−1月31日関電交渉報告−
「1月6日のプルトニウム利用計画は2003年の電事連計画をそのまま書いただけ」
「具体的な計画を示すという観点でまとめたものではない」(関電)
しかし、「余剰プルトニウムが発生した場合の責任については答えられない」(関電)


 1月31日、関電が1月6日に公表したプルトニウム利用計画について、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。関電本社ビルの会議室で午後6時から約2時間半。関電からは広報3名が出席。市民側は22名が参加した。

■関電はプルトニウム利用計画について、97年当時の計画をそのまま引き写しただけのものであり、具体性はないことを認めた−「1月6日のプルトニウム利用計画は具体的な計画を示すという観点でまとめたものではない」(関電)。
 前回12月20日の交渉では「美浜3号機の再発防止策に全力をあげており、地元の理解を得るまではプルサーマルを口にすることはできない」「今は利用計画を示せない」と言いながら、その交渉からわずか17日後に関電はプルトニウム利用計画を公表した。今回の交渉では、このような市民を欺く関電の不誠実な態度に対して、まず厳重な抗議を申し入れた。
 次に1月11日に出した質問書に対する回答を聞いた。質問書では、具体的なプルサーマル計画が出せない状況で、特に大飯原発については事前了解願いも出していない状況なのに、なぜ利用場所を書いたのか、関電の姿勢を質している。
 質問書に対して関電は、「現時点でも美浜3号機の再発防止策が最優先でプルサーマル計画について発言できる状況ではない」と、状況は変化していないことを認めた上で、「1月6日に公表したプルトニウム利用計画は2003年に公表した電事連の計画をそのまま示しただけ」という趣旨の回答をおこなった。
 これに対してまず最初に、「東電の場合はどうなのか。東電は2003年の計画と違って利用場所を書いていない。関電も正直に具体的計画はないと書くべきではなかったのか」と質した。しかし、関電は「電事連で2003年にまとめたものをそのまま記載しただけ」と繰り返し、最後には、「東電がどのような判断をしてその様な記載になったかは分からない。コメントする立場にない」と逃げた。
 「大飯については事前了解願いも出していないのになぜ書いたのか」と訊くと、関電は「今回の利用計画は、国や地元の了解を必要とするものではないと考えている」と答えた。そこで、「地元の了解を必要とするものでないのなら、具体的な利用計画ではないということだな」と訊くと、「原子力委員会の決定した文書に従って、透明性向上の観点から必要なものを公開した」と言った。「関電として1月6日の利用計画を具体的なものだと考えているのか」と重ねて追及すると、「皆様の言う具体的というものが、いつ何年どこの発電所でということであるなら説明はできない。しかし、透明性向上の観点から必要なものを公開した」と答えた。その後はとにかく、「原子力委員会が認めているから良いじゃないか」という趣旨の発言を繰り返すばかりであった。
 しかし、「具体的なものかどうかきちんと答えて欲しい」と何度も詰め寄った結果、最後に、「関電として1月6日の利用計画が具体的かどうかは判断していない」と言い、「1月6日のプルトニウム利用計画は具体的な計画を示すという観点でまとめたものではない」とはっきり認めた。
これに対して、「そんないいかげんなもので、余剰プルトニウムを持たないとどうやって海外に説明するのか」と批判の声があがった。
 「2003年というが、中身は97年2月のものとまったく変わっていない。今回の利用計画は97年レベルのものということだな」と確認を求めると、「まぁ内容はその通りです」と認めた。
また、「原子力委員会から承認いただいている」との発言に対して、「それじゃ原子力委員会は具体的な計画を求めていないということなのか」と切り返すと、言葉を濁す。「原子力委員会のヒアリングに対して『プルサーマル計画を具体的に示せる状況にはない』とちゃんと説明したのか」と訊くと、最初は「説明した」と言いながら、確認を取ろうとすると、途端にあやふやになり「美浜3号の再発防止に専念しているとは説明したが、『具体的に示せる状況にはない』と言ったかどうかは分からない」となった。原子力委員会に対して「プルサーマル計画を具体的に示せる状況にはない」と言ったのかどうか確認の上、後日回答になった。
 利用開始時期について、交渉冒頭の質問書に対する回答で関電は「2012年度以降」と答えていた。「2012年度以降とは具体的にはいつなのか示して欲しい」と追及したが「MOX燃料加工工場の竣工予定時期が2012年度以降となっているので、そう書いた」としか答えられなかった。「いつの時点から開始できるかははっきり言えないということか」と確認を取ると、「そういうことです」と認めた。
 また、関電の利用計画では、利用量は「1.1〜1.4トン」となっているが、これは「海外で回収されたプルトニウムの利用量を含んでいる」ものである。そこで、1月11日の質問書では、アクティブ試験で取り出したプルトニウムの具体的な使用量を聞いている。しかし冒頭の回答では、「現時点では内訳は未定」としか答えなかった。「具体的使用量も決まっていないのか」と批判すると、「着実に利用していくということです」と同じ言葉を何度も繰り返すだけであった。
 関電が認めたように、1月6日のプルトニウム利用計画とは、1997年当時の計画、つまり9年も前に出された初期の計画をそのまま引き写しただけのものである。利用開始時期についても、利用量についても何も決まっていない。関電の利用計画には何の具体性もない。全く形式的なものであることは明らかだ。

