11/2関電交渉報告
美浜3号機事故の原因について──
「『関電の品質保証が機能していなかった』という保安院の指摘は認められません」
「単に肉厚管理が機能していなかっただけ」と限定をつける関電

大飯1号での配管の大幅減肉について──
「国の技術基準を下回る減肉だったが
違法状態だと知らなかったのだから違法ではない」



 11月2日、午後5時から約3時間、美浜3号機事故に関して関西電力と交渉を行った。事故の原因として原子力安全・保安院は「関電の品質保証、保守管理が機能していなかった」と指摘しているが、関電はこれさえ認めようとはしなかった。また事故後明らかになった違法な点検等についても「違法だと認識していなかったのだから違法ではない」等と驚くべき回答を繰り返した。相も変わらず反省の色さえ見せない関電の姿勢を厳しく追及した。いくつかのポイントについて報告する。

■国の指摘を認めず「ただ配管肉厚管理に関してのみ品質保証が機能していなかっただけ」
 美浜3号機事故に関する保安院の「中間とりまとめ」(9/27)では、事故の直接的原因を「関西電力鰍フ品質保証、保守管理が機能していなかったこと」にあるとしている。これを認めるかという最初の質問について、関電はながながと文書を読み上げ始めた。「今年2月にはMOX燃料調達に関する品質保証体制は整っていると国から認められており・・・・」。「今回は、配管肉厚管理に関する品質保証が問題でした」。耳を疑う回答だ。「肉厚管理だけが問題だった」と強調した。「保安院が言っているのは、関電の全社的な品質保証が機能していないということだが、それは認めないということか」と問うと、「そのとおりです、肉厚管理に関してのみです」とあくまでも限定をつける。しかしMOXに関してお墨付きをもらったという高浜3号でも、定期安全管理審査(自主検査)に係る保安院の評定は、美浜3号機の事故後BランクからCランクに格下げとなった。その理由は「当該審査を受けた組織は、定期事業者検査の実施につき重大な不適合があり、品質マネジメントシステムが機能していない」というものだ。「ランクCに落とされている。肉厚管理だけとはどこにも書いていない」と追及しても「肉厚管理に関してのみ・・・」を繰り返し、国の指摘や処分には大きな不満がありますと言わんばかりの態度だ。
 火力発電所の定期検査データねつ造が発覚すると「火力だけで原発は大丈夫」、「火力発電では2500人の従業員のうち処分したのは34人だけ。わずか34人に問題があっただけで、全社的に遵法意識が存在しないということではない」と藤社長は繰り返した。そして今回は、「配管肉厚管理だけの問題で、全社的な品質保証の問題ではない」という。まるで底なし沼だ。これが関電の企業体質だ。参加者は怒りと同時に、こんな会社が危険な原発を運転し続けていることに、改めて空恐ろしさを感じた。

■「他の原発から類推して安全」という手法は保安院に不適当と言われたが、 「同じ原発の配管の周辺箇所から類推して安全」という手法は問題なし(大飯2号 25年間検査なしのケースに関して)
 次は、事故後に次から次へと明らかになった関電の違法な点検行為などについてである。
 関電が問題があると自ら認めた検査等は、美浜1・2・3での火力基準の「但し書」を適用していた8箇所と、大飯1号での配管外側から肉盛り溶接を行ったいた1箇所の合計9箇所だという。それに点検リストもれのあったスチームコンバータの4箇所と、他の原発から類推して安全と判断し一度も検査せず、点検リストから漏れていた11箇所という。 この回答は2つの点で問題だ。まず、火力基準の「但し書」を適用していた問題について、関電は「問題ないと思ってやっていたが、火力の基準を原発に適応するのは不適当と保安院に言われた」と言う。この「但し書」問題とは、火力発電で許容応力を計算する場合に用いるものである。圧力の変動がある火力発電の場合、許容応力の計算では、応力に1.2をかけることが認められている。しかし、火力発電所でも、配管の肉厚計算にこれを適用することはない。関電が行っていたのは、火力発電所でも行わない、配管肉厚計算で、意図的に最小肉厚を小さく算出し、配管の余寿命を大きくしていたのだ。しかし関電はこのことを認めようとせず、「いや、火力発電で使っていたものを原発に適応したから問題だと指摘された」と繰り返すばかりで、意図的に自らが犯した過ちを小さく見せようとしていた。この点については、「火力でもやらないことをやっていたと保安院も言っているが」と問うと、困ったような顔をしていた。
 さらに問題なのは、9箇所以外にも多くの違法な点検が存在するのにそれを認めようとはしなかったこと。大飯2号では、25年間1度も検査されていない箇所が6箇所もあった。この大飯2号の場合は「問題なし」なのかと問うと、「同系統の配管の類似箇所等で安全性を確認しているから問題はない」と言う。これでは、「他の原発から類推して安全」として1度も検査して来なかった箇所と同じではないか。それは保安院から『不適切』と指摘されている」と批判すると、「いえ、他の原発から類推したのではなく、同じ原発の配管の周辺箇所から類推している」と繰り返し、保安院がいう指摘にはあたらないと意地を張って違いを強調した。大飯1号では、今年7月に主給水配管で大幅減肉が見つかった。このとき4系統の配管のうち1つだけは減肉の割合いが小さいかった。このように、配管減肉にはばらつきがあるものだ。減肉の小さい箇所で類推すれば安全ということになってしまうではないかと追及しても、「いや、ちゃんとやっている。問題ない」と繰り返えした。これが関電の「安全思想」だ。

