4月2日関電交渉報告

度を超して何も答えず。悲壮で強圧的な関電

質問「核兵器産業の根幹をなすコジェマ社との契約は道義的に許されるのか」
回答「プルサーマルは国策だから進めている」


 4月2日、午後5時から約2時間、関西電力本店で交渉を行った。初めて交渉に参加した高校生など、市民側は15名が参加した。関西電力はいつもの広報課長3名だった。 今回のテーマは、3月23日に出していた「核兵器産業の根幹をなしているコジェマ社とMOX契約を結ぶことに等についての質問書」と、3月26日に関電が発表したコジェマ社との「基本契約」の内容についてだった。
 全体的に、関電は一切質問に答えなかった。聞かれている事についての回答をはぐらかす姿勢は、これまで以上に、いや、一線を越えたものだった。情報公開の姿勢などみじんもない。課長達の顔はいつになくこわばっていた。とにかく用意された「主管部門が作った」「きっちりした回答」しか話さない。どこかで特訓でも受けてきたかのようだった。反対派や市民に情報を出せば、まともに答えていれば、またプルサーマルが失敗してしまう。そんな会社全体の悲壮な思いを背景にした、強圧的な姿勢がにじみ出ていた。
 また、今回初めて、用紙を手にして「初めての方もおられるようなので名前を書いてもらうといいんですが」と言い出した。「それはいりません」の一言で、「そうですね」と用紙をすぐに引っ込めた。交渉参加者の名前をチェックしようとでもいうのだろうか。
質問書と回答はこちら

■コジェマ社の疑惑について調査したのか→「関知していない」
 質問1は、コジェマ社が米国とのMOX燃料製造契約を結ぶにあたって、フランスの規制当局から許可を得る前に契約したのではないかとの疑惑について、調査したのかどうかであった。これは昨年10月9日の交渉の時、「コジェマ社が契約相手先になれば調査する」と関電側が述べていたものだった。
 答えは、「事実関係は関知していない」「関電のMOX燃料を作るメロックス工場では違法性がなくフランス当局の許可を受けていることを確認している」だった。
 「調査したのかどうかを聞いている。どうなのか」と確認しても「関知していない」を繰り返すばかり。「調査すらしていないのか」と追及されても黙っている。では「調査はしたが、そんなことは関係ないということか」と追及されてもだんまり。
 関電は「メロックス工場はちゃんと許可を受けている」「メロックス工場は」を繰り返す。米国MOXを製造するのはコジェマ社のカダラッシュ工場だ。「工場が違うから関係ないということか」「契約先は同じコジェマ社ではないか」「コジェマ社の一方の工場で違法が行われていても関係なしに契約できるということか」と参加者からは批判の声が続く。とにかく関電は「関知していない」「メロックス工場は」を繰り返すだけ。「それでは答えになっていないではないか」と追及されると、「答えになっていないかも知れませんが、これが当社の答えです」と言い始める始末。答えになっていないことを自ら認めながら、それが「回答」だと言い張った。前回の交渉で「調査する」と言っていた当の本人は「そんなこと言いましたかね」と小さな声でしらを切っている。

■核兵器産業のコジェマ社と契約を結ぶのか→「プルサーマルは国策です」
 さらに、もっと驚くべき答えが用意されていた。質問2は、コジェマ社はフランスの核兵器産業の根幹をなしている会社である。そのような会社と契約を結ぶことは道義的に許されないのではないかという質問。関電の答えは「平成12年の国の長期計画でプルサーマルは国策だから進めている」というだけ。これには参加者全員「エーーー」「なんだその答え」と驚きと怒りの声があがった。
 「質問の答えになっていないということは分かっているのか」と追及されても「直接答えになっていないかもしれないが」と前置きして、「プルサーマルは国策ですから。これが回答です」。「コジェマ社がフランスの核兵器用のプルトニウムを提供している事は知っているだろう」と言われてもだんまり。
 とにかく核兵器産業の会社と契約を結ぶということについては一切答えない。以前BNFLが劣化ウランの製造に関与しているという問題では「関西電力は平和利用として原子力・・・」云々の事を言っていたが、今回は、そんな言葉さえない。私達が予想していた以上に、関電はこの問題に触れられることをいやがっていることが異様に浮かび上がってしまった。

■公開討論会を開くべき→「パンフレット等で説明している」
 質問3は、公開討論会を開くようにという要求だ。回答は、この間関電が何度も繰り返している「地元でも少人数の説明会、パンフレット等々でご説明している」というもの。さらに関西の市民には「このような形で面談している」の一点張り。関電の一方的な都合の良い説明ではなく、賛成・反対両方の意見を出し合って多くの人が参加できる公開討論会がなぜ開けないのか。これに対しても、判で押したような回答を繰り返すばかりだった。

■プルトニウム・スポットなどの情報は「本契約」を結んだ後しか分からない?
 次は、関電が3月26日にコジェマ社とMOX燃料製造の「基本契約」を結ぶと発表した時に出した「今後の進め方」に関する質問だ。この件については基本的に答えを用意していないとして、再度質問事項をまとめて回答を要求することになったが、ここでもおかしなことが明らかになった。
 関電は、まず「基本契約」を結び、その後監査などを行って「本契約」を結ぶ。「本契約」の後にコジェマ社が書類を提出し、国の輸入燃料体検査を受けて合格すれば製造を開始するという。
 MOX燃料の具体的資料であるプルトニウム・スポットの状態や、ペレットの寸法、ペレットの合否判定の基準などは、いったいどの時点で確認するのかという問題がある。これに対して関電は、たぶんと前置きして「本契約の後の書類提出の時でしょう」と言った。燃料に関する具体的情報は「本契約の後」だと言うのだ。これでは「基本契約」「本契約」とわざわざ2段階契約にする必要はない。「慎重に進めます」というポーズだけになる。 コジェマ社を契約先に選んだことについて関電は、「製造能力」等を理由に挙げている。どのような内容でコジェマ社に「製造能力」があると判断したのか、「その根拠は何か」と聞いても何も答えられない。「製造能力ありとした判断の項目ぐらいは明らかにせよ」と追及されてもだんまり。コジェマ社のMOX燃料では、燃料の中にプルトニウムの塊ができてBNFLより製造能力が劣ると言われている。関電はおもむろに「プルトニウム・スポットは問題ないですよ」と根拠も示さず述べるだけだった。
 危険なプルサーマルは人々の生命に係わる問題だ。「本契約」を結ぶ前に、情報を公開するのは当然のことだ。
 最後に、関電の品質保証体制に関連して、「MOX燃料成型加工標準仕様書」を公開するよう要求した。すると「社内標準は公開できないと思います」とすかさず答えた。さらに、同じ社内標準であり、品質保証の最上位文書である「原子力発電の安全に係わる品質保証規程」を公開するよう要求した。この最上位文書は、関電が昨年10月8日に作り、保安院から「適切な品質保証活動を実施するには不十分」と指摘され、昨年12月22日、今年1月9日に改正したものだ。改正前と改正後の文書を公開するよう要求した。両者を見比べなければ、何が改善されたかは分からないからだ。こちらも「社内標準だから公開できない」のだろうか。回答を要求している(4月5日付質問書はこちら)。

 初めて交渉に参加した人は「百聞は一見にしかず。ここまでひどいとは」と感想を述べていた。まずは、この関電のデタラメな回答と対応を多くの人々に知らせていこう。