関電の原発の耐震安全性に関する質問書
美浜原発は野坂断層:マグニチュード7.3に耐えられるのか


関西電力(株)社長 森 詳介 様

2007年8月23日

 新潟県中越沖地震が柏崎刈羽原発に与えた影響によって原発の耐震安全性は崩壊しました。関電の原発は地震に耐えられるのかとの懸念から、私たちは7月23日に貴社の原発を即刻止めるように申し入れ行い、それに対する見解を聞くために、8月10日に交渉を行いました。その際の回答を踏まえて質問します。

(1)耐震安全性について、「設計を超える地震が起きても、設計には機器の安全余裕があるから大丈夫」との見解は、関西電力の正式な見解ですか。
(答)平成19年新潟県中越沖地震により東京電力柏崎刈羽原子力発電所で設計を超える地震動が観測されたが、原子炉は安全に停止しており、その停止に至る経緯を含め原子力安全委員会からもIAEAの調査団からも、原子炉の安全を守るための重要な安全機能は維持されている旨、公表されております。設計で考慮している地震動条件は設計条件の一つであり、設備には相応の裕度が存在していると考えており、耐震実証試験などでも設計条件を超える加振力を与えても設備の安全性が確保されていることが確認されています。ただし、余裕が無限にあるわけではないのと同様に、地震動の大きさも有限であり余裕があるとの説明は現実的な知見の範囲内での一般論と申し上げているところでございます。どの程度の地震動を想定することが妥当であるか、また、それに対し設備の耐震安全性が維持できるかとの確認については、現在進めている耐震安全性評価の中で明らかにしていきたいと考えております。

(2)美浜原発の耐震安全性について
 [1]美浜原発の耐震安全性で考慮している活断層を具体的に示してください。
(答)考慮している主な活断層は、敦賀断層、甲楽城断層、三方断層、野坂断層、熊川断層、柳ヶ瀬断層や海域の活断層であります。
 [2]政府の地震調査研究推進本部が評価している野坂断層M7.3の地震によっても美浜原発の耐震安全性は保たれるのですか。
(答)政府の地震調査研究推進本部がおこなっている活断層評価は、地震防災計画の立案のためのものと考えているが、当社原子力発電所の耐震安全性評価を実施する上での一つの知見としてとらえている。そのため、当社ではその内容を精査した上で耐震安全性評価をおこなうことになる。当社は現在、海上音波探査を含む地質調査結果をもとに評価を実施しているところである。今後耐震安全性評価にあたっては、新たな知見が得られれば、適切に反映していきたいと考えています。

(3)柏崎刈羽原発で放射性物質が海洋と環境に放出されたことに関して
 「原子炉の安全にとって『止める、冷やす、閉じ込める』は機能した」との回答でした。
 [1]「原子炉」とは、原子力発電所のどの部分のことですか。
  原子炉圧力容器から放射性物質が出なかったことで、「閉じ込める」は機能したとの見解ですか。
(答)原子炉とは原子炉容器に装荷された燃料集合体で構成される炉心を中心とする原子炉容器内部全体を指しています。また、「閉じ込める」が機能したということは、想定を超える地震動を受けても原子炉冷却系統から冷却材が喪失する事故、通常LOCAと呼んでおりますけれども、発生しなかったこと、および「閉じ込める」機能の最終障壁である原子炉格納容器も異常がなかったこと等を踏まえて説明したものであります。
 [2]原子炉格納容器内にある使用済み燃料プールの(放射性物質を含む)水が海洋に放出されたことは、「閉じ込める」機能に該当しないとの見解ですか。
(答)「閉じ込める」機能については、さきほど説明した通り、原子炉格納容器内部全体を指しており、柏崎刈羽原子力発電所で使用済み燃料プールの水が海洋に放出されたことについては、直接的に指しているものではないものの、当社としては重く受けとめ、同様の事象が起こることがないよう、調査対策を実施していきたいと考えております。
 [3]「『一滴も放射性物質が出ない』とは言ってきていない」と発言されました。これは放射能の漏えいはありえるとの見解です。このことを広報誌やパンフレットなどのどこで、どのように表明しているのか具体的に示してください。
(答)原子力発電所の見学会等で使用しているパンフレットでは、原子力発電所の周辺で受ける年間の放射線量を0.001mSv未満としており、ゼロという説明はさせていただいておりません。

(4)周辺機器・設備に関して、「耐震クラス分けがあるので耐震クラスの低いものは大きい地震で壊れることは想定している」「B・Cクラスの機器・設備は壊れてもいい」との見解は、関電の正式な見解ですか。
(答)耐震設計は、国の規制にしたがって重要度に応じて設計していますが、低クラスの設備だからといって、設計基準ギリギリに設計しているわけではなく、基準を満たしつつ余裕を持たせるよう配慮しています。基準を超えたから壊れてもいいという考え方で設計しているわけではありません。また、耐震設計の配慮以外にも他の設計要件、内部圧力などでございますけれども、より、耐震基準以上の耐震性を有している場合が多く、低クラス機器が簡単に壊れることはないだろうと見込んでいます。しかし、基準を超えた条件では、壊れることはやむを得ないという認識でございます。

