−8/11美浜事故関電交渉報告 速報−

4名の死亡について、責任を認めない関電

「4人の死亡は申し訳ないが、関電に責任があるかは言えない」(関電)
「他の原発を止める必要なし」「高浜1号では、96年の検査で安全を確認しているから」(関電)
「プルサーマル計画について進めるか中断するか言及できる状況にない」(関電)

 8月11日、午後5時から約3時間にわたり、関西電力本店において、広報部の課長3名と交渉を行った。約30名の市民が参加した。この交渉は、7月22日に提出済みの「関西電力の『企業文化』とプルサーマルに関する質問書」に対する回答を聞くために、美浜3号機事故以前から設定されていたものであった。そのため、一応はその回答を聞くことから始めたが、余りにも抽象的な文言を長々と読み上げるだけなので途中で打ち切り、美浜3号機事故に対する、関電の責任と基本姿勢を追及した。
 関電は、4名の作業員を死に至らせ、多数の重傷者を出したことについて、自らに責任があることを認めようとはしなかった。この姿勢がすべてを物語っている。他の原発を直ちに止めた上で点検することは拒否し、プルサーマル計画の停止要求も認めようとしなかった。

「4人の死亡は申し訳ないが、関電に責任があるかは言えない」(関電) 
 美浜3号事故についての交渉冒頭で、「4名の作業員の方々が亡くなられ、多くの方を負傷させたことについて、責任を認めるか」と関電の責任を質した。これに対して関電は、破断の原因に関係する説明を長々と続け、責任に触れようとしなかった。会場から怒りの声がわき上がり、「それでは藤社長は土下座して何を謝っているのか」と追及すると、「関電の建物の中でこういうことが起こったということが申し訳ないのだ」と答えた。何度訊いても「原因を究明中であり、責任云々については言えない」と繰り返し、決して「責任がある」とは認めない。
 しかし、「原発の所有者は関電であり、その管理責任は関電にあるのではないのか」と追及すると、「確かに管理責任は当社にある」とは認めた。そこで「原発の管理責任がありながら、28年間も検査せず、安全に管理・運転してこなかった関電に責任があるのは当然ではないのか」と追及すると、関電は答えに窮し、黙り込んでしまった。結局、最後まで「責任がある」とは認めなかった。
 このような姿勢を関電がとるのは、刑法上の責任が追及されるのを恐れるためであろう。結局、藤社長の土下座は、責任を認めないための単なるポーズに過ぎないのである。

検査をしなかったこと、検査の必要に迫られながらそれを無視したことが事故の原因
 破断した配管は、運転開始以来28年間、1度も検査をしていなかった。これが今回の事故の原因である。しかし関電は、このことを認めようとはしなかった。関電は、「昨年11月に日本アームからリスト漏れを知らされていたにもかかわらず、今回の定検で良いと判断したことは結果として誤りであった」と、あたかも昨年11月時点での判断ミスのみが問題であるかのように事柄をすり替えた。そして「なぜそう判断してしまったのか原因を調査中」と「調査中」を口実に逃げ回った。
 しかし関電は、そもそも1986年の米国サリー原発での二次系配管破断事故の教訓を重視しなかった。さらに、今年7月に大飯1号の2次系主給水管で50%の減肉が発見されているのに、ただそこを取り替えただけだった。このときは美浜3号の当該部分の検査が漏れていたことが判明していたのに、そこを直ちに検査しようとはしなかった。
大飯1号の当該個所は、約15年前の平成元年に検査されたときは「軽微な減肉」で、減肉があれば行うはずの寿命予測さえしていない程度だった。それが約15年で予想もしないほどの減肉が起こっていたのである。寿命予測がいかに当てにならないかを大飯1号の減肉が如実に示したのに、その教訓をくみ取ろうとしなかった。
「なぜこの時点で、リスト漏れと知っていた美浜3号の配管を検査しなかったのか」と追及すると、「美浜3号の当該部位については、他原発の同等箇所で実施した点検によって問題ないと評価していた」と言うのみであった。
また関電は、「リスト漏れが発生した場合に上に報告するマニュアルがなかった」とし、原子力事業本部長・火力事業本部長である松村常務が、リスト漏れの事実そのものを知らなかったと語った。原発部門のトップがリスト漏れを把握していなかったのである。この事実は我々から見ると、明らかに関電のトップに責任があることを示している。しかし、交渉の中では美浜原発の範囲から情報が関電中央に伝わらなかったことを一面強調しているようでもあった。トップに刑事責任が及ばないための布石とも考えられる。12日の日経新聞記事では、美浜発電所の機械補修課の責任が浮上している。責任を下部職員と下請け検査会社に押しつけようとする傾向に最大限の警戒をする必要がある。下請け検査会社は昨年4月の段階で関電に検査リストから漏れていることを報告したという記事がインターネットで流れていた。そうであれば、昨年の定期検査で検査しなかった関電の責任が一層明らかになる。しかし、交渉で関電は「それは誤報です。関電に知らされたのは昨年11月」とやけに強調していた。

