1/20関電交渉報告 その1
■技術基準を用いずに評価し、「念のため」配管を取り替えたことについて
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 岸田副社長は謝ったかもしれないが、「念のため」と書いた意図を確認する
■技術基準とは別の方法で健全性を判断してもいいが、
 手順を社内基準に定めなかったのが悪かっただけと保安院に言われた
■条文に「ただし書き」があったので使っただけ−余寿命を延ばす意図ではない



 1月20日の大寒、大阪でも非常に冷え込んだ日に今年初めての関電交渉を行った。関電の新社屋1階のやたらと広い倉庫のような部屋で、5時過ぎから3時間以上の交渉となった。関電からはいつもの広報3名。市民側は約20名。カーペットもなく、声の反響の激しい、暖房も効かない部屋での交渉となった。寒さ以上に、関電が回答した事故に対する認識、配管管理に関する認識には、もっとぞっとさせられた。
 質問書は12月6日付の「2次系配管の点検状況、老朽化対策などに関する質問書」と、1月13日付の「美浜3号の配管30カ所の点検結果等に関する質問書」の2つ。今回はそのうち、まず1月13日付質問書のやりとりについて、重要なポイントを報告する。

 関電は昨年、美浜2号の主給水管等で、火力の「ただし書き」を用いて余寿命を引き延ばしていたが、これは原子力安全・保安院から不適切だと指示された。それで今度は、実機のデータを用いて配管の評価をやり直し、健全性に問題はないが「念のために」配管を取り替えると発表した(昨年10/8関電プレスの12頁)。「念のため」配管を取り替えたという美浜2号の主給水管は、最小測定値は17.4ミリ(04年8月)、技術基準の必要最小肉厚は17.5ミリ、既に最小肉厚を割り込んでいる。しかし関電は、技術基準にはない「実機材料データ」で評価し直し、最小肉厚は15.87ミリ、余寿命8.3年としていた。この実機材料データを用いることについて、関電からは驚くべき見解が飛び出した。

■美浜発電所で技術基準にはない実機材料データを用いて評価し「念のため」配管を取り替えるとしたことについて
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 岸田副社長は謝ったかもしれないが、「念のため」と書いた意図を確認する


 関電はこの問題について、9月5日付社内文書で「技術基準を厳格に適応する」ようにしたと回答した。すなわち実機材料データを用いた評価は行わないようにしたという。その根拠として9/27付関電の「中間とりまとめ」の8頁を読み上げた。そこでは、「一部、技術基準解釈の『ただし書』の不適切な適用があった。これを改め、技術基準の適用を厳正に行い、技術基準の解釈に明記されている規定値を用いて運用することとし、実施している(9月5日決定)」と書かれている。これは「ただし書き」について不適切だと述べているだけではないのかと問うと、いや、実機材料データを使ってもいけない、ということだと回答する。
 それでは、10/8付文書でも、まだ実機材料データで評価し安全だと判断し、「念のため」配管を取り替えると関電プレスでも書かれているのはどういうことか、反省しているのかと追及した。すると、「『念のため』と書いた意図を確認します」と言い出した。今頃確認するとはどういうことかと批判の声があがる。さらに、10/8の第9回福井県安全専門委員会でもこのことが問題になり、岸田副社長は、実機材料データを使用したことを「誠に申し訳ないと思っている」と謝罪し、資料を訂正すると述べている(議事概要1頁下〜2頁目はじめ)。副社長が謝罪しているのに、確認するとはどういうことかと問うと、「岸田は謝ったかも知れませんが、私どもの方は調べさせていただきます」、「なぜ『念のため』としたのかその意図を確認します」と言い張り、反省の色もない。副社長は資料も訂正すると言っているので、訂正した資料を文書で示すよう要求した。

■ 実機材料データで健全性を判断してもいいが、
 評価の手順を社内基準に定めずにやったのが不適切だと保安院に指摘されている。


 実機材料のデータを使って余寿命を引き延ばしていたことについて、関電は下記のように何度も強調した。

関電 性能規定化している趣旨をふまえて、保安院のほうが書いていますが、(技術基準の)別表によらない方法でやってもいい、ただし管理指針、手順を定めず実機材料のデータで判断したということが不適切なやり方であるということを9/6か9/14の事故調の資料で書いてある。

関電 実機材料に関しては、技術基準に明記されていないものでも健全性の証明は可能であろう。ただし、評価の手順を社内基準に定めずにやるのは不適切だと保安院から指摘されている。9/6の事故調の資料です。
市民 保安院の指摘は、社内基準に定めれば、技術基準でなくてもいいという含みがあるということか
関電 別の方法でやってもいい、ただ手順に明記しなさいと。
市民 そういう風に保安院から指導されたと考えているわけですね。
関電 はい。

市民 技術基準では実機材料を使っていいなどとどこにも書いてないでしょう。
関電 使ってだめとは書いていない。
市民 ほんとにそういう解釈なのか。

 すなわち関電は、原発の2次系配管の評価について、技術基準は性能規定化されているため、技術基準の別表に示されている数値を使わなくてもいいと基本的に判断している。関電の配管管理の考え方の基礎には、こういう手法が今も色濃く残っている。問題だったのは、その手順を社内基準に定めていなかったことだけで、その手順を踏んでいれば問題なしというわけだ。そして保安院からも、そのように指摘されたと言う。
 他方、保安院は、実機材料データを使って評価することに対して、明らかに技術基準違反だと判断している。例えば、昨年10月8日の第9回福井県安全専門委員会では、保安院の梶田検査課長は「念のため取替えると記載しているが、これは関西電力の技術基準に対する認識が不十分であると言わざるを得ない」と発言している。また、今年1月13日に保安院が発表した、「中間とりまとめ後の配管肉厚管理に係る対応の進捗状況及び今後の方向性について」の2頁目には、「実際には、過去に、余寿命が2年以下になった場合であっても、実機の運転圧力やミルシート[引用者注:実機材料データのこと]による許容引張応力、又は『発電用火力設備の技術基準の解釈について』第4条(材料の許容応力)第1項第1号のただし書きによる再評価を実施し、取替計画を立てていない事例が認められた。」と記載している。その具体的事例については、関電以外の電力会社について、昨年12月13日の第7回事故調資料7−1−4「実用発電用原子炉に対する平成16年度第2回保安検査結果等について」の中で、敦賀2号等の事例をあげている。
 はたして保安院は、関電だけには、社内基準に明記すれば実機材料データで配管評価を行っていいと言っているのだろうか。確認する必要がある。

■条文に「ただし書き」があったので使っただけ−余寿命を延ばす意図ではない

 交渉全体を通じて関電は、火力の「ただし書き」を使ったり、実機材料データを使ったりしたのは、「条文に『ただし書き』があったから」とか「健全性を確認するため」と繰り返し、配管の余寿命を引き延ばすためにやったとは認めようとしなかった。それではなぜ、余寿命が少ない配管にだけ「ただし書き」や実機材料データを使用したのか、全ての配管評価に適用しなかったのかと問われても、「健全性を確認するためにやっただけ」、「余寿命を引き延ばすという意図でやったのではない」と居直り続けた。やはり何も反省していない。