1/20関電交渉報告 その2
2次系配管の点検実態さえ明らかにせず居直る関電
大飯2号で類推して安全とした根拠は、14年前の測定値だった
配管の太りは測定位置のずれのため


 1月20日の関電交渉は、先に報告した1/13付質問書に関するやりとりに続いて、12/6付「2次系配管の点検状況、老朽化対策などに関する質問書」について関電の回答を聞き、問題点を追及した(この質問書に対しては昨年12月24日に電話で一部回答を聞いていたため、当日は、昨年回答のなかった点を中心に回答を受けた)。
 関電の回答は、基本的なデータさえ公開しないというものだった。データも公開せずに居直り続ける関電の姿勢が改めて浮き彫りになった。参加者からは、こんな姿勢ではいつまた事故が起きるか分からないと非難の声が続いた。

■2次系配管の点検実態さえ明らかにしない関電

 質問書の1番では、現時点で2次系配管の点検状況を問うている。主要点検部位とその他部位に区別して、点検済みと未点検箇所数を各原発ごとに示すよう求めていた。これに対して関電の回答は、「これまでの減肉調査の結果、現在、管理指針の見直しが行われています。そのため全てのデータについて公開することは考えておりません。最近美浜2と高浜2号が定検に入っているので、プレス資料などからそれを紹介します」として、小さなホワイトボードに美浜2と高浜2の数値を書き出した。参加者から「大飯3・4も定検が終わっているだろう」と言われると、その数値を書き出した。「高浜4も定検が終わっているだろう」と言われると、「高浜4は確認します」。そして「他のものは公開するつもりはありません」と居直った。「管理指針の見直しの最中なので、主要点検部位やその他部位の見直しもあるかも知れないので」というのが非公開の理由だという。全くもって理由になっていない。配管点検の現状がどうなっているのかということと、管理指針の見直しの最中であるということは、全く別問題だ。さらに、事故を起こした美浜3号については、「現在全数点検しているので、主要部位とその他部位を分けた発表はしない」とまで言う。なぜかと問うてもそれ以上何も言わない。よほどまずいことがあるのかと疑わざるを得ない。
 関電の配管管理状況は、点検済みと言っても、点検した時期が10年以上前だという場合が多々ある。そのため、前回点検が10年以上前の箇所はどれくらいあるのかを質問していた。これについては、データの精査が必要なのですぐにでる形にはなっていないという。「一覧表のようなものにはなっていないのか」と問うと、「なっていません、すぐには出ません」。いったいどんな管理をやっているのかと批判の声が飛ぶ。さらに、各原発ごとに最大減肉率を出すよう質問していたが、これについては、「最大減肉率は問題ではない、意味があるものではない」と語気を強めた。しかし、「保安院は減肉率の平均値を用いて現行の管理指針は基本的に問題ないと言っているではないか、平均ではなく最大減肉率で減肉の進展速度や管理を問題にしていかなければならない」と反論されると、何も言えない。
 関電が唯一明らかにしたのは、別紙にある、わずかな配管点検状況だけだ。関電は「事故対応に追われており、質問に答える作業に対応することはできない」、「データ公開に今は取りかかる気はない」等と繰り返した。交渉参加者は一同に、「都合が悪いから公開したくないなら、そう言ったらどうだ」、「市民団体には公開したくないということか」、「こんな姿勢だから、事故が起きるのだ」、「また同じ事故が繰り返される」と怒りが爆発した。基本的なデータであるにもかかわらず公開しようとしない関電は、年が明けてますます居直りの度合を強めていた。

■大飯2号で類推して安全だと判断した根拠は、14年前に測定した前後部位の測定結果だった

 大飯2号では、主要点検部位である配管4部位(第5ヒータ空気抜き管)について、25年間一度も検査をせず、同じ配管の前後の部位の状況から安全だと類推していた。その類推の基にした前後の部位はいつ測定していたのかを問うていた。関電の回答は驚くべきというか、やはりというか、ぞっとさせられる内容だった。
 類推して安全と判断した根拠は、前後部位の10年以上も前に測定した値を基にしていた。「前後の部位であるスケルトン番号91−41部位は1995年4月に測定し、減肉率は0.1×10−4o/時、これを基にした2004年8月時点での余寿命予測は14.8年。スケルトン番号94−42部位は1991年4月に測定し、減肉率は0.289×10−4o/時、これを基にした2004年8月時点での余寿命予測は17.2年」。だから当該4部位は測定しなくても安全だと判断したという。測定したのは、1995年、1991年だ。すなわち10年、14年前の測定値から類推し、さらにその測定から10年以上たった現在の余寿命を予測して、それを根拠に、別の部位(4箇所の部位)を安全だと類推していたのだ。全くもってずさんな極まりない管理の実態だ。
 交渉の最後のほうで再度この問題に立ち返ったとき、関電は「単に2箇所だけのデータで判断したのではない、それ以外のデータもふまえて判断している」と言い出した。「それでは、今度それ以外のデータも示してください」と言うと、準備していたらしく、突然数値を読み上げ始めた。スケルトン番号91−37〜91−45だという。測定時期は下記の通り。
    91−37 1991年4月
    91−38 2001年6月
    91−39 1991年4月
    91−40 1995年9月
    91−43 2004年2月
    91−44 1991年4月
    91−45 1991年4月
 ほとんどが古い測定値ばかりだ。関電は「01年、04年もある」と、この一言を言いたかったのだろうが、かえって古い測定値ばかりだと印象づけるものだった。
 関電はしきりに「類推して点検を省略したのではない」、「測定しないと決めていたわけではない」と繰り返し、「当該配管は05年に点検予定になっていた」などと語り、「点検省略ではなく、他から類推して評価していた」と強調した。しかし主要点検部位であるにもかかわらず、25年間も測定せずにいたことは、点検省略と同じではないかと追及されると「そういわれれば、はあ」と答えるだけ。
 さらに、大飯1号の主給水管で3箇所は激しい減肉があったが、1箇所はほとんど減肉がなかったことについて、その後、何か解明されたのかと問うと、「まだ分かりません」と愛想笑いをしながら答えた。そんな状況で他の配管から類推して安全などという手法はとうてい許されない。減肉が起きていない箇所を基に類推すれば、ひどい減肉があっても安全だとの判断になってしまう。参加者からは「大飯1号でまだ分かっていないということを重大に受け止めるべき」との厳しい指摘があがった。

■管厚が太っているのは、測定位置がずれているため
    ↓
 それで余寿命が延びて安全!?


