5月21日関電交渉報告 その1
(質問1)


 5月21日、午後5時から約4時間にわたり、関西電力広報部の課長ら3名と交渉を行った。関西電力は、プルサーマル計画を進めるため、各種パンフレットや新聞広告等で、その利点を大々的に宣伝してきた。その宣伝広告に関して、先月20日に出した質問書に基づき、その内容や、根拠について説明を求めた。
 交渉に参加した市民は約30名。関電が用意した部屋は一杯になり、熱気であふれた。交渉に要した時間も約4時間と、長丁場になったが、交渉参加者は関電を厳しく追及し、プルサーマル宣伝の虚偽や詭弁が明らかとなった。その内容について順次、報告したい。
 なお、今回の交渉では、5月6日に明らかになった大飯3号機の上蓋管台部での漏洩問題についても、関電側とやりとりをおこなった。管台問題についても、報告したい。

プルサーマルで「ウランは数倍から数十倍利用年数が延びます」との宣伝はまったくのウソ
「世界の全原発(約430基)でプルサーマルを実施し、回収ウランを全量使用してもウランの利用年数はせいぜい1.25倍」と関電認める

(質問)
1. プルサーマル利用によるウラン可採年数の延びについて
 エネルギー資源の可採年数のグラフにおいて、「※プルトニウムの利用によりウランは数倍から数十倍利用年数が延びます」と説明されており、同時に「※高速増殖炉での利用を含む」と書かれています。
 質問1.この広告全体の主旨はプルサーマルの利点を宣伝することです。よって、日本でプルサーマル計画を実行すると、世界のウラン資源の可採年数(利用年数)はどれだけ延びるのですか。何基の原発でプルサーマルを実現した場合なのか等、前提条件と根拠を明確にして答えてください。
    ↓
(関電の回答)
 「使用済み燃料の再処理によって回収されるウラン、プルトニウムを有効利用することによって天然ウランとして約25%の資源を節約できると考えております。」


<2004.2.14付「福井新聞」掲載の関電広告より>
 「約25%の資源を節約できると考えております」。関電がこう回答を読み上げた後、交渉参加者全員、一瞬言葉を失った。「質問1」にまったく答えていない、あまりにもトンチンカンな「回答」だったからだ。「質問1」は、プルサーマルによってウランの利用年数(可採年数)が何年延びるのかを聞いているのである。「25%の節約」ではまったく答えになっていない。
 「プルサーマルによって、ウランの可採年数がどれだけ延びるのか、質問にきちんと答えて下さい」と追及したが、「リサイクルをすると天然ウランを25%節約できます」と繰り返すばかり。質問にまともに答えようとしない。
 そこで、「プルサーマルによって可採年数が何年延びるのかについて、計算しているのか、していないのか答えて下さい」と要求したが、何の回答もない。「答を持っていないということですか」と追及すると、「われわれなりの答えをしています」と言うばかりである。
 しかし、「1回のリサイクルで天然ウラン25%の節約」という関電の発言からすれば、全世界にある約430基の原発すべてでMOX燃料を使用し、かつ回収ウラン(注)も全量使ってはじめて、やっと天然ウランの利用年数は1.25倍延びるという
IAEA試算でも、プルサーマルによるウラン資源量の延びは、たった1.1倍
 交渉の3日後、5月24日付の朝日新聞は、「ウラン、270年分残存−核燃サイクルに疑問符」と、ウランの推定資源量に関するIAEAの新たな試算について報じた。23日に明らかになったこの試算によれば、使用済み燃料を再処理しない場合の世界のウラン資源量は270年分あり、仮に再処理してプルサーマルを実施したとしても300年分で大差がないという。プルサーマルによってもたらされるウラン資源の延びは、300÷270=1.1倍ということになる。「数倍から数十倍」という関電の宣伝は、IAEAの試算に照らしても、明らかな虚偽なのである。
計算になる。「プルサーマルで25%節約ということは、数倍ということにはなりえないですね」と確認すると、「ええ1.2倍程度ということになります」と渋々答えた。そこで、「何基の原発でプルサーマルを実施すれば、ウランの可採年数が1.2倍程度になるのですか」と聞くと、「何基というわけではなく・・・」などと口を濁す。「全世界のすべての原発でプルサーマルを実施し、回収ウランも全量使って、はじめて1.25倍になるということではないのですか」と確認を求めると、「ええ」と小さな声でうなずくのみである。
 関電は、「ウラン資源の利用年数が数倍から数十倍延びる」というグラフを、新聞広告をはじめ至る所で使って、プルサーマルの宣伝を行っている。しかし、これはまったくの虚偽である。全世界の原発でプルサーマルを実施して、回収ウランも全量使って、やっと1.25倍なのである。高浜3・4号でプルサーマルをやって、一体何倍になるというのか。関電は、「数倍から数十倍」などという虚偽宣伝を即刻中止すべきである。

注:【回収ウラン】−使用済み燃料を再処理することによって、分離・回収されたウランのことを回収ウランという。使用済み燃料中に残っているウラン235の割合は約0.9%(燃焼度による)であり、天然ウラン(約0.7%)よりも高い。そのため、回収ウランを再び濃縮してウラン燃料として使用することができるとされている。しかし、ウラン以外の核分裂生成物が不純物として混入するため、通常のウランよりも放射能が強く扱いが難しい。ウラン燃料としての再利用も進んでいない。「質問3」についての報告で述べるように、関西電力はプルサーマルで「ウラン資源を約25%節約できる」としているが、実はその半分は回収ウランによるものである。

■「数倍から数十倍」は何の根拠もない「アバウトな数字(関電)」
 「質問1」に関するやりとりの中で、ウラン利用年数のグラフの意味そのものをきちんと説明するよう要求した。関電は、「高速増殖炉の利用を含むと書かせていただいております」と前置きした上で、「軽水炉では使っていないウラン238を高速増殖炉で効率よく燃やすことによって数十倍ウランを有効利用できますというグラフだ」という。
 事実、広告のグラフの下には、小さな文字で「※高速増殖炉での利用を含む」と書かれている。そもそも、プルサーマルの有用性についての広告であるにもかかわらず、関係のない高速増殖炉を持ち出し、「エネルギー資源の有効活用」と宣伝するのは、誇大広告以外の何ものでもないのだが、ひとまず「数倍から数十倍」というグラフの計算の根拠を説明するように求めた。「世界全体で高速増殖炉が何基、どのように動いた状態を想定して計算しているのか」と聞いたのだが、「何基とかではなく、ウラン238が利用できるのですから、飛躍的に延びる訳です」と、あいまいな説明に終始し、具体的に説明できない。そればかりか、「数倍から数十倍というアバウトな数字ですから」などという言い訳めいた発言や、「ウラン資源が飛躍的に使えるようになるということを一般の人に説明するためのもので、計算どうこうというものではない」などと、居直りとしか取れないような発言すら関電側から飛び出した。そして最後に、「具体的根拠は示せないのですね」と確認すると、何も答えられなくなってしまった。「高速増殖炉での利用を含」めてさえ、関電は、ウラン利用年数のグラフの根拠を説明できないのである。これでは虚偽宣伝という他ない。