(5)政府の地震調査研究推進本部が行っている活断層評価は、「『地域防災計画』の立案のためのもの」と回答されました。地震調査研究推進本部の評価は、原発の耐震安全性評価とは無関係という見解ですか。
(答)政府の地震調査研究推進本部がおこなっている活断層評価は、当社の原子力発電所の耐震安全性評価を実施する上での一つの見解としてとらえており、決して無関係とは考えておりません。そのため、当社ではその内容を精査した上で耐震安全性評価をおこなうことにしております。なお当社は現在、地質調査結果をもとに評価を実施しているところであり、今後耐震安全性評価にあたっては、新たな知見が得られれば、適切に反映していきたいと考えております。

(6)「柏崎刈羽原発の解放基盤面は地下100m以深にあり、美浜原発は解放基盤面を建物のすぐ下においているので、美浜原発の最下階の床上での設計値(ガル)は、入力加速度405ガルに近い」との回答でした。美浜1号〜3号での最下階の設計値は何ガルですか。
(答)美浜1号機と2号機は400ガル、美浜3号機は405ガルでございます。

(7)従来の経験式(金井式)で震源を点に見ていることに関し、「地震断層が発電所の近傍になってくれば点として扱うことが妥当なのかどうかについて、近傍地震では技術的にはありえない」との見解でしたが、関電の正式な見解ですか。
 また、「従来から、1点からの近似式というような経験に基づくものだけが使われているわけではなく、断層モデルは使われている」との回答ですが、美浜発電所の設置許可申請で断層モデルも使用して限界地震動(S2)を策定したのですか。
(答)地震動評価に用いる経験式は距離と規模をパラメータとして評価されるが、震源近傍まで含めて評価可能とされています。また、近年地震観測の充実を踏まえて従来よりも震源のモデル化を考慮した評価手法も提案されております。また、美浜発電所においては、平成7年に旧耐震指針に基づいて耐震安全性評価をおこなっておりますが、その中で基準地震動の評価において、敷地近傍の断層を対象として断層モデルを用いた地震動評価をおこなっております。

(8)以下、後日に確認して回答するとなった項目に関して
 [1]地震計の設置場所と地震データの保存について
 (ア)すべての原発での地震計の設置場所を地震計の種類も含めて図で示してください。
(答)図示については防護上の観点からご容赦願いたいという形でございます。当社の原子力発電所で、高浜2号機と大飯2号機には地震計は設置しておりませんが、それ以外の9つの原子炉について合計で約100個の場所に設置しております。基本的に設置している所は、基礎部および建屋の上部、建物は原子炉建屋と原子炉補助建屋でございます。
 (イ)地震計ICメモリー容量およびメモリー容量の大きいものへ順次取替えていく予定を各原発ごとに示してください。
(答)各発電所とも2年から3年程度の期間をかけて順次充実をはかることとしており、容量も大きいものに、その中で対応していくことにしております。なお、充実のための、地震計のメモリとか変えていく工事ですけれども、各発電所毎に定期検査工程などを勘案して定めるため、現時点では未定です。
 (ウ)地震計が設置されていない高浜2号機と大飯2号機では、いつまでに地震計を設置する予定ですか。
(答)2、3年をかけて充実していくという形になるんですが、高浜2号機とか大飯2号機につきましては、別途、仮設の地震計を設置するなどして、設備としての対応を、暫定的な対応としてはかっていく予定にしております。

 [2]クレーンおよび使用済み燃料プールの耐震性強化について、「震度7クラスを想定」して必要な対策を講じるとなっていますが、震度7クラスとは何ガルを想定しているのですか。
(答)震度表示において震度7は最大でありますが、現在、震度とガル数の相関関係は一般的に示されておりません。また、これら評価において、想定する地震動は現在実施中の耐震バックチェックにおいて策定していくことから、現時点において具体的なガル数を申し上げることはできないが、そのバックチェックを踏まえ、必要な対策を適切に講じてまいりたいと。具体的に何ガルかということをご説明するよりは、大きな地震に耐えうるということで震度7という表記をさせていただいたというふうに聞いております。

 [3]非常用ディーゼル発電機の冷却水および燃料配管の耐震クラスはどのクラスですか。
  また、この発電機を設置している建屋の地盤面および床の耐震クラスは、それぞれどのクラスですか。
(答)これらはSクラス、従来のASクラスでございまして、これらの支持構造物は岩盤上に設置させるとともに、S2地震動に対しても支持機能を維持することを確認しております。

 [4]3社(日本原子力発電、日本原子力研究開発機構、関西電力)共同で調査している敦賀半島周辺部(陸域、海域とも)のうち、関西電力が担当している地区を図で示してください。
(答)美浜発電所の敷地近傍調査については3者で協調して実施しているものであり、当社分として区分できるものではありません。

 [5]海上音波探査は陸地に近い沿岸部では調査できないと言われていますが、ジオパルス・マルチチャンネル方式による音波探査で、どの程度の深さから調査が可能なのですか。
 さらに、海陸境界付近の活断層については、どのような調査方法を用いるのですか。
(答)海上音波探査は調査船を用いておこなう調査であるため、使用する船の喫水等により、調査可能深度は変わります。当社は現在、新耐震指針を踏まえ、敷地からの距離や活断層の規模に応じ、既存文献の調査、変動地形学的視点に基づいた地形調査、地表地質調査、物理探査等を適切に組み合わせ実施している所であります。特に敷地近傍、敷地を中心とする半径約5キロの範囲においては、より精度の高い詳細な調査を実施中です。海陸境界付近の活断層についても、上記調査方法により実施している所でございます。

以上


2007年8月23日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(07/10/11UP)