の配管減肉の水平展開不足ではないのか」との厳しい意見が出されました。貴社の「要因分析」に、「水平展開不足」が入っていないのはなぜですか。
 平成19年度8月以降、運用管理面のトラブルが増加傾向となっており、その理由としては、これまでの対応では直接要因への対策、水平展開が中心であり、背後要因の分析が十分でなかった点があるとの評価に至りました。よって1月30日の報告においては、発電所号機ごとの特徴を踏まえながら、発生頻度の高いものに重点を置き、人的背後要因を抽出することにより抜本的かつ実効的な対策を抽出した。
 1月16日の福井県安全専門員会においては、方針や方向性については妥当との評価を頂いておりますが、水平展開の不備によるトラブルがなかったかを検証実施するようにとのご指導を頂きましたので、水平展開が適切に実施されているか、分析検証を行い、水平展開が不足していたと評価される事項について、追加対策を実施し、同種同類のトラブルを未然に防止する予定です。

(5)今年度初めて、蒸気発生器入口管台でのひび割れが確認されました。このひび割れ「異常事象」はどの分類に入るのですか。ひび割れの詳細な原因調査結果はまだ出ていません。それでも、「トラブルは低減できる」と考えているのですか。
 蒸気発生器入口管台溶接部での傷の確認については、資料検討時には原因調査結果が未だ出ておりませんので、今回の分析ではその他に分類しました。その後原因は運用管理面ではないことが判明したため、今後設備面の対策を実施していきます。

(6)貴社の原発では、2006年度には「異常事象」は7件と少なくなりましたが、今年度は既に19件に達しています。今年度に「異常事象」が増加した原因は何ですか。
 昨年8月以降運用管理面でのトラブルが増加している。このため、過去5年間の詳細分析を行い、原因の傾向分析を実施したところ、作業不良等に起因した運用管理面でのトラブルが多数を占めていた。さらに、その要因について深堀分析を実施した結果、作業段階の確認不足、し忘れ、し間違い等が大半であった。このことから、作業段階の確認不足、し忘れ、し間違い等若干気配り、配慮に欠けていたことが原因で発生したトラブルが増加していると分析している。このため今回の対策として、熟練技術者の確保や作業ノウハウの伝達等さらに踏み込んだ対策を採ることとした。

(7)貴社の「取り組み計画」では、トラブルの最大の原因を下請けの「し忘れ・し間違い」としています。今年度の「異常事象」で「し忘れ・し間違い」は何件ですか。その事象の内容を具体的に示してください。
 全プラントのトラブル要因を分析した結果、運用管理面のトラブルが全体の62%を占め、要因としては作業不良、補修計画不良、作業計画不良、運転不良の順でそれらが大半を占めている。深堀分析を実施したところ、作業不良については実作業時の確認に関するし忘れ、し間違い、予見考慮不足が大半を占めていた。
 発電所毎の要因分析を行った結果では、大飯発電所で実作業時の確認不足が、し忘れやし間違いが大半を占めている。今年度の異常事象に限れば、実作業時のし忘れ、し間違いは4件あり、以下の通りです。大飯1号機・Aの封水フィルター付近からの漏えい、大飯2号機・復水処理建屋における協力会社作業員の負傷、高浜3号機・Aの非常用ディーゼル発電機の運転上の制限の逸脱、高浜1号機・Aの非常用ディーゼル発電機の待機除外、以上の4件です。

(8)トラブル低減対策として、貴社の社員が「作業計画書の読み合わせに参加する」となっています。これによって、今年度の「異常事象」の何%が改善されるのですか。
 過去5年分の作業不良は23%、作業計画不良は10%です。これらをあわせて33%の対策であると考えています。

(9)このような「取り組み計画」ではプルサーマルを再開できないのではないですか。
 資源の乏しい我が国において、将来にわたりエネルギーを安定的に供給していくためには、プルサーマルは原子燃料サイクルを確立する上で不可欠であると考えております。

4.2003年の活断層調査について
 2003年に貴社は活断層調査(褶曲を含む)を行いました。それによって美浜・高浜・大飯の3原発の沖合いで19本の活断層が見つかったとされています。

(1)当時そのことを公表しなかったのはなぜですか。
 新たに評価した活断層について、発電所に与える影響を評価した結果、敷地発電所からの距離や活断層の長さから、それまで基準地震動策定において考慮した活断層より敷地に与える影響が小さく、発電所の耐震安全性評価に問題がないことを確認したことから公表の必要はないと判断した。

(2)19本の活断層について資料(図面、活断層の長さ、原発からの距離、地震動評価)を公開してください。
 <4枚つづりの資料2部を配布>

(3)現在行っているバックチェックで、この新たな活断層も再評価するのですか。
 新耐震指針に照らした耐震安全性評価(バックチェック)では、2003年に新たに評価した活断層についても再評価を行います。

5.六ヶ所再処理工場での貴社分のガラス固化体について
 六ヶ所再処理工場では11月からガラス固化体の製造を開始しています。

(1)貴社は海外からの返還ガラス固化体については、日本原燃に保管料を払っていますが、六ヶ所再処理工場で製造されるガラス固化体についても保管料を払うのですか。払う場合、1本当たりいくらですか。
 日本原燃との契約に基づき、ガラス固化体の保管を含む再処理工場の操業に要する費用を料金として支払っているが、ガラス固化体1体あたりの保管料として料金を支払っているわけではない。

(2)現時点で、貴社の使用済み核燃料は何トン・何体がせん断されたのですか。
 当社の約130トン、燃料集合体290体分の使用済み燃料のせん断が完了したと聞いています。

(3)これまでに生み出された貴社分の高レベル濃縮廃液の量はいくらですか。
 日本原燃より高レベル濃縮廃液の量について連絡を受けるような契約にはなっていないため、お示しすることができません。

(4)その貴社の高レベル廃液で製造されたガラス固化体は何本ですか。
 現段階ではガラス固化体の「配賦」(注・わり当て分のこと)はされていません。

(5)現在残っている高レベル濃縮廃液の量はいくらですか。
 (3)と同じ。日本原燃より高レベル濃縮廃液の量について連絡を受けるような契約にはなっていないため、お示しすることができません。

(6)六ヶ所再処理工場で製品となった貴社分のプルトニウムとウランは、現時点でそれぞれどれくらいですか。
 ウランやプルトニウムの割り当てにかかる通知はなされていないため、お示しすることはできません。

 注)ガラス固化体については、本数なのか何トン分のガラス固化体という言い方になるのか分からないが、何らかの形でガラス固化体の通知がくることになっている。
 プルトニウムとウランについてはある数量が通知される予定になっている。

(08/02/20UP)