8月10日関電交渉−速報
■「設計を超える地震が起きても、安全余裕があるので原発は大丈夫」
    −耐震設計の思想を根本から否定−
■政府の地震調査研究推進本部が評価する「野坂断層:M7.3」で
    美浜原発が安全か−「今は答えられない」
■「原子炉の安全にとって『止める、冷やす、とじ込める』は機能した」
 「放射能が一滴も出ないとは言ってきていない」


  8月10日、グリーン・アクションと共同で、午後6時過ぎから9時前まで、関西電力本店で交渉を行った。関電からは広報2名、市民側は36名の参加だった。中越沖地震による柏崎刈羽原発の実情を踏まえて、「関電の原発は地震に耐えられるのか」がテーマだった。主要な点に絞って、ひとまず速報をお伝えする。関電のいいかげんな姿勢とそれで原発を動かしていることに対し、参加者の怒りは爆発した。

■「設計を超える地震が起きても、安全余裕があるので原発は大丈夫」
    −耐震設計の思想を根本から否定−

 関電は初めに、「建設当初から十分な耐震安全性を備えているので原発は安全。万全だ」と述べた。さらに「美浜原発は東電の原発よりも頑丈な岩の上に建っている」と付け加えた。また関電は、柏崎刈羽原発の地震計の観測値が全て設計上の揺れを超えた事実は認めながら、「東電の耐震安全性が誤っていた」ことについては認めない。関電が繰り返し強調したのは、「設計を超える地震が起きても、安全余裕があるので原発は大丈夫」というものだった。それでは「耐震設計が不十分でも、安全余裕があるから大丈夫ということか」、「耐震基準など関係ないということか」と参加者から批判の声が続く。関電のこの論理は、もともと耐震設計など重要視していないということに等しく、耐震設計の思想を根本から否定する、危険極まりないものだ。

■政府の地震調査研究推進本部が評価する
 「野坂断層:M7.3」で美浜原発が安全かは「今は答えられない」
 「野坂断層でM7.3は『防災用』。原発は地震力だけで設計しているわけではない」
 美浜原発の活断層評価では、野坂断層について、陸地の7qだけの断層と評価し、設計上の限界地震の評価からは事実上無視している。関電は、「海と陸の断層は切れているものと評価している」と認めた。これに対して、政府の地震調査研究推進本部(推本)は、野坂断層は陸地と海の断層を連続したものとして断層の長さを31qと評価し、マグニチュード7.3の地震が起きる可能性を警告している。美浜原発は「野坂断層:M7.3」の地震に耐えられるのかと問うと、最終的には「今は答えられない」との回答だった。そして、国の新指針に基づいて2009年までに調査・評価を行っている最中だと繰り返す。関電は「調査の結果405ガルを上回る場合は、設計を見直して必要に応じて補強工事を行う」と言う。これに対しては、「いま地震が起きたらどうするんだ」、「なぜすぐに推本の評価で美浜原発が耐えられるのかの評価をやらないのか」、「それもやらずに原発を動かしているのは危険だ」等々の意見が一斉に参加者から出された。
 すると関電は、「国の推本の見解は、防災対策用」。「原発は地震力だけで設計しているわけではない」等ととんでもない発言を始めた。さらに「推本は(断層と断層の間が)5q以内なら全てつないで評価している」と、あたかも推本の見解は根拠のないものであるかのようなニュアンスの発言を繰り返した。野坂断層でM7.3の地震が起きるという推本の警告を、事実上無視してもいいという見解だ。「原発にも防災が必要」、「地震力で設計するのが耐震安全性ではないのか」と参加者の怒りの声は強まった。

■「原子炉の安全にとって『止める、冷やす、とじ込める』は機能した」
  「放射能が一滴も出ないとは言ってきていない」

 最後に大きな問題となったのは、今回の柏崎刈羽原発の状況について、関電は「原子炉の安全にとって『止める、冷やす、とじ込める』は機能した」と言い出したことだ。参加者は「海にも、大気にも放射能が漏れたではないか」、「とじ込められなかったではないか」と一斉に厳しく批判した。関電は、「私の話を正確に聞いてください。『原子炉の安全にとって』と言っているのです」と言い出す。これは、原子炉すなわち原子炉圧力容器(お釜)からは放射能は出てないという意味だという。「これまで、地震が起きても放射能は外部には出ないと言っていたのではないのか」、「使用済み燃料プールからの放射能漏れは『とじ込め』とは関係ないということか」等々批判が続いた。すると関電は、顔を紅潮させて「これまでも、一滴も出ないとは言ってきていない」と発言。またも出たとんでもない発言に会場は騒然となった。
 この言葉は関電としての回答である。美浜3号機事故から3年が経ち、関電社長は「安全第一」と繰り返している。関電の「安全第一」の本質が明らかになった交渉だった。はたして、地元福井県民や県当局はこの関電の答えに納得できるのだろうか。

(07/08/11UP)