「他の原発を止める必要なし」「高浜1号では、96年の検査で安全を確認しているから」(関電)
 交渉の前日の緊急抗議行動では「全ての原発を停止すること」を要求した。これに対し今回の交渉で関電は、「原因究明に全力をあげているところ」「破断した箇所については、他の原発で安全だと確認している」と繰り返し、要求を拒否した。そして「これまでに点検を実施していないことが確認された場合は、直ちに点検を実施する」と付け加えた。
 そこで、「なぜ原発を止めて検査しなくても、同様の破断事故が起こらないといえるのか、根拠を示せ」と追及した。関電は「検査記録で確認しました」という。一体いつの検査記録なのか、いつの検査データを見て安全だと言っているのか、と追及すると、なんと「例えば、高浜1号の場合、96年に実施した点検が適切に評価されていることを確認しているので、安全性は確認できる」と言うのである。
 原発の実態を見るのではなく、古い検査記録の書類上のチェックだけで安全性を確認するようなやり方は、今度の事故で完全に破綻している。このことを関電は4名もの死者を出したいまもまだ認めようとしていないのである。関電に怒りの声があがった。
今回の事故以前から、検査記録による安全確認、関電の机上の計算があてにならないことは、事実でもって示されてきた。例えば、今年5月には、大飯3号機の原子炉上蓋で日本で初めて貫通亀裂が見つかっているが、これも「傷の進展予測から今後20年間は上蓋で傷は発生しない」としていた関電の予測を完全に裏切った。実際には2年で貫通割れに至った。関電は、従来の姿勢にしがみつき、それを原発を止めないための根拠にしているが、これでは明日にもまた破断事故が起こる危険性がある。

「プルサーマル計画について進めるか中断するか言及できる状況にはない」(関電広報部)
 緊急抗議行動での「プルサーマルを断念せよ」という要求について、今回の交渉で関電は、「プルサーマル計画について進めるか中断するか、現状では言及できる状況にはない」と答えた。しかし、この関電広報部の発言は、藤洋作社長の発言とまったく食い違っている。藤社長は、事故直後の関電本社での記者会見で、プルサーマル計画について「従来通り進めて行きたい」と述べたが、その発言をいまだに撤回していない。
 しかし、この藤社長の姿勢に対して、福井県知事は12日にこれまでの信頼関係は壊れた、プルサーマルより安全問題が先だと述べた。実際、プルサーマルの前提となっている品質保証体制やトップマネジメントなど、どこにもないことが今回の事故を通じて明らかになった。
 関電は品質保証体制は万全であるとしてプルサーマルを再開しようとしてきたが、その前提はすべて崩れた。プルサーマル計画は撤回するしかないことが今回の事故で誰の目にも明らかになった。
 関電は、4名もの死者を出しているにもかかわらず、その責任を認めようとしなかった。徹底して、関電の責任を追及していこう。



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