美浜3号機の1月10日の原子炉起動前に国の検査を受けなかった問題、
MOX製造仮契約を結んでいるフランス・アレバ社の
安全文化・品質保証の重大な欠陥とたび重なる事故等に関する
質    問    書

青字は2月9日電話回答


関西電力社長 森 詳介様

2007年1月26日

 美浜3号機の営業運転前に交渉の場を設定し、下記の質問事項について回答するよう要請します。

1.高浜1号機の事故について「誠に遺憾である」との謝罪について
 前回の交渉(1月16日)で、1月14日に起きた高浜1号機の放射能を含む冷却水漏えい事故について、「誠に遺憾である」と謝罪の言葉を述べ、これは社としての見解だと強調されました。しかし、いまだにこの謝罪の言葉は貴社のホームページ等にも掲載されておらず、福井県にも伝えられていません。
(1)「誠に遺憾である」との謝罪見解を公に発表せず、福井県にも伝えていないのはなぜですか。
回答 高浜1号機で発生した水漏れについて、誠に遺憾であるというのは当社の見解であり、2月7日の本格運転再開について福井県に報告した際にもお詫びしている。

2.1月10日の臨界の失敗について
(1) 美浜3号機は2004年8月9日の事故以降長期間運転を停止し、昨年9月に短期間の試験運転を行い、その後約3ヶ月間停止し、今年の1月10日に原子炉を起動するという通常とは異なる経過をたどっています。
  臨界の失敗は、この特殊な経過に関する判断の誤りによって起こったのではないですか。
回答 短期間の試験起動、その後の長期間(約3ヶ月)の停止の影響による不確定性が大きくなる可能性があることを考慮し、慎重に臨界操作を行う観点からホウ素濃度を高めに見積もっていたものである。

(2)通常では、原子炉起動から臨界に達するまで、7時間ほどかかっています。1月10日の起動では、再起動から約1時間で臨界に達しています。前回の交渉では、国の検査を省略できたから短時間で臨界に達したとの話でした。どのような検査や試験を省略したのですか。具体的に示してください。
回答 <起動から臨界までには国の検査はない>
 原子炉起動とは制御用制御棒の引き抜き操作開始のことであり、通常の起動では、原子炉起動後にホウ素の希釈をするのに対し、再起動時にはホウ素の希釈後に原子炉起動を行う手順としていることから、一般的に再起動時の方が原子炉起動から臨界までの時間は短くなります。

3.美浜3号機の起動に関する国の検査の省略について
 通常は定期検査の最終段階にあたる原子炉起動前に、国の検査を受けることになっています。美浜3号機の場合は、昨年9月の試験的起動の前には、格納容器漏えい率検査等の国の検査を受けています。しかし1月10日の原子炉起動の前には上記の国の検査を受けていません。[美浜3号機の定検工程
(1)9月の試験的起動の前に受けた国の検査は何ですか。具体的に示してください。
回答 昨年9月の試験は9/17ヒートアップ以降、10/3の解列までで、その間にあった検査
・国の立ち会い検査 制御棒駆動系の検査
・国の記録確認及びJNESの立ち会い検査
   ・主蒸気安全弁の機能検査
   ・第1種容器のISI(供用中検査)
   ・補助給水系の機能検査
   ・加圧器逃がし弁の漏えい検査
   ・原子炉停止余裕検査
   ・蒸気タービンの性能検査
<以上は全て、1月10日の起動前には省略>

(2)9月の試験的起動から1月10日の原子炉起動までに約3ヶ月が経過しています。それなのに1月10日の原子炉起動前に国の検査を受けなかったのはなぜですか。
回答 検査は電気事業法54条1項、同施工規則の90条2項に基づき、国の立ち会い、記録確認する事項を定め、行われている検査は対象設備、系統の機能が維持されていることを確認するものであり、検査後、容器を再度解放したり燃料を出して入れ替えたりして、確認対象である事項が変更になる場合再検査となります。
今回は、停止後、原子炉本体の状態は(10/3の)ヒートアップ前と変わらなかったことから、再検査の必要はないとして国に説明・確認を行い対応をしております。

