大飯3号機の技術基準を下回る違法なひび割れ
8月22日の交渉での関電回答に関する質問書


関西電力(株)社長 森 詳介 様

2008年9月8日

1.UT(超音波探傷検査)の精度について
 前回の交渉では「これまでのSGの検査実績から、UTは傷の深さ5o以上であれば判定できる」との回答でした。大飯3号機の原子炉容器出口管台溶接部では20o以上の傷があったにもかかわらず、貴社は当初「評価できない非常に浅い」と評価していました。「5o以上なら判定できる」という貴社の見解は完全に外れました。これは、UTを使った検査そのものの信頼性を揺るがすものです。
 5o以上の傷であったにもかかわらず、なぜ判定できなかったのですか。

2.予想外の傷の進展と、傷の進展予測がはずれたことについて
 前回の交渉で、傷の進展については、「初めに3oの傷があったと仮定して、7年間で17oの傷に成長している」との予測でした。すなわち、17o−3o=14o(7年間で)。
 他方、8月27日のプレス発表では、傷は20.3oまで入っており、上記の仮定に基づけば、20.3o−3o=17.3o(7年間で)。
 また、2004年に大飯3号機の上蓋管台(インコネル600)で亀裂が生じた時、最初の傷の発生に23年(20万時間運転)かかるという見解でした。

(1)前回の交渉で答えた傷の進展に関する予測17oは、どうやって計算したのですか。計算式を含めた根拠や条件を示してください。

(2)傷は、実際には20.3oまで進んでいました。17oというという予測も外れましたが、その理由は何ですか。

(3)今回の傷の進展予測では、2001年までに3oの傷が入っていたと仮定しています。大飯3号機は1991年に運転を開始しているので、約10年で3oの傷が入ったということになります。以前は、最初に傷が入るのに約23年かかるという予測でした。初期の亀裂について、以前の予測と今回の予測が大きく異なるのはなぜですか。

3.一次冷却水と圧力について
 原子炉容器出口管台溶接部での応力腐食割れは、一次冷却水の温度と圧力が影響している可能性があります。
大飯3号機をはじめ全ての原発の原子炉容器出口管台部の一次冷却水の温度と圧力はそれぞれいくらですか。

4.必要肉厚を割り込んだ違法な運転について
 前回の交渉で、国の技術基準(必要肉厚)を割り込んで運転していたことについて、「違法かどうかは国が判断することで、当社が判断することではない」と主張しました。
 原子力安全・保安院は、5月26日のプレス発表で「本件は、安全上重要な機器等が、技術基準に適合していないと認められた」と指摘しています。
(1)「違法かどうかは当社が判断することではない」というのは、社としての正式見解ですか。

(2)大飯3号機のひび割れが、技術基準に適合していないことを貴社として認めますか。

(3)電気事業法第39条では「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を経済産業省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない」と定められています(下線は引用者)。大飯3号機はこの第39条に違反していたことを認めますか。

5.必要肉厚の変更に関する法的根拠について
(1)「必要肉厚の変更はどのような法令等にのっとって行ったのですか」との質問に対して、前回の交渉では「電気事業法48条」との回答でした。しかし、この「電事法48条」は、工事等を行う場合に、工事の計画に関する届けを出さなければならないというもので、質問の趣旨とは異なった回答になっています。そのため、再度質問します。
 必要肉厚を変更することが可能であるということは、どの法令に基づくものですか。

(2)「同一の溶接部分で、必要肉厚が2つ存在するのは、どのような法令に基づいているのですか」との質問に対して、前回の交渉では「技術基準に基づいている」というだけでした。大飯3号機は、同一溶接部の必要肉厚が、傷の部分では53o、その他の部分では70oと2つ存在しています。
このように2つの必要肉厚が存在できることについて、技術基準のどの部分に書かれているのですか。

6.他の原発での当該部分などの検査について
 大飯3号では2001年の検査で傷がなかったとされながら、予想外の進展速度で深い傷が確認されました。貴社が8月27日に電話回答で示した原子炉容器出口管台の検査実績は下記のとおりでした。多くの原発で当該部位を検査したのは2000年前後となっており、またUTの精度が信頼できないことから、傷が入っている可能性があります。
また、大飯3号機の傷は4月17日に確認され、研削を開始して5月26日には4.6oまで削り、必要肉厚である70oに達しました。この時点で既に技術基準を割り込む深い傷であることが確認されていました。この5月26日時点では、6基の原発が定期検査中でした。貴社は当該部分の検査について水平展開することなく、とりわけ美浜1号機と大飯1号機では何の検査も行っていません。
(1)美浜1号機と大飯1号機で当該部の検査を行わなかったのはなぜですか。

(2)他方、高浜3号機では、当該部以外にも、原子炉容器底部/加圧器逃がし弁管台/同安全弁管台/同スプレイ弁管台/同サージ管の溶接部でUT検査を実施しています。
他の原発でこれらの箇所を検査しなかったのはなぜですか。

(3)全ての原発で、当該部分を含むインコネル600製部位を早急に検査すべきではないですか。各原発の検査予定を示してください。

圧力容器出口管台溶接部の検査実績(UT検査)
「下記の検査で傷は確認されていない」(8月27日 関電電話回答より)



2008年9月8日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(08/10/7UP)