 関電の配管点検結果を見ていると、配管肉厚が前回の測定値より大きくなり(減肉ではなく肉太りしている)、そのため余寿命が500年になったり(最長は999.9年)している。そのため、この配管の肉太りの原因についていくつかの例を使って質問していた。結局関電の回答は、「測定位置がずれたために、前回よりも管厚が大きくなっている」と言うものだった。「配管の防錆加工は何年かでやり直すため、測定位置であるマーキングの位置がずれることがある」とのこと。測定位置がずれて肉太りし、余寿命が引き延ばされ、安全だと評価しているのが実態ということだ。そもそも、測定位置がずれたのでは、まず減肉率が意味をなさない。その減肉率から余寿命を出す方式で行う減肉管理の意味がない。これで安全だと言われても誰も信用できない。
 さらに、高浜1号の給水ポンプミニマムフロー管(スケルトン番号51−67)では、過去2回の最小測定値は14.3ミリとなっているが、昨年9月の最小測定値は15.2ミリと肉太りしている。そして点検結果整理票の備考欄には「過去の測定値より1〜2o厚く計測された。配管取替実績はなく、7、11回の測定値に信頼性がないため、余寿命は今回データのみで評価実施」と書かれている。この「信頼性がない」と判断した根拠について質問していた。関電の答えは「前回定検と今回で測定位置が異なり、今回の値を採用している。測定位置などの測定条件の違いによりデータがばらついたと考えている」という。しかし、この配管は、全ての測定点でほぼ一様に1ミリも肉太りしており、データのばらつきはない。測定位置が変わったからというのは理由にならないと追及されると、「そうですね、そうだと言ったらよくありませんが」等といいながら「データがばらついたと考えている」を繰り返す。結局、前回データについて「信頼性がない」とする根拠を示すことはできなかった。そんな状態で、関電の配管管理について「信頼性がある」とどうして言えるのかとの声があがった。

■「減肉傾向」とは、3回続けて減肉が起きること

 関電が11月25日に発表した配管の老朽化対策では、「減肉傾向が認められるもので余寿命10年未満のものは、今後数回の定検で取り替える」となっている。「減肉傾向が認められ」なおかつ「余寿命10年未満」という限定がついている。この「減肉傾向が認められる」とはどういう意味かを聞いていた。関電の答えは、「シンニング部以外で、3回続けて減肉が起きているもの」という。上記のように、測定位置がずれて肉太りになれば、配管取替の対象ではなくなることになる。
 さらに、老朽化対策は、運転開始以来30年を経過した原発に適用するとしている。しかし、美浜3号事故が運転開始28年目に起きており、さらに実稼働時間では美浜3号が関電の原発中最長である。また、最も古い美浜1号(運転開始から34年)と大飯2号(運転開始から25年)の実稼働時間は約15万時間とほぼ同じである。それらを考慮すれば、少なくとも運転開始以来25年を経過した原発に老朽化対策を適用すべきではないかと質問していた。これに対して関電は、昨年末の電話回答で「プラントの実稼働時間に関係なく管理はできる」と答えていた。この点について確認すると、「全ての部位について適切に管理を行っていれば美浜3号のようなことは起きないので、実稼働時間は関係ない」とずれた答を返してきた。減肉率の計算等の配管管理は実稼働時間を使っているではないかと言うと、「管理には使っていますが、点検すべきところを点検しておれば、運転年数に関係なく管理できる」と繰り返す。こんな姿勢では、老朽化対策をやる必要性についても認めていないということになってしまう。全く反省なしである。

■関電は配管管理に関する全ての情報を公開せよ

 関電のホームページ(hp)では、配管点検の結果など、その概要しか出ていない。福井県安全対策課のホームページでは、関電が県の安全専門委員会に提出した詳細な情報が掲載されている。県の資料を見なければ、配管のスケルトン図や配管の測定履歴などは分からない。このことについて、関電hpでも詳細なデータを公表すべきだと要求した。
 関電の回答は、「データを公表するかどうかは現在も検討中」と言いながら、「概要はhpで紹介している」、「マスコミから要求があれば詳しいデータも渡す」、「福井県は県の判断」と他人事のようである。参加者からは「事故を起こした当事者の関電が公表するのが当然だ」との批判。関電は「なぜ全てを公開する必要があるのか」、「必要と判断したものを公開している」等と居直る。「関電が判断したデータではなく、全てのデータを公開すべき」と追及。結局、「hpで公開してほしいとの要望があったことは伝えます」と言葉を濁した。

 関電も国も、3月には事故の「最終報告」を出そうとしている。そしてその後には、管理指針の見直しと称して、類推して点検を省略したり、代表部位のみの測定で点検を省略したりという、配管検査の合理化=検査の手抜きを合法化しようと狙っている。これらの動きに対し、今回の交渉で明らかになった関電の配管管理のいい加減な実態、無責任な実態をもとに、事故の責任追及と配管管理の強化に向けて、運動を進めていこう。