■具体的な計画がないにもかかわらず、余剰プルトニウムが発生した場合の責任については「仮定の質問」と強弁し、回答を拒否し続けるという無責任な態度に終始。
 関電に対し、「電気事業者として余剰プルトニウムを持たないという明文化した方針はあるのか」と確認を求めると、「はっきり分からない」ということで、調査の上後日回答になった。しかし、「余剰プルトニウムを持たないという方針でプルサーマル計画を進めている」ことは認めた。
 そこで、「こんな利用計画でどうやって、アクティブ試験で取り出したプルトニウムが余剰プルトニウムにならないと保証できるのか」と追及した。これに対して関電は、「プルサーマル計画を具体的に示せる状況にはないとしか言えない」とだけ答えた。「保証はあるんですか」と何度追及しても質問には答えず、2010年までに電力11社で16基〜18基でプルサーマルを実施するという97年の電事連決定を持ち出し、「1日も早いプルサーマル計画の実施に向けて不退転の決意であるところには変わりはございません」と言うだけだった。「それは希望的観測でしょ」と批判の声があがった。「保証があるのか、きちんと答えて下さい」と何度追及しても、「不退転の決意で」「不退転の決意で」と逃げるばかりだった。
 そこで「保証はできないということですね」と確認し、「では、余剰プルトニウムが生じた場合、その責任を関電は取れるのか」と追及すると、「そのような仮定の質問には答えられない」と回答を拒絶した。
 関電の回答拒否に対して、わっとばかりに批判の声があがった。「関電の利用計画の方こそ仮定の話じゃないか」「再処理すれば余剰プルトニウムが出るのは現実の話じゃないのか」「余剰プルトニウムにならない保証は『決意』しかないのに、何が仮定の質問なのか」「国際公約に対して無責任じゃないか」等々。
 また、「海外に大量のプルトニウムを持っており、その使用についても具体的なものは示せない。そんな状態でなぜ、急いで再処理を行う必要があるのか」と追及すると、これに対しても、「エネルギーセキュリティの観点から一日も早い核燃料リサイクルの確立が必要」と一般的な答を繰り返すばかりだった。
 関電は1月6日の利用計画が具体的な計画でないことを認めながらも、余剰プルトニウムが発生した場合の責任については「仮定の質問」と強弁し、回答を拒否し続けるという無責任な態度に終始した。

■青森や岩手での放射能汚染や風評被害についても「責任はない」。
 最後に「アクティブ試験に入ればこれまでになかったような大規模な放射能放出が行われる。青森や岩手では実際に風評被害が起こりつつある。関電の使用済み燃料の再処理によって風評被害が起こるとしたら、これに対して関電は責任を持つのか」と追及すると、ちょっと困惑したような感じで、「再処理による環境影響はないと国が認めている」云々と言った。しかし、「本当に責任はないという姿勢でいいんですか」と重ねて追及すると、最後には「きちんと調べて関係があるということだったら、日本原燃に責任があるということになるだろう」と回答した。
 結局関電は、アクティブ試験によって引き起こされる放射能汚染や風評被害について、関電には何ら責任がないという不誠実な姿勢を取り続けた。

