10/20関電交渉報告
六ヶ所再処理工場のアクティブ試験−関電の使用済み核燃料140トンを使用予定
しかし、回収されるプルトニウムの利用方法は
「今は答えることはできない」「示すことはできない」
関電の使用済み核燃料はアクティブ試験では使えない


 10月20日、午後6時過ぎから約2時間半、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。旧関電本店隣のダイビルの会議室で、関電からは広報2名(1名は体調不良で欠席とのこと)、市民側は約25名が参加した。重要なポイントに絞って、報告する。

■アクティブ試験に関電の使用済み燃料140トンが使われるが、プルトニウムの利用方法は「今は答えることはできない」「示すことはできない」
 六ヶ所再処理工場のアクティブ試験で、関電の使用済み核燃料140トンが使用されることになっている。原子力委員会は2003年8月5日の決定(「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」)で、アクティブ試験で回収されるプルトニウムについて、各電力会社がその使い道を公表することを要求し、利用目的の妥当性について原子力委員会が確認するとしている。そのため、事前に出していた質問書(9/27付)で、関電の140トンの使用済み核燃料から回収されるプルトニウムの使い道を質問していた。
 交渉で関電は、アクティブ試験で関電の140トンの使用済み核燃料が使われる事については認めた。しかし、プルトニウムの使い道について「現在はお答えすることができない」とはっきり答え、その後に「アクティブ試験までには公表する」と回答した。
 また、海外で再処理されたプルトニウムの使い道については、「当社としては、平成15年12月のプルトニウム利用計画では、高浜3・4号機、及び大飯発電所の1基から2基で使用する予定としておりましたが、具体的計画については、現在美浜3号機事故の対策に専念しており、MOX燃料について検討できる状況ではないため、示せる状況ではありません」と、プルサーマルについては「検討できる状況ではない」「示せる状況ではない」との回答だった。
 関電は交渉の冒頭では、「アクティブ試験で使用される燃料集合体の燃焼度等の違いによって、回収されるプルトニウムの量は異なるので、今の時点で利用方を示すことはできない」として逃げようとしていた。しかし、原子力委員会決定では、下記の6項目について公表するよう指示している。その一つ一つについて確認していくと、以下のような回答になった。
 (1)プルトニウムの所有者・・・「関西電力です」
 (2)プルトニウムの所有量・・・「燃焼度などの関係で具体的に言えない」
 (3)利用量・・・「現在のところ、何もお答えすることはできません」
 (4)利用場所・・・「同じくお答えすることはできません」
 (5)利用開始時期・・・「同じく、お答えすることはできません」
 (6)利用に要する期間の目処・・・「同じく、お答えすることはできません」
 やはり、具体的使い道を示すことはできないのだ。海外再処理分について、「美浜事故の対策に専念しているので示せない」と言いながら、「アクティブ試験前までには公表する」とはおかしな話だ。アクティブ試験は、日本原燃の予定では今年12月から。高レベルガラス固化体貯蔵施設の改造工事に2〜3ヶ月かかるとなっているので、早ければ来年1月頃になる。「1月までに美浜事故対策が完了するのか」と問われれば「はい、その時期ではありません。今現在、使い道を問われれば美浜事故の対応があるので答えられない」と繰り返す。海外分のプルトニウムの使い道も示せないのに、なぜアクティブ試験分の使い道が出せるのか、と追及が続く。アクティブ試験前に公表するなど不可能だろうと問われれば、「まだアクティブ試験は正式に決まっていない。詳細は決まっていない」と言いだす。では「アクティブ試験は10年先だと考えているのか」と問われると、「いえ、そんな先では・・・」。
 140トン使うことだけが決まっており、その使い道を公表できなければ、原子力委員会の決定に反するではないかと追及されると、「透明性を高めるために原子力委員会の決定にしたがって公表するということになっています。それを示せなければ国策に反することになる。そのため、利用計画は示していきたい」「試験はまだ正式に決まっていない」と繰り返す。余剰プルトニウムは持たないという国際的公約に対し、六ヶ所再処理工場の稼働を前に、国際的監視の目が強まっているにも関わらずである。
 参加者は口々に、使い道を示せないのだから、関電分の140トンはアクティブ試験で使うべきではない、原燃に対し関電分を使わないよう言うべきだと激しく追及した。そして、「今日は、プルトニウムの使い道は『答えられない』『示すことはできない』という貴重な回答をいただいた」と確認して、次の質問項目に移ろうとすると、関電は「いや、試験前までには、試験前には・・・」と声をはりあげながら同じ事を繰り返し、なかなか次の項目に移れない状況だった。
 日本原燃が公表しているアクティブ試験の計画では、使用済み核燃料の使用は下記のようになっている。
表3 アクティブ試験で使用する
使用済燃料の量
型式 体数 tU
BWR 約1250 約220
PWR 約460 約210
合計 約1710 約430
*量については概算値であり、試験計画の進捗により変動がありうる。
(日本原燃「再処理施設試験運転全体計画書」より 2005年7月6日)
http://www.jnfl.co.jp/press/pressj2005/pr050706-1-1.pdf の44頁
 PWR原発の場合、210トンの使用済み核燃料を使う。そのうち関電分が140トンで7割近くを占めている。この割合について質問すると、「使用量等は日本原燃が決めて各電力会社と調整する」との答えだった。各社の割り当ての根拠については、交渉の場では分からないとのことで、後日確認して回答を得ることになった。
 原子力委員会の決定に基づいて、使い道が示せない会社の使用済み核燃料をアクティブ試験で使うべきではない。東電など、他の電力会社も同じような状況にある。各電力会社に対して、「使い道がない」ことの確認をとり、アクティブ試験で使用可能な使用済み核燃料が存在しないことをはっきりとさせていこう。この側面からも、アクティブ試験など実施できる状況にないことを、多方面に発信していこう。
 なお、関電が海外で保有しているプルトニウム量については、下記のような回答だった。BNFLとコジェマ社での、プルトニウムの回収率の違いについては、後日確認して回答することとなった。
【関電が海外で保有しているプルトニウムの量】
( )は再処理量に対する割合
  使用済み核燃料 海外保有プルトニウム量
搬出量(トン) 再処理量(トン) 全Pu(トン) 核分裂性Pu(トン)
BNFL 500 498 2.5 (0.50%) 1.7 (0.34%)
コジェマ社 1,350 1,350 11.7 (0.87%) 7.9 (0.59%)

