5月21日関電交渉報告 その3
(質問6)


「フランスやドイツで豊富な実績があります」と言いながら
  少数体試験までこっそりと持ち出す「海外実績」
「高浜計画のような高い燃焼度等の実績はないが、国のお墨付きがある」(関電)

(質問)
6.政野澄子氏の「プルサーマルは、海外で広く行われていると聞いていますが、安全性について、海外での評価はどうなのでしょう」という質問に答えて、貴社の藤谷氏は、「プルサーマルは、フランスやドイツで30数年の豊富な実績があり現在でも安定的に行われています。わが国でも、美浜発電所などで実証試験が行われ安全性が確認されています」と答えています。
6−1.高浜3・4号機で予定されているプルサーマル、美浜発電所の実証試験、フランスをはじめとする海外の原子力発電所*でのMOX燃料を使った実績について、次の3つの指標を示してください(*注:海外については、少数体試験ではなく、軽水炉MOX炉心の実績を各炉ごとに示してください)。
(1)全集合体数に対するMOX燃料集合体数の比
(2)プルトニウム富化度(全プルトニウムと核分裂性プルトニウムについて)
(3)MOX燃料集合体の平均燃焼度の最高値
    ↓
(関電の回答)
「海外情報については適切に把握しておりますけれども、個々の詳細なデータをすべて当社の方から公開することはできません。他社のデータだから。」

・高浜3・4号のMOX計画
(1)157体中40体のMOX燃料集合体の装荷。
(2)プルトニウム富化度 約11W%以下。
(3)最大燃焼度 45000MWd/t
・美浜発電所の実証試験 
(1)121体中4体
(2)Pu トータル3.8W% 核分裂性 3.1W%
(3)燃焼度 23000MWd/t
・フランスのMOX
(1)全炉心の3分の1程度
(2)プルトニウム富化度 7W%
(3)集合体最高燃焼度 51000MWd/t以上
 燃焼度はグラブリーヌ4号、ダンピエール2号のデータ。そこでの集合体数はわからない。この2基を除けば42000MWd/t。
「フランス以外はわれわれ公表できない。ドイツはわからない。なぜないかわからない。フランスが1番実績が多いから(公表している)。個々のデータについては当社から公表できない。」

(質問)
6−2.美浜発電所でのMOX実証試験と高浜3・4号機で予定されているプルサーマルとでは、上の(1)、(2)、(3)の指標が大きく異なっています。なぜ、その相違が安全性にとってまったく問題にならないのか、理由を説明してください。
6−3.フランスで過去動いてきた、そして現在実際に動いているプルサーマル炉についても、上の(1)、(2)、(3)の指標は、高浜原発3・4号機で予定されているプルサーマルとは違っています。なぜ、その相違が安全性にとってまったく問題にならないのか、理由を説明してください。
    ↓
(関電の回答)
「現在の軽水炉でも運転につれてウラン燃料のなかにプルトニウムができ、ウランと同様にプルトニウムも原子炉内で燃焼しており、原子炉の出力のうち、平均して約30%がプルトニウムによるものです。MOX燃料は最初から10%程度までプルトニウムを添加しているだけであり、ウラン燃料と本質的な差異はありません。高浜3・4号機のMOX燃料の設計にあたっては、美浜1号機での少数体照射のみならず、海外での照射実績を踏まえ、現在のウラン燃料を使う原子炉と同等の安全性を持たせるよう設計し、評価しております。また、平成10年に国の安全審査により安全性に問題がないことを確認していただいております。」

 プルサーマルは海外でも多くの実績があるから大丈夫と関電は繰り返し宣伝している。関電のいう「海外の実績」とは、新聞広告のグラフにもあるように「装荷体数」だけだ。プルサーマルの内容を示す、富化度や燃焼度等については一切ふれていない。交渉ではまず、その海外プルサーマルの肝心の富化度や燃焼度などの詳細なデータについて問いただした。すると「他社のデータだから、個々の詳細なデータを当社の方から公開することはできません」とまったく無責任な回答が返ってきた。
 フランスでの「実績」については、平均富化度は「7W%」で、これはトータルプルトニウムについてである。集合体最高燃焼度は「51000MW/t以上」と、あたかも高浜計画より高い燃焼度での実績があるかのように思い込ませる回答をしてきた。それでは、これは何の数字なのかと確認すると、グラブリーヌ4号とダンピエール2号での数字だと回答。しかし、この2基の「51000MW/t以上」とは、少数体試験の数値である。私たちの質問書では、このような回答を予測して「海外については、少数体試験ではなく、軽水炉MOX炉心の実績を各炉ごとに示してください。」とわざわざ注釈で断ってある。にもかかわらず、関電は少数体試験の数値をこっそりと「実績」として示してきた。
 しかしこのウソはたちどころにばれてしまった。「51000」が少数体試験であることを市民側から指摘されてしまったため、今度は「一般にはフランスの燃焼度は42000」ですと言わざるを得なくなった。高浜プルサーマル計画以上の実績があるかのように見せるために故意にウソをついたのだ。あまりに底の浅いウソに参加者は怒り心頭。「騙すつもりか」と非難の嵐。関電は、「騙すつもりはなかった」と言い訳。それなら、「主管部門が少数体試験ということを知らなかったということだな」と突っ込まれる。すると関電は、にやっとしながら「そうです。主管部門は知らなかったのです」とこの場では言わざるを得なくなった。
 結局、通常の「フランスの実績」という意味での最高燃焼度は「42000MW/t」である。高浜計画では、トータル富化度が約11%以下、最高燃焼度が45000MW/tである。これでは、「海外での実績」によって高浜プルサーマルの安全性が保証されるとはとても言えない。国内でも海外でも実績がないような高い富化度や高い燃焼度のMOX燃料を高浜で使いますが認めてくださいと言うべきだと批判の声が相次いだ。
 フランスに次いで実績がある国として関電が挙げているドイツはどうかと確認すると、「フランスは1番実績が多いから(公表した。)フランス以外は我々は公表できない。ドイツはわからない。なぜ(データが)ないかわからない。」と耳を疑うような回答が返ってきた。関電にとって都合のよいデータがあれば公開するが、都合の悪いデータは「わからない」と言って、やり過ごそうとの矛盾した態度に、参加者の怒りが集中した。
 関電が自慢げに宣伝で繰り返し使っている国内外での「実績」とは、結局、高浜3・4号で使われるMOX燃料よりも富化度も燃焼度も低いものではないかとの追及に対して、関電は「国の安全審査により安全性を確認していただいております」との文言を繰り返すばかりだった。それに対し、市民からは、「それなら、『国内外で実績があるから安全』という宣伝はウソで、『国に審査してもらっているから安全』と書くべきだ。新聞広告の説明は読者をだますことになる」と厳しい批判が相次いだ。