■刻印ねつ造について(その1)−「11月2日に保安院から連絡を受けて初めて分かったのは事実」「刻印ねつ造を国が先に知っていた可能性は高い」「保安院から指摘されなければ、ねつ造は隠されたままだった」。
 昨年12月20日の交渉では、溶接安全管理審査の過程でねつ造が明らかになったのはいつの時点なのか、またどういう経緯でねつ造が見つかったのかを質したが、「溶接安全管理審査は10月6日からだが、ねつ造が分かったのが何日かはちょっと分からない」と答えられなかった。その後1月11日に出した質問書では、審査の中でねつ造が明らかになった時期や、具体的な経緯について聞いている。
 今回の交渉で関電は、この問題について「昨年11月2日に原子力安全・保安院より当社原子力事業本部に連絡があり、原子力事業本部から美浜発電所に状況の確認を指示した。その結果、11月3日に問題が判明し、美浜発電所の方から原子力事業本部に連絡があった」と回答した。
 「保安院からの連絡とはどのような内容だったのか」と聞くと、「溶接安全管理審査について説明するようにというもの」と言う。「保安院の方が関電より先に、基盤機構からねつ造問題のことを聞いて知っていたということではないのか」と追及すると、「そこまでは分からない」と答えた。そこで、「審査中に保安院が、審査について説明を求めてきたのだから、通常は何か問題があったと考えるだろう」と聞くと、「確かに保安院から連絡を受けた際、何か問題が起こったのかと考え、美浜発電所に連絡した」と認めた。また、「保安院の方からも関電に説明を求めた際、その内容、つまりねつ造について言ったはずだろう」と追及すると、何も答えられなくなった。「国がねつ造を先に知っていたということだな」と確認を求めると、「国が先に知っていた可能性は高い」と認めた。またねつ造について、「保安院から連絡を受けて初めて分かったのは事実だ」とも言った。
 つまり、溶接安全管理審査の中で基盤機構がねつ造問題を発見し、国に連絡。国から指摘を受けたために、関電はねつ造問題を明らかにしなければならなくなったということである。
 12月7日の関電報告書では、あたかも関電が自分の力で三菱重工のねつ造を発見し、それを公表したかのように書いているが、まったくの嘘だったのである。結局、基盤機構に刻印ねつ造を指摘され、保安院に知られてしまったので、公表したということである。
 前回の交渉で関電は、基盤機構に見つけられなければ、「このまま(ねつ造が隠されたまま)だった可能性はあった」と認めた。今回の交渉でも同じように、「保安院から指摘されなければ、ねつ造は隠されたままだったということか」と確認を取ると、その可能性を認めた。

■刻印ねつ造について(その2)−美浜発電所所長を筆頭に、品質管理部門の責任者も含め、上から下まで6名もの人間がミスを見逃していた!?
 また関電は、ねつ造配管を付け直させた後、どういった処置を取ったのか記録する「不適合品処理シート」を発行したが、「是正処置の要否」欄に何も記入していないというミスを犯していた。しかも、このシートには、確認のために捺印欄が4つある。つまり複数の人間がこのミスに気づかず見逃していたということである。
 前回の交渉では、「何人の人間が判を押し、何人が見逃していたのか」と訊くと「4〜5人です」と答えていた。今回は、さらに具体的に、だれが判をついていたのか明らかにするよう求めた。
 これに対して関電は、役職名を挙げた。タービン補修課の課長、係長、溶接検査員、技術次長、そして驚いたことに所長、さらに品質保証を担当するセクションの課長以上の人間、と言ったのである。美浜発電所の所長を筆頭に、品質管理部門の責任者も含め、上から下まで総勢6名もの人間がこのミスを素通ししていたのである。意図的に見逃していたのではないだろうか。もし本当だとすれば、関電の品質保証は全くデタラメなものということだ。

■広報職員による隠し録りについて
 交渉の中で、広報職員の一人が携帯電話の録音機能を使って市民の発言を録音していたことを参加者の一人が発見した。市民側の発言を関電側が録音することは許されない。録音が参加者の生活・活動への不当な干渉・侵害を目的に使用される可能性は否定できないからだ。事実、関西電力はかつて提出した署名に書かれた住所から電話番号を割り出し、署名人に電話をかけ、署名した理由を質すなどという人権侵害をおこなった。「録音は絶対に認めない」と抗議し、今回の隠し録りについても、参加者立合の上で消去させた。