■美浜3号機事故の破断した配管が未点検だと知ったのは、
 「検査を担当した職員の『記憶』で7月末から8月初め」。
 「作業日誌はつけていなかった」「点検表にも日付は書いていない」
 次に交渉で大きな問題になったのは、美浜3号機事故の破断した配管が28年間未点検であったことを、関電がいつの時点で知ったかという問題だ。関電はこれまでの交渉で、「未点検であることを確認したのは7月末から8月初め」の事故1週間前で、「8月14日(事故は8月9日)からの定検で検査することになっていた」と答えていた。しかし、8月10日の読売新聞は、警察が押収した資料と関係者の聞き取りから、事故1ヶ月前には配管が未点検であることを関電が知っていたと報じた。この点について、再度確認した。
 関電は、今回初めて、「実際に点検に携わった当社の複数の社員から聞き取り調査を行った」とし、「7月末から8月初め」というように日付が特定できないのは、その職員の「記憶」を基にしているからだと答えた。そして「作業日誌にも点検表にも日付は書いていなかった」と答えた。
 この関電の回答に対して、工場の現場で働いている人々から、日々の自らの仕事と照らし合わせて、厳しい批判の声が相次いだ。「作業日誌に日付を書かないなどあり得ない」「現場の作業員は自分に責任が来ることをよく知っているから、日付を書くなど最低限のことだ」等々。さらに、この未点検を確認した検査は、そもそも美浜3号機事故の直前に大飯1号機の2次系配管で大きな減肉が見つかったため、その水平展開として他の原発でも点検することになった異例の点検である。日常の業務でうっかり日付を書き忘れたのではなく、特殊な点検であるから、なおさら日付を書くのは当然だと批判の声が続く。読売新聞の記事では「機械保修課の複数の職員が遅くても7月中旬には、運転開始以来、配管が一度も点検されていなかったことに気づいていたことが分かった」と記されている。この記事が出た後に、この職員に確認したのかと問うと、「していない。作業を担当した複数の社員から聞いているので」と答える。なぜ確認しないのかと聞いても「当社が3月に出した報告書の記載どおりだ」と繰り返す。読売新聞社に抗議をしたのかと聞かれると、「別にしていません。当社の報告書が・・・」。交渉参加者は、「記憶だけなどと曖昧ではないか」「都合の悪いことを隠しているのではないのか」「嘘をついているのではないか」と追及した。関電は「そんな会社だったと思われてもしかたありませんが・・・」等と答えていたが、突然、広報職員の一人が立ち上がり、大声で「嘘つきなど言われてはやってられない」等々叫びだし、机の上の自分の分厚い資料ファイルを床に叩きつけた。もう一人の広報職員は、驚いた表情で、おろおろしながら彼をなだめ、「話し合いは続けますので」と参加者の方を見ながら叫んでいた(交渉翌日、本人から電話があり、大声を出したことを謝罪し、今後も話し合いは続けていくとのことだった)。
 一体関電がいつ、破断配管が未点検だったことを知ったのかという点は、刑事事件との関係でも、また関電や保安院の事故調査報告との関係でも、大きな問題だ。事故1ヶ月前に知っていたとなれば、関電の責任は一層重大となり、これまで関電の主張を鵜呑みにしてきた保安院の責任も問われることになる。今後も追及を続けたい。