■「違法状態になっていると知らなかったのだから違法ではない」(大飯1号減肉配管)
 しかし、関電の「危険思想」はこれでとどまるものではなかっった。参加者全員が驚き、呆れ、そして怒ったのは、次の問題だ。大飯1号では、7月の定検で国の必要最低肉厚を下回る減肉が見つかった。定検で見つかるまでの約5年間は、違法運転をしていたことになる。違法運転をしていたと認めるかとの質問に対し、「検査で見つかったので配管を取り替えました」とだけいう。違法運転をしていたとの認識はないのかと何度も追及されると、「違法かどうかは保安院が判断すること」等と言いだし、参加者全員が「関電は自ら法を守るという意識はないのか」と怒り追及した。すると関電は、「違法と意識して運転しているわけではないから違法にはあたらない。知らなかったのだから違法ではない」ととんでもない発言だ。「泥棒が違法だとは知らなかったから違法ではない、私は法律を犯していない」という話しが通用するとでも思っているのか。「大飯1号の減肉した配管は、国の法律で定められている技術基準を満たしてないということは認めるのか」と問うと「技術基準を満たしていなかったこと、必要最低肉厚を割り込んでいたことは認める」と言う。しかし、「それを知らずに運転していたのだから違法ではない。もちろん、技術基準を割り込んで運転していたことを知っている今でも、違法とは認識していない」と頑なに繰り返す。「知らなかったから法を犯したことにはならない」の答弁は、余りにも苦しすぎる。これでは、検査さえしなければ、違法ではないということになる。こんな論理にしがみつくとは、関電が窮地に陥っていることの現れでもある。関電は、遵法意識などどこかに飛んでしまっている。
 保安院は、大飯1号の状況は違法な運転にあたると言っているが告げると、黙ってしまった。
 大事故を引き起こしておきながら、自らの違法な運転や手抜き検査については一切反省していない。反省しないどころか、老朽原発にむち打つ危険な運転を続けるためには、今後もこういうことを続けていくというわけだ。

■「公開討論会はメリットがないので開かない」
 質問書では、美浜事故について公開討論会を開くよう要求している。しかし関電は「討論会は開きません。私達にメリットがないので」と本音を漏らした。さらに、「原因究明が終わった段階で説明会の必要があるか検討する。しかし100人・200人でやるような説明会は行わない」と。事故を起こした側が「メリットがないから」などと言える立場にはない。自らに都合の悪いことが余りにも多すぎるため、それを公の場で追及されることを避けたいというだけだ。
 さらに、関電は9月27日に報告書を出し「配管肉厚管理の更なる充実」として、今後、配管肉厚の管理の方法を変更するとしている。しかし、「3回以上の計測を順次実施していく」とは、連続した3回の定検で計測するわけではないこと、管理指針の「その他部位」は減肉が起きにくいので、すぐに点検する必要はなく約4年間で調べればいい等というのがその内容だった。さらに、高浜4号では、次回定検で余寿命が4年になる配管について、「次回定検で取替を計画する」と書かれている。余寿命4年のものも取替を「実施するのか」については即答できないため、11/4に電話で回答することになった。電話回答では、「取替を計画する」とは、「取替を実施する」ということだと明確な回答があった。なぜ「取替実施」と書かないのかについては、「慣例として、取替を計画するという言い方になっているから」とのこと。しっかり監視していかねばならない。他方、次回定検で余寿命1年と評価しているのに、「測定を実施する」と書かれている配管の部位がある。これは、配管を取り替えて初めての測定なので、減肉状態を確認するために、取替ではなく、再度測定を行うということだった。
 美浜1号と高浜4号でも、美浜3号の破断箇所と同じ部位が点検リストから漏れていたのではないかという問題については、「調査中です」として回答を保留した。8月17日から現在まで「調査中」だという。
 また、追加質問で出した、タービン建屋に人が居ることを知っていながら、なぜ早期に主蒸気隔離弁を閉めて、破断口からの蒸気噴出を止めなかったのかという質問については、「主蒸気隔離弁を早期に閉めるというやり方もあったのかもしれないが・・」と言いながら、「脱気器水位制御弁を閉めたので」と繰り返すだけたった。