プルサーマル再開発言、美浜2号機の蒸気発生器管台の傷に関する
追加質問書回答(12月12日)


関西電力社長 森 詳介 様

2007年12月4日

1.プルサーマル再開発言について 
 11月26日の定例記者会見で森社長は、高浜3・4号機でのプルサーマル再開について言及し、福井県議会の12月議会で再開同意を得られれば、MOX燃料製造の正式契約に進みたい旨を表明しました。
プルサーマル計画は、美浜3号機事故により中断しました。その後貴社は、「まずは、美浜3号機事故の再発防止に向けて全力で取り組む」、「現時点ではプルサーマル再開について言及できる段階にはない」と発言してきました。その後も、耐震安全性の問題など新たな問題が生じています。

(1)プルサーマル再開との関連で、下記の諸点に即して、回答してください。
 [1]大飯2号機の大幅な減肉が確認されたことは、貴社の美浜3号機事故後の「総点検」が極めてずさんであり、美浜3号機事故の教訓は未だ生かされていないことを示しているのではありませんか。
(答)美浜3号機事故の再発防止対策については、今年度は経営トップによる安全最優先の徹底、不適合分析評価に基づく再発防止対策の徹底など6つの重点課題に取り組むこととしており、先日の10月23日の原子力保全改革検証委員会では、トップの安全最優先の姿勢は明確であり、現場第一線にその価値観が浸透していることを確認した。協力会社とのコミュニケーションについても、自律的な改善活動が開始されているなどとの評価をいただいております。最近のトラブル事象については、徹底した原因究明をおこない、再発防止対策を検討し、その結果、美浜3号機事故の再発防止対策について充実が必要なものがあれば充実を図っていきたいと考えております。

 [2]貴社の原発では、今年度だけで既に20件もの事故やトラブルが頻発しています。美浜2号機の蒸気発生器管台入口の内表面で技術基準を上回る傷が確認されました。これは、インコネル600で予想外に早く傷が進展していることを意味しており、PWR原発全てに共通する深刻な問題です。重要な機器で劣化が進んでいる現実に対処することが、プルサーマルより優先するのではありませんか。
(答)安全の確保は一人一人が安全最優先の意識を持って確実に業務を遂行していくことがベースであり、引き続き現場第一線との対話活動などにより安全最優先の価値観の醸成に努めていきます。これらの取り組みを着実に実施することで、トラブルの再発防止を徹底し、原子力発電所の安全、安定に着実に務め、地元の皆様にご安心いただけるよう取り組んでいきます。なお、亀裂の発生時間については現在調査中でございます。

 [3]貴社の原発では運転開始から30年以上の原発が5基となり、老朽化が進んでいます。それにもかかわらず、定期検査の間隔を、現行の13ヶ月から18ヶ月、24ヶ月に延長しようとしています。これは、老朽原発の安全対策を念入りに行うことに反するのではありませんか。
(答)検査制度の見直しについては、事業者による安全性の確保をより一層向上させるために、検査のあり方に関する検討会や保守管理検討会で検討が進められております。一方、高経年化対策につきましては、運転開始以降30年を経過するまでに高経年化技術評価を行い、問題ないことを確認するとともに適切な追加保全策、技術開発課題等、その後の10年間程度の追加保全対策ですね、これを策定し、確実に実施している所です。今回の検査制度の改正は、プラントごとの特性に応じた検査、各プラントの設計やこれまでの運転データ等を考慮した保全プログラムの策定に移行することや、運転中の状態監視を強化することなどでより信頼性の高い保全活動を実現する仕組みとして安全確保の一層の向上、保全活動の品質向上を図ることが目的と理解しております。当社としても、新検査制度の内容が固まっていないので、現段階では何も決まっていないが、検査制度の改正の趣旨を踏まえ科学的知見や運転経験を考慮して各プラントの特性に応じて検討を行い、高経年化対策を含めた保全プログラムを策定することで、それぞれ適切な運転計画を設定していくことになると考えております。そうすることで自主保安の取り組みを一層強固なものにしていくつもりです。

 [4]貴社の耐震安全性に関するバックチェックについては、来年3月に中間報告を出し、最終的な報告は2009年9月となっています。耐震安全性のバックチェック評価の方が、プルサーマルより優先するのではありませんか。
(答)プルサーマル計画の準備作業の再開に向けた検討というものと耐震性とは直接の関係はないものと考えております。当社の原子力発電所の耐震安全性については、原子炉など重要な設備の耐震性に関しては、これまでも十分な余裕を有した設計、評価を行ってきているとともに、阪神大震災を経験していることから自主的に耐震裕度向上対策の計画を進め準備の整ったものから工事を実施しております。また現在、新指針に伴うバックチェックを当初の計画である平成21年12月の完了から3ヶ月前倒して取り組んでおり、現在は地質地盤調査に当たっている所であります。さらに今後、新潟県中越沖地震や能登半島地震から得られる知見は、このバックチェックに適切に反映することとしております。なお、実際のMOX燃料装荷までには時間を要するため、その際には耐震性の評価は完了していると考えております。

2.美浜2号機のA蒸気発生器管台での傷について

(1)1次冷却水による応力腐食割れがインコネル600で多発していることは従来から問題になっていたはずです。貴社の原発でも、2004年に大飯3号機の上蓋管台で貫通亀裂が発見され、続いて高浜1号機の炉内計装筒管台でもひび割れが見つかっています。

 [1]これまで美浜2号機の蒸気発生器管台の内側を検査しなかったのはなぜですか。
(答)過去に高浜1号機炉内計装筒管台、大飯3号機の上蓋管台等で亀裂が確認された事象を踏まえ、当該部位についてショットピーニングを用いた予防保全工法の確立、装置検証等を進めてまいりました。今般、実機に適用できる目途が立ったことから内表面の点検を行ったものでございます。

 [2]上蓋管台や炉底管台について貴社は、アレニウスの式等を用いて応力腐食割れの発生と進展予測を行っていました。今回見つかった傷は、何万時間で発生したことになるのですか。また、予測ではどうだったのですか。
(答)亀裂発生時間については現在調査中です。

(2)貴社は、高浜2、3、4号機、大飯4号機の4基について蒸気発生器管台の検査を順次実施するとしています。

 [1]この4基以外の原発全てについて、蒸気発生器管台の検査の実施時期とその結果を明らかにしてください。
(答)大飯1、3号機については点検を行い問題ないことを確認しております。大飯1号機は第21回定検で、平成18年の12月からの定期検査で確認をしております。大飯3号機につきましては第12回定期検査、平成18年9月から始まる定期検査で確認をしております。その他のユニットについてはインコネル690系の合金を用いているため点検の対象外としております。

 [2]現在定期検査中の高浜2号機以外の3基については至近の定検で検査するとのことですが、傷が存在する可能性は否定できません。なぜ即刻検査しないのですか。
(答)NISA文書、保安院からの行政指導文書でございますが、その中で、「蒸気発生器出入口管台溶接部の内表面の点検実施について」という指示文書に基づいて至近の定期検査にて点検を行うとともに運転中の漏洩監視を実施しております。なお、600系ニッケル基合金はオーステナイトステンレス鋼と同様に高い靱性を有していることから、直ちに安全上重大な影響を及ぼすものではありません。


2007年12月4日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(07/12/12UP)