副社長・原子力事業本部長立ち会いのもとに起きた
美浜3号機の臨界の失敗と原子炉起動のやり直しに関する質問書
(回答は16日)

関西電力社長 森 詳介 様

2007年1月11日

 貴社は1月10日の午後1時に美浜3号機の原子炉起動を強行しました。中央制御室では、貴社の副社長(森本浩志原子力事業本部長)、原子力保全改革推進室長、美浜発電所所長及び原子力安全・保安院の保安検査官までもが立ち会い、臨界を監視しました。
 午後1時に運転担当課長が「臨界操作開始」と声をかけ、運転員が制御棒を引き抜くレバーを押して原子炉を起動させました。しかし予定していた1時間後には臨界には達せず失敗しました。
 そのため、午後6時頃にはいったん制御棒を元に戻しました。一次冷却水のホウ素濃度が高かったため、冷却水に水を送り込みホウ素濃度を下げる操作を行いました。
 そして午後10時半に再び制御棒を引き抜く操作を行い、午後11時37分に臨界に達しています。
 核分裂反応を抑制するためのホウ素濃度の調整は、原発を動かすにあたって基本中の基本のはずです。今回はホウ素濃度を高く設定していたため核分裂反応が抑えられましたが、ホウ酸濃度が低く設定されておれば、瞬時に臨界が進み核暴走の危険さえありました。安全性に直結する基本の操作を誤ったことは、やはり貴社の安全性軽視の体質が、原子炉起動という第一歩から露見したのではないでしょうか。それも、原子力事業本部長である副社長が立ち会っていながら、このようなトラブルを起こすとは、一体どういうことでしょう。
 なぜ、このような臨界の失敗と起動のやり直しという事態に至ったのでしょう。貴社のプレスリリースでは「美浜発電所3号機につきましては、本日13時00分に原子炉を起動し、同日23時37分に原子炉が臨界に達しましたので、お知らせします」とあるだけで、臨界の失敗と起動のやり直しについては何も書かれていません。そのため、以下の点について、詳しく説明してください。

1.臨界に失敗した原因は、一次冷却水中のホウ素濃度の設定が高すぎたためだと報道されていますが、午後1時の時点のホウ素濃度はいくらだったのですか。
(答)実際にサンプルしたのは9時45分でございますけれども、1540ppmでございました。

2. 一旦引き抜いた制御棒を元に戻すための操作はいつから開始したのですか。
(答)15時37分に挿入操作を開始しております。

3.水の注入によってホウ素濃度をいくらに変えたのですか。
(答)臨界ホウ素濃度を1460ppmで再評価しまして、それに向けてホウ素濃度を薄めるという操作を18時6分に開始して20時32分に薄めるという調整を終えております。希釈後のホウ素濃度は1471ppmでございました。 21時13分にサンプリングしております。

4.そのために、どれくらいの水を注入したのですか。
(答)すみません。これは今準備できておりません。1次冷却材は水で200トン位の量なので10トンくらいかなあと個人的には計算で出てくると思いますけれども…。

5.ホウ素濃度の設定をなぜ誤ったのか、具体的に説明してください。
(答)臨界点のホウ素濃度に関しては通常から誤差がありますが、今回は短期間の試験起動、これは昨年9月のことですけれども、の影響を加味するほか、ホウ素濃度が高めの方が安全側であることからホウ素濃度を若干濃く見積もる方向で調整したためである。

6.原子力事業本部長である副社長が立ち会いながら、なぜこのようなトラブルが起きたのですか。
(答)今回の事象はトラブルではございません。

7.このトラブルについて保安院と福井県には、いつ、どのような報告をしたのですか。
(答)今回の事象はトラブルではありませんが、保安院や福井県に連絡しております。14時頃連絡したと聞いております。その後は、随時状況について連絡しています。

2007年1月11日
  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581