4.2001年12月のコジェマ社製MOX燃料廃棄について
(1)2001年12月26日、貴社は当時フランスのコジェマ社で製造したMOX燃料を60億円もの賠償金を払ってまで廃棄にしました。その理由を明らかにしてください。
回答 原子力安全・保安院に当該燃料が合格する可能性を問い合わせたが、合格にできないとの回答であったため加工を注ししております。
 なお、保安院が当該燃料を合格にできないこととしては
  [1]当社自らがメロックスへの事前監査及び評価を行うこと
  [2]製造期間を通じてメロックスへ当社社員を派遣し、製造状況及び品質保証活動の確認を行うこと
が満たされていると確認できないこと。

5.2004年7月12日付貴社報告書の監査結果の信頼性について
 美浜3号機事故が起こる前の2004年7月12日に貴社は、MOX燃料調達に関する品質保証システムの監査結果として「メロックスMOX工場の品質保証体制は良好」としています。その監査の管理責任者である桑原茂原子力事業部副事業本部長は、1999年のMOX燃料使用差止仮処分裁判において原子燃料部長の立場で、11月29日と12月10日に大阪地方裁判所に陳述書を提出しました。その中でBNFLのMOXデータ不正はなかった、全数自動測定によって「安全評価の前提となっている仕様値を満たしている」と誤った主張をした人物です。
(1)このような考え方の人物が行った、アレバ社メロックスMOX工場の品質保証体制の監査結果には信頼性がもてないのではありませんか。
回答 2004年6月のメロックスMOX燃料加工工場に対する品質保証システム監査は、監査員(社内資格)及び検査員(社内資格)の両方を有した者で、かつ、社外の品質マネジメント審査員研修機関が行うISO9000審査員研修を終了した者が監査員として実施しています。
 また、フランスのビューロベリタス審査員が当初の審査能力を補完し、品質保証システム監査の信頼性を高めるため第三者機関として参加してもらっている。
 さらに、原子力事業本部から独立した組織である品質安全監査室(現在は経営監査室)が品質保証システム監査が適切に実施されたことを確認しています。

6.フランスのアレバ社の安全管理について−カダラッシュ及びメロックスのMOX燃料加工工場のレベル2の事象等について
(1)フランス・アレバ社のカダラッシュにあるMOX燃料加工工場(ATPu)では、「昨年3月に生じた計量器の不調の後、粉砕処理設備の運転班が、非公式で許可も得ていない質量取扱い方法を開発して利用していた」ことがフランス原子力安全規制機関(ASN)によって指摘されました。
 貴社はこの事実を知っていましたか。
回答 カダラッシュ工場は2003年7月に商業燃料の製造を停止しており、情報紙に記載されている以上の情報は入手していない。

(2)さらにATPu工場では、昨年11月7日に、粉砕処理工程に2重にMOX燃料のスクラップを投入するという事故が発生しました。そのためASNは今年1月9日に、「事業者の安全文化における重大な欠陥が明らかであり、品質保証における人的誤りや失敗の蓄積」が確認されたとして、この事故を国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル2に分類しました。
 貴社の美浜3号機事故はINESではレベル1であり、また1995年の「もんじゅ」事故もレベル1でした。貴社の美浜2号機細管破断事故がレベル2で、今回のアレバ社カダラッシュのMOX燃料工場の事故と同じレベルです。これらのことは、カダラッシュの事故がいかに深刻なものであったかを示しています。
(a)貴社はATPu工場の事故がレベル2と分類されたことを知っていましたか。
(b)貴社は上記のフランス原子力安全規制機関(ASN)の指摘を知っていましたか。
回答 (a)(b)とも、情報紙に記載されている以上の情報は入手していない。

(3) また、メロックスMOX工場では2004年7月26日に、作業員の負傷と放射線被ばくというレベル2の事故が発生しています。このような事故を起こす工場に信頼性をもつことはできないのではありませんか。
回答 メロックス工場については、2004年6月にMOX燃料の調達先候補として事前監査を行い、品質保証システムが適切であることを確認している。

(4)以上のように深刻な事故を繰り返し、フランス政府当局から「事業者の安全文化における重大な欠陥が明らかであり、品質保証における人的誤りや失敗の蓄積」を指摘されたアレバ社とのMOX加工仮契約は破棄すべきではありませんか。
回答 今後の進め方については、現時点では申し上げる状況にない。

2007年1月26日
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
